表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異能戦線 −宝石の四戦士編−  作者: 青色蛍光ペン
13/19

13 隠されし真の目的

隼人は動けない。動けばたちまち風春のエメラルドによる射撃で頭か心臓か、とりあえず急所に矢を射られるだろう。しかし、このまま動かずにいれば、背後にいる紅原による砲撃で体が一瞬で消し飛ぶ。


「これは…、本格的に終わりか…?」


「最後に、言い残すことはありますか?」


「…んなもんねぇよ。まぁ、ここで死んだら、多分俺の異能力がコードδの野郎に理由されることは無くなる。それでも俺を殺すか?」


無駄な足掻きだとは知りながらも、風春に問いかける。残念ながら、背後から聞こえる機械音は止まらない。そして、紅原はエネルギーの充填が終わったルビーの引き金にゆっくりと手をかけると、一瞬躊躇いつつも、引き金を引く。鼓膜が破れるかと思うほどの轟音が轟き、隼人の隣を巨大なレーザーの光が突き抜ける。


「外した…!?」


「なんで…!」


隼人と風春が驚いて紅原の方を向くと、そこには驚きの表情で、隼人とは全く別方向に煙を上げる銃口を向けて立つ紅原が立っていた。3人が唖然と立っている中、木々の中から眠たそうな声が響き渡る。


「やれやれ、黒崎クン。キミの事は信じてたんだけど、何をこんな所で苦戦してるんだい?」


茂みから姿を現したのは、案の定五色だった。つかつかと歩き、紅原の砲撃によって焦げ付いた地面を指でなぞりながら言葉を続ける。


「巨大なレーザーか。映画や漫画でよく見るけど、現実世界でこれを見れるとは思ってなかったよ。こんなものを受ければ、黒崎クンは一瞬で消し炭になっていた」


だけどね、と付け加え、五色はポケットから細い棒状のものを取り出す。最初はペンか何かかと思ったが、それの正体はロケット花火だった。


「これを飛ばして射角を反らさせてもらった。こんな回りくどい助け方をする必要は全くないんだけど、ロケット花火だけは沢山余ってるからね」


「…なるほど、それが噂の武器変創ってわけね。ロケット花火ぶつけるなんてレベルの衝撃ではなかったわ。体に当たれば命を奪えるレベルだった」


「それなら…」


「なぜ紅原詩音本人を狙わなかったか。でしょ? そんなの簡単だ。体にロケット花火ぶち込まれても、指先を軽く動かすことぐらい、誰にだってできる。もしそうなれば、やっぱり黒崎クンは消し炭になっていた」


風春の問いを途中で遮りながらも五色は話を続ける。一通り話し終えた所で、「さてと」とひと段落つけると、ポケットからハサミを取り出し、それを巨大化させる。


「話はもういいや。黒崎クン、キミは先にメインコンピュータに向かっててよ。その途中でコードδに襲われてもボクは助けに入れはしないだろうけど、相手が一人ならキミでも全然問題ないはずだよ」


「…分かった。何度も悪いな」


今度は反対することもなく、素直に出口に向かう。蒼神達とは違い、紅原達はそれを追わない。その事から、やはりコードδがこの先で待ち構えているのだと五色は判断する。


「さてと君達、覚悟はいいかな?」


ハサミを向けてそう話すと、ポケットから豆電球を取り出してそれを左手の中に収めながら駆け出す。


「そんなおもちゃでは私は倒せないっ!」


「それはどうかな」


にやりと笑うと、左手に握っていた豆電球を紅原の顔面向けて投げつける。手から離れた途端豆電球は膨大な光をまき散らし、そのままパリン、と音を立てて小さく爆ぜる。


「目がっ…!」


とっさに目を逸らそうとしたがわずかに遅れ、その光を直視してしまった紅原は目を抑えてその場に棒立ちになる。


「まずは一人…!」


ハサミを振りかぶり、それを振り下ろそうとする五色だが、その刃先に重たい衝撃が走り、それを阻止される。ちらりと横を向くと、風春が次の矢をつがえてこちらを睨みつけている。


「へぇ、なかなかやるじゃん」


「あまり私達を舐めないでください!」


狙いをつけ、次の矢を射ようとする風春だが、突然の右方向からの衝撃に思わず膝をつく。右耳が聞こえない。どうやら衝撃だと思っていたものは「音」らしい。


「ボクの事も、あまり舐めない方がいい」


そして、それをさも当然そうに眺めながら、五色は左手の薬指を軽く動かす。すると、再び轟音。風春からしたら、次は右からの爆音。


「か…はっ……」


心臓が止まったかのように錯覚する程の衝撃に、息がつまる。そしてそのまま倒れこむ。ほぼ周囲の音を聞き取れない耳に、微かに五色の声が入ってくる。


「釣り糸と、クラッカーを使った簡単な仕掛けだよ。ま、もちろん武器変創を使ってるから、釣り糸はより強固かつより見え辛く、クラッカーは相当大きな音が出るようになってるんだけどね」


「翠っ!」


「…流石にもう回復しちゃったみたいだね」


目が見えるようになった詩音がまず始めに見たのは倒れこむ風春の姿。そしてそれを見下ろす五色の姿。何という強さだ。まず始めにそう感じた。黒崎隼人とは大違いだ。


「大丈夫。三半規管が少しおかしくなっただけだよ。すぐ回復するだろうし、もちろん命に別状は無いはずだよ」


「アンタ…、何が目的なのよ!」


紅原からして分からないのはそこだ。パラレルを敵視しているのは確かだが、明確な殺意は全く感じない。もし五色が本気で殺しに来れば、この勝負だってもっと早く、紅原と風春の死亡という形で決着が着いていただろうに。五色の目的が紅原にはイマイチよく分からないのだ。


「…目的って言われてもね。ただ、この計画を潰す。それだけだよ」


「別に私達は邪魔にすらなってないっていうの…!?」


「いや、そんな事もない。これは二つ目の目的のためだよ」


「二つ目の目的?」


「そう。まぁ、これに関しては今からでも達成できるんだけどね」


それを聞いて身構える紅原を、「まぁ待ちなよ」と制し、五色は話し始める。


「そうだね、まず、このミッションは相当馬鹿なものだ、ってキミは思わなかった?」


「馬鹿…?」


「そう。わざわざ情報をリークして、結構大きめの拠点にボク達を誘い込んだ。もしこっちの作戦が成功したらそれはそれでかなりの打撃になるだろうし、もしここから逃げ出したら、この拠点の場所がバレている状態でこれからトリニティを警戒し続けないといけない」


「でも、そこまでしてでも異能力者を捕まえないと…」


「そこだよ、馬鹿なのは。なぜ黒崎隼人にそこまでこだわるの、って考えた事は無い?」


「えっ…?」


「ボク達のボスの考えによると、パラレルの目的は、あのコードδという男に数多くの異能力を集約して、脳を活性化させる。そして、その活性化した脳にプラグ刺すのかチップ埋め込むのか知らないけど、天然のスーパーコンピュータを作る、という事らしい」


紅原は一言も返せなかった。まさかそこまでパラレルの考えが漏れているとは。トリニティのボスというのは一体何者なのだろうか。


「それで、だよ。もしそれが当たっているのだとしたら、別に黒崎クンじゃなくても、異能力者ならそこら辺にいる人のものでもいいって事だ」


「…確かにね。でも、結局多くの異能力者を集めるのなら、先に黒崎隼人を捕まえておいても無駄では無いでしょ?」


「いや、無駄だよ。何も全ての異能力者を集める必要は多分無い。量は必要だろうけど、異能力であれば、別になんでも構わないんだよ。そうなれば、弱い異能力者を徹底的に狙った方が効率がいい」


「脳を活性化させるだけなら、どの異能力でもいい…。なら、アンタはどう考えているの? パラレルの隠された目的を」


「本当はキミだって話の流れで理解しているはずだ」


一瞬訪れる沈黙。紅原の頬を一筋の冷や汗が流れ落ちる。そして、紅原の予想通りの答えが五色の口から放たれた。


「強力な異能力を集めてコードδを兵器にして、それで日本制圧、って所かな?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ