12 秘策
キン、キン、と金属がぶつかり合う音が部屋に鳴り響く。五色は、どちらかと言えば押されていた。当然だ。相手は二人。それだけでも厳しいというのに、重い一撃と、素早く鋭い一撃が交互に襲いかかってくるのだ。受け流し方を誤れば命に関わる。
「…流石に、二人相手は厳しいね」
「さっきまでの余裕はどうしたっ!」
ゴウ、と風を強引に切る音と共に、サファイアによる一撃が五色に襲いかかる。咄嗟に巨大化させてあるハサミを使って受け止めるが、相手は大剣。それもブースターを使って破壊力を底上げしている。衝撃を受け止めきれるはずもなく、吹き飛ばされる。そして、受け身も取れないまま着地すると、真上から今度はトパーズの刃先が振り下ろされる。体を捻って直撃を避け、そのまま起き上がり、黄山を蹴り飛ばす。
「…黒崎クンはそろそろ奴と戦ってる頃か…?」
奴、とはコードδの事を指すのだが、あいにく隼人は紅原と風春による足止めを食らっている。そんな事も知らない五色は、ふう、と一息つくと、ハサミにかけている武器変創を解き、ポケットにしまい込む。そして、逆のポケットに手を突っ込むと、金槌を取り出す。
「さて、時間稼ぎは十分だ。ここからは容赦しない。ちゃっちゃと終わらせて早く黒崎クンに合流する方が効率は良いんだけど、彼自身にも成長して欲しいからね」
「おいおい、何言ってんだ? 優勢なのは俺たちだろ?」
五色の言葉に余裕な表情で返す黄山だが、その反面、蒼神の表情に緊張が走る。
「油断するな…、何か来るぞ!」
その言葉を聞いた五色がにやり、と不敵に笑う。その直後、辺り一面が真っ白な煙に包まれる。
「くそっ、またか…!」
蒼神のその叫びは大きく部屋に響き渡るが、その姿は黄山にも、五色にも見えない。それほどまでに濃い煙。しかし、今度は五色は逃げるためにこの花火を使ったのではない。
「まずいぜ…、さっさと煙を払わねぇと…、ゔっ…」
一瞬黄山の声が聞こえたが、すぐに消える。やられたのか、それとも声を頼りに接近されたら困ると考えたのか。どちらにせよ、何かしらの方法で煙を…
「無駄だよ」
真上から聞こえたその声に、蒼神の背筋に悪寒が走る。サファイアを真上方向にぶん、と振るう。ガチャン、と何か機械でも斬ったかのような手応えを感じたが、軽すぎる。そして、その正体も分からぬまま、真後ろからの衝撃に声も出せぬまま倒れる。
「ま、こんなものか」
煙が徐々に薄くなっていく。うっすらと見えてくる現場の状況としては、倒れる黄山と蒼神、花火の残骸、真っ二つになった小さなおもちゃの残骸、そして巨大化させた金槌と、小さな金属探知機を手に持って立つ五色。無言で真っ二つになったおもちゃの残骸を拾う。時間が来ると録音した音が再生されるおもちゃの目覚まし時計だ。録音時間は約5秒と知れているが、それだけあれば隙を作り出すことなど五色にとっては簡単だった。そして、金属探知機。これを使って蒼神達の居場所を掴んでいたのだ。
「大分道具を消耗したね…」
一見かなり強力に見える五色の異能力だが、そもそも道具がなければ無能力と同じなのだ。
「まぁいいか。とにかく先を急がないとね」
五色は隼人の事を信じている。だから先に行かせたわけだし、二人組の方が効率がいいものをわざわざ分担した。五色の異能力は味方を巻き込んでしまう恐れがあるから、という理由もあるのだが、やはり信じているからこそできる事なのだろう。
「それでもあのエメラルドのスキルが分からない以上、ボクも早く合流した方がいいよね」
隼人の命が危ないというのもあるのだが、隼人がもし命を落としたとして、その死体を持っていかれると、USBもろともパラレルの手に落ちてしまう。そうなるとこのミッションは失敗に終わるし、その後逆にウイルスを利用されかねない。
「…そう考えると、つくづく馬鹿な真似をしたものだよ」
そう呟きながら、五色はゆっくりと歩き始める。




