表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ボトルメール

作者: 海之本

海岸の埋もれた瓶を掘り起こし、中に入りこんでプカプカ海原へ。


波音は湿った風と共に香りをまとう。

海になりたいと願うのに、波に揺られて揺られて、わたしはただの木の葉。

広い広い揺れ動く腹の上で思い描いた月。

光は影を浮かべ、ガラスの冷たさがあの人を映す。


親愛なる人よ、わたしは小さな人間です。海は世界へ通ずると言いますが、この波はあなたが揺らしたものですか?わたしは飲み込まれてしまいそうです。月の光をポケットに入れてあなたに贈りたい。


浜辺に落ちた釦を愛しげに眺めるあの人の足元にわたしはいました。あの人は釦を、わたしは手のひらを空へかざします。塩で錆びついたものと黒く汚れた爪。夜の下ではただの影ですが、あなたにはどう見えるのでしょう。濡れた裾の側では波音が泣き声のようで、聴いているだけで世界を愛せるような気がしました。


流れて揺れて流されて。

空と海の狭間で世界の果てなどないことを知り、わたしは海になる。

瓶の下はどこまでも深く、上に広がるのはあの人が描いた紙面。

目を閉じても見える太陽。

肌に燃え上がる雲の地図。

耳に沈む風の系譜。

鼻に沁みたるは潮の痛み。


海の腹の中へ沈むのなら深い眠りのままに。

海の腕から押し出されるのなら砂地にもぐりこんで。


目が覚めたら、さて、どこにいるのでしょう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ