<第1章> 1.再来
ーセイカ大陸西部ー
サウス地区_エギナ王国
エギナ王国は大陸西部で2番目に魔法師の多い国であり、20年前に国王_ベルガー王がA級からS級へ昇格したことにより、西部ではフィルフィア帝国を除いて唯一S級魔法師のいる国となった。
そして、エギナ王国で国王に次いだ権力と実力を持つ者がスザナール公爵_レオン・スザナール。
スザナール家の当主でありシオンの父親だ。
ーエギナ王国首都_リーリアー
スザナール家本邸の一室
「…うっ…」
シオンは痛む頭を押さえながらゆっくりと体を起こす。
(…ここは…?)
あたりを見渡すとそこは見覚えのある部屋。
ここは確か僕が15歳まで住んでいたスザナール家本邸の寝室だ。
もう遠い昔の記憶だが、あの頃を忘れたことは一度もない。
(…これは夢なのか…?)
ガチャ
シオンは混乱していたが、ドアが開く音に気づき入口に目を向ける。
そこには綺麗な金色の髪を1つに束ねた女性がトレーを片手に立っていた。
「…シオン!やっと気づいたのね…急に倒れて、3日も目を覚まさないから心配したのよ!」
女性は目を覚ましたシオンを見るや涙をこぼしながらベッドに駆け寄る。
「…お母…様?」
部屋に入ってきたのは、死んだはずのシオンの母親_ナタリーだった。
(…一体、どういうことなんだ…?)
僕はさっきまでフォール大森林でバルドと戦っていて…お母様は50年前の事件でバルドの手下に殺されたはずで…ここは死後の世界なのか?
「シオン!…どうしたの?まだどこか痛むのかしら?」
気づくとシオンは涙を流していた。
なぜ自分がここにいるのか、なぜ死んだはずの母が生きているのか何一つわからないが、夢だとしてももう一度母に会えたことがシオンにとって何よりも嬉しかった。
一族が惨殺されてから50年間、敵を取ることのみ考え昼夜問わず修練に明け暮れた。
目を閉じればあの日殺された家族の悲惨な姿が過ぎる日々…
当時まだ16歳に過ぎない少年にはあまりにも残酷な出来事だった。
だが、スザナール家当主の子であり最後の生き残りとなったシオンには全てを背負い前に進むしかなかった…
シオンはナタリーにしがみつき声を上げて泣いた。
まるで過去50年間流すことを許されなかった涙を全て流しきるかのように…
・・・・・
「…シオン、落ち着いたかしら?」
しばらくしてようやく落ち着いたシオンは、この年にもなって号泣した自分が今更恥ずかしくなり、真っ赤になった顔を両手で抑えうつむく。
(まさかこの歳にもなって母様にしがみついて号泣するなんて、なんという醜態…///)
「あらあら、怖い夢でも見たのかしら?いつも大人っぽく振舞おうとするからついつい忘れそうになるけど、シオンもまだ4歳になったばかりだもんね。」
ナタリーは久しぶりに甘えられたのが嬉しかったのと、ようやく目を覚ました息子に安堵したことで笑顔を浮かべていた。
……4歳……?
シオンは少し固まった後、慌ててベッドを降りて部屋の隅にある鏡に駆け寄った。
そこに映っていたのは、どう見ても4、5歳程度にしか見えない幼い子供だった。




