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異能戦線 −宝石の四戦士編−  作者: 青色蛍光ペン
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11 疾風を斬り裂く紅の宝石

五色が広間に残り、隼人は廊下を進んでいく。一番奥の部屋にメインコンピュータが設置されている、と考えた隼人は、小部屋を全て無視して、ひたすら下へ続く階段を探す。


「ん、行き止まりか…?」


だが、見つけたのは大きな扉。廊下の突き当たりになっているそこは、扉が開かなければ通ることができない。


「…ぶち破るか…?」


開かなかったことを考え、扉を破る方法を考えつつ、取手を掴み、押す。カチャリ、扉子気味の良い音を立てて扉が開く。開いたことは意外だったが、結局開かなくても扉を無理矢理破ることになっていたのだから、特に驚くほどの事ではない。それよりも、目の前に広がる景色が隼人を驚かせた。


「外…? いや、そんなはずない…。ここは地下9階だ」


一言で表すなら、そこは中庭だった。地下9階に中庭があるのは本来ならおかしいのだが、研究施設ともなればおかしくもないのかもしれない。だが、天井の照明の明るさといい、気温といい、まるで本当に外にいるのかと錯覚してしまいそうになる。


「来たわね! 黒崎隼人!」


だが、その景色に見入っている暇もなく、勢いのある女性の声が広い中庭に響き渡る。


「お前は…、紅原…!」


声がした方を向くと、そこには、あの時住宅地で出会った時と全く同じ構えで彼女は立っていた。


「まさか、アンタ一人で来るとはね…。馬鹿なんじゃないの?」


「馬鹿はどっちだ? 、お前一人じゃ俺は止められないことぐらい分かってんだろ」


「それはやってみないと分からないじゃない!」


会話が終わるとともに紅原は駆け出す。そして間合いに入るのと同時にルビーを振り回す。ヒュン、ヒュン、と風を切る音とともに刃が隼人を襲うが、それらを余裕を持って回避する。


「はぁぁっ!」


掛け声と共に振り下ろされる一撃も後ろに下がる事で難なく避けるが、直後、ルビーの先端の銃口が火を吹く。


「ぐっ……」


直撃はしなかったが、弾丸は左の脇腹を掠め、シャツがじわりと赤く染まる。だが、これぐらいならばまだ支障は無い。


「…なるほどな、さては前回本気じゃなかったな?」


「いや、私は前から本気だったわ。ただ、『倒す』という目標が、『殺す』に変わった。『正々堂々』という精神が、『殺せればなんでもいい』という考えに変わった。それだけよ」


いや、きっとそんなはずはない。殺すという考えに変わったと言うのなら、まずこんな話をせずとも今引き金を引けば勝てるし、正々堂々と戦うのをやめたと言うのなら、ここでコードδと共に隼人に襲いかかればそれでいいはずだ。


「もちろん後悔はしてる。やっぱり、正々堂々と戦って勝ちたかったし、こんな出会い方じゃなかったら、少なくとも殺し合う関係にはなってなかったのかなって、やっぱりまだ考えちゃう」


「…何言ってんだ。お前は今正々堂々と戦ってるし、前よりもぐっと強くなってる。それは誇るべきことなんじゃ……うぐっ!」


突然走る左肩への痛みに言葉を断たれる。左肩を見ると、細い、長い矢が突き刺さっている。


「言ったよね。正々堂々と戦うのをやめたって」


ヒュン、と音がして、思わず体をそらす。それを掠めるように、二本めの矢が目の前を通過し、地面に突き刺さる。


「最後の一人か…!」


エメラルドと呼ばれるアーチェリーを使うと言う少女。かなり遠くからの狙撃だからなのか、それともあの黄緑色のマントがこの中庭で自然と隠密効果を果たしているのか、その姿はまだ確認できない。顔をしかめながら左肩に突き刺さった矢を引き抜き、改めて紅原に向き直る。


「…だが、何人で来ようが同じだぜ?」


「それを言えるのも今のうちよ!」


そこから、急に紅原の動きが変わった。先程までは当たれば良しとでも言いたげに大振りかつ速い斬撃を繰り出していたが、ぐるぐると隼人の周りを駆けるようにして立ち回る。目的は手に取るように分かる。多分、エメラルドの少女が狙撃しやすいようにしているのだろう。


「くっ…、これはまずい」


「今よっ! みどり!」


その一声と共に、紅原はバックステップを取ってその場を離れる。狙撃か、と身構えるが、聞こえてきたのは、まるでライフルでも撃ったかのような轟音。直後、隼人は宙を舞っていた。あまりにも突然の出来事に、受け身も取れないまま地面に落ちる。


「がはっ……! ゴホッ、ゴホッ…」


咳き込みながら体を起こすと、先程まで隼人が立っていた場所にはクレーターを思わせる大穴が空いていた。


「くそっ…、これがエメラルドのスキルかよ」


具体的に何をされたのかは分からないが、翠と呼ばれたエメラルドの少女の仕業であることには間違いない。


「これで終わりっ!」


考えている暇もなく、ぶん、と振り下ろされたルビーの刃を転がって避ける。トドメのつもりだったのか、ざくり、とその刃は地面に深く突き刺さる。


「終わってたまるかよ」


「諦めなさい! アンタに勝ち目はないんだから!」


寝そべったまま、紅原に向かって突風を起こす。なんとか踏ん張って飛ばされずにはいるが、その隙に立ち上がり、その風に乗って紅原の元へと走り出す。翠の援護射撃が飛んでくるが、風に流されて明後日の方向へと飛んでいく。


「俺は諦める訳にはいかねぇんだっ!」


そしてその勢いのまま蹴りを放つ。紅原は咄嗟にルビーの柄で受け止めるが、衝撃は消せずに、後ろに吹き飛んであおむけに倒れる。


「詩音ちゃん!」


そしてそれを見て、茂みから翠が飛び出てくる。黄緑色のマントを羽織った、真面目そうな少女だった。その手には、機械仕掛けのアーチェリーが握られている。


「お前が『翠』か」


「気安く名前で呼ばないでください! 撃ちますよ!」


キッと隼人を睨みつけながら、エメラルドに矢をセットする。先程までの矢ではなく、明らかに長くて太いそれは、アーチェリーで飛ばすには無理があると思ったが、飛ばせないならセットするはずがないのだ。ハッと我に返り、なるべく狙いをつけさせないよう、横方向へと走り出す。


「甘いですよっ!」


そして、さっき聞いた爆発音と同じような音と共に、その矢は発射される。それは、隼人の脇腹をかすめ、それでもなお全く威力を落とさずに、隼人の背後の木の幹に命中する。鉄製の矢だが、あまりにも強い衝撃に矢は弾け飛ぶが、その衝撃で木の幹がえぐれ、そのまま木は倒れてしまう。


「…それがエメラルドのスキルか」


「どこまで情報が漏れてるのかは知りませんが、黒崎さんにはここで大人しく死んでもらいます」


「いや、悪いがそう言う訳にはいかない。助けないといけない友達がいるもんでな」


「それは…、アンタだけじゃ…、ないのよ」


その声を聞いて悪寒が走る。倒したと思っていた紅原が起き上がったのだ。だが、隼人はそれを確認できない。翠に矢を向けられている以上、よそ見は厳禁だ。


「翠はね…、風春翠かざはる みどりはね…、雪と一番仲が良かったの。だから、私たちの中で一番強い。一番この計画を邪魔するアンタが憎い。だから、アンタにはもう勝ち目は…ない」


「雪…? 誰だそれは」


「…それはアンタが知る必要も無いわ。フルバースト、充填開始…!」


背後から、ギュイーン、と表現するのが一番なのだろうか、あからさまにエネルギーをチャージしているような音が聞こえる。だが、ここからは動けない。翠の目は、しっかりと隼人の一挙手一投足を捉えている。


「本格的にこれはまずいぞ…」


これを食らえば致命傷だと言うことは百の承知だ。だが、少しでも動けば今度は翠の射撃によってやられる。自分の死がじわりじわりと、それでも確実に迫ってくる感覚は、これまで感じたどの恐怖にも匹敵する。

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