出会い。
私もいつか・・・彼みたいに。
━━ドンッ
「いったーい!ちょっとー気をつけてくんない?」
私は像です。
「━━ませんっ」
私は静かに固まっている、像です。
「あ?聞こえないんですけど!」「くそうけるんだけど。なにやってんのみーこ。」
「こいつがさー」「はあ?まじかよ。邪魔なんだよっ」
━━ドサッ
誰にも迷惑かけていないはずなのに、みんなは私のことを嫌います。
ボソッ「なぜですか・・・。」
「は?なに?まじきもいわ。」「もうほっとこーよー。」
「そうだよ、みーこ。いこ~」「次からは気をつけろよ。像~」
「「あはははははは」」
なぜ?私は何もしていないのに・・・、どうしてみんな嫌うんですか・・・?
どうして、私は・・・
「なあ、落ちたものくらい早く拾えば?香南生。」
え?
「聞いてんの?」
上から人の声がして私は少し顔を上げるとそこには
さっきまで誰もいなかった私の目の前に同い年?くらいの人が立っていた。
私がいつまでたっても返事をしなかったからか、顔をのぞかせて
「なあ、香南生。」
「きゃっ」
「きゃって、女子だな~。」
冷たい目なのに優しい口調で話しかけてきた黒髪の男の人。
「ほら、これあんたのだろ。治安悪いんだから、早く拾っとけよこーいうもんは。」
突き出してきた手の中には、私がさっき突き飛ばされたとき落ちた財布が握られていた。
「え・・・あ、ありがとう。」
他人と話すのは久しぶりで少し声が裏返ってしまった。
財布を受け取り、男の人のほうを向くと下を向いて肩を小刻みに震わしていた。
私は何をしているのか分からず、その人をずっと見ていたら
「くくっ・・・あんた声裏返ってたよ。」
と笑顔で言われた。私は、特に恥ずかしがることもなくその人を見ていた。
笑われたことより、自分が誰かと話したことのほうが重大だったからだ。
「なんか反応しろよな。まあ、今度から気をつけろよ。」
「あ、はい。ありがとうございました。」
その人は笑うのをやめて、私に話しかけてきたので、財布のお礼を言った。
そしたら、またその人は笑って
「礼儀正しいのな。」
と言って背を向けた後、また振り向いて
「あ、そうだ。俺も4月から香南生。よろしくな。」
と言って、後ろにいた友達?さんの中に入っていった。
「なになに?知り合い?」「彼女ー?」「誰だよ今の!」
いろんな質問をされた、あの人は
「ん~知らない人。」
とそっけなく返事をしていた。
そんなことより、あのひと私の事香南生って言ってたけど、どうしてわかったのかな?
と私は不思議に思い落ちていた荷物を拾っていたら自分の格好に気づいた。
今日は、高校の制服を着て採寸を直しに行ったのだった。
(だからあのひと私の事香南って・・・)
心の中で自問自答をしていたらふとさっきの言葉がでてきた。
さっきの人、4月から香南生って・・・。
同じ高校なんだ。でも・・・
「次元が違うから話すことはもうないかな。」
自分で言っていて悲しくなってくるけど、本当の事だ。
私は地味であのひとみたいに派手じゃないし
こんな遅くまで友達とわいわい楽しくしているような感じじゃないから。
というか、私友達いないから。
そんなことを考えながら荷物を拾い終わり、私は家に帰った。
それから何か月か時は過ぎ、いよいよ入学式。
私は部屋で新品の制服を身に着けた。
「今日は入学式か。」
なんか変に緊張するな~。
私が今日から通う高校は、かなり治安が悪い。早く言えば馬鹿高校なのだ。
女子のスカートはパンツ見えるよ?!というくらい短くて、男子も腰パンはあたりまえだし派手な髪の毛にピアスをガンガン開けている。
まあ、全員がそんなっていうわけでもないが、明らかに私は"場違い"。
だからこそいじめの標的にされ、なにかしら言いがかりをつけられ
「友達もできずに、終わるんだろうな~。」
と、こんな風に朝からすごく憂鬱なのです。
学校につくと、クラス分けが書かれている掲示板見たいのもが外にあり、
みんなそれに集まってみている。
私は遠くで掲示板を見ていたら、
「きゃーー!!」「何あれ!超かっこいい!!」「だれだれ!?ちょっと!!」
「あたし同中だった!」「教えて~~~!!」
女子に囲まれている集団の中にいたあの時助けてくれた、あの人もいた。
というか
「かっこいいな。やっぱり。」
あの時も思ったけど、あの人はかなりかっこよかった。
顔も整っていて性格も優しくて、本当にモテるって感じの人だった。
そんなことを思いながら人だかりを眺めていると
「は?なんで像がいんのー?」「あ、本当だ~、てかよりにもよって同高とか。」
「え~、だれだれ?この子!超地味。」
ああ、またはじまった。
私はあくまでも像なんだ。だから、静かに平穏に過ごさなくてはならない。
・・・あの人とは違うんだ。