チュートリアル1
気づくと真っ暗闇の中で横になっていた。
体を動かそうとしても前後左右上下壁で何処かに閉じ込められている感じだ。
落とし穴に落とされたはずだが此処は一体?
壁を触ってわかった事は自分の体に合わせて作られた箱?らしい物の中に自分が入っているという事だ。
なら何処かに出入り口がある筈なので触っていると前方(仰向けになっているので箱の上部)が少し動いた。
パラメータをフル活動して壁を開けると光が射し込んできた。
箱は何と棺桶で周りは古城の様なレンガ造りの壁とロウソクの炎で照らされていた。
此処は一体どこだろうか?
コンコン
ノック音が聞こえて音がする方へ視線をやると立派な木の扉があり、開いた扉には20代の青年が立っていた。黒のタキシードでオールバックの黒髪で銀縁眼鏡を掛けていて、知的でありながら何処か危険な感じのする雰囲気を纏わせていた。
「お嬢様、お目覚めでございますか」
「お嬢様?」
「はい、ユエ様は前当主様の忘れ形見ですのでお目覚めになる日を眷属皆、お待ちしておりました」
うーん、これは吸血姫専用の設定なのかな?
「目覚めたばかりですので記憶に混乱があると思いますので私、セルディウスが基本的な事と現状を説明させて頂きます」
セルディウスさんが綺麗なお辞儀をしてから話し始めた事はまず、ステータスの確認のやり方だった。
ステータス画面を意識すると自分のみ閲覧可能な自分のステータスが表示されていた。
名前 ユエ
種族 吸血姫 真祖
職業 無職
スキル 空き5
種族スキル エナジードレイン 自己再生 大
眷属創造 闇夜の支配者
ボーナススキル 英雄の器
level 1
HP 130
MP 400
SP 230
力 115
防御 75
魔攻 200
魔防 230
器用 160
素早150
うーん、これは異常なのでは?
「セルディウスさん、人族のlevel1のステータスを教えて貰えないですか?」
「こちらになります」
HP16
MP8
SP16
力 8
防御 8
魔攻4
魔防 5
器用6
素早 6
げ…レア種族ってステータス異常すぎるのでは?
「それはお嬢様が真祖ですから。しかし、闇夜の支配者で日の光を浴びるとステータスが半分になるので注意が必要になります」
そうか、種族スキルのデメリットもあるのか…
「なお、攻が物理攻撃力とSPに影響を与えて、防御が物理防御力とHPに影響します。魔攻は魔法攻撃力とMPに影響します。器用は物理、魔法の命中に影響され、対象との距離によりパラメータ補正が異なりますので遠距離になりばなるほど器用の数字が必要になります。魔防は魔法防御力、素早は回避と通常の移動スピードに影響します」
なるほど、各パラメーターの意味は理解した。吸血鬼は物理防御が苦手で魔法戦が得意な種族なのか。
装備の説明は簡単だった。
主武器右
主武器左
頭
胴 貴族のドレス
胴
手
脚
脚
足 貴族のハイヒール
アクセサリー
耳 空き2
腕 空き2
指 空き2
武器は右と左装備可能で胴と脚は鎧の下に服やズボンの装備が必要でインナーとアウターの設定がある。
アクセサリーは各部位2つまで装備可能らしい。
装備品には必要ステータスが設定されており、その設定数字未満だと加重バフが付く。
ただし、設定ステータスが満たされていれば魔法使いでも剣が装備可能らしい。
また、ドレスなどの普通のゲームでは女性限定装備も制限が無く男性アバターでも装備可能と言う自由設計らしい。
ちなみに今の装備品は防御1のただの布仕様です。見た目がしっかりしてるだけ…
「一応、基本的な事は説明させていただきましたが次は状況に進んでも宜しいでしょうか?」
セルディウスは相変わらず執事然とした態度で話を進めてくる。今までのセリフで気になるのは1ヶ所だけあるのでここは聞きておくか。
「1つ気になる事があるのだが、武器はステータス基準で装備可能と言う事だがジョブを付けるメリットは何処にある?特に俺の様なステータスと種族スキルが豊富だと要らないのでは?」
そう、ジョブで武器の仕様が制限されているならまだしも制限がないのならあまりメリットが無い気がしていた。特に前衛職は無駄ジョブでは?
「そうですね。武器は扱えれるのですが世界からのアシストは無く自身の技術が必要になるのと、技法が使えないのでやはりジョブを付けていた方が強くなりますね」
そう言いながらセルディウスは懐からナイフを取り出して構えた。ナイフから淡い光が現れて太刀筋が3つ同時に発した。
「これは盗賊系のジョブで短剣の初期技法 トリプルエッジです。普通の人族でも世界のアシストを受ける技法ですと人離れした太刀筋が再現可能になります。但し、技法はSPの消費と硬直時間があり強大な技法であればある程、発生後の硬直時間が長くなりますので諸刃の剣になる物でもありますが切り札としても有効ですのでやはりジョブは大事ですね」
確かに、生身の感覚では再現は不可能でしかも回避も普通には難しく技法と言うのはプレイヤーにとっては取得したいスキルだろうな。
その後はこの場所と自分の立場を説明された。今いる場所は元々は吸血姫の真祖が治める夜の国として繁栄していたが500年前に技術や資源を狙われて大陸からと言うか教会から魔王認定を受けた設定上の母親が倒されて滅亡したとの事。
生き残った眷属たちで細々と俺が眠る棺を護りながら500年間過ごしていたらしい。
何とも人間の欲が表立って見えてくるストーリーでかなり人らしい動きと考え方をするのだなっとおもってしまった。
「お嬢様には外へ旅に出て貰いまた此方にお戻りになられた時にこの国の後継者となって頂きたいと我らは思っております」
うはー国持ちプレイヤーになるのかな?面倒くさそうだわ。帰って来なきゃいいのかな?
「俺も外には行きたいし少し知り合いを待たせているので早くしたいわ」
その言葉でセルディウスは「知り合いとは魂の繋がりを持つ者ですか?」などと言っているが嫌、ただのリアル友人と家族ですがと言いたかった。
「では外に出る前に私の配下と模擬戦でもして、戦闘に慣れてから街に向かいましょうか。」
模擬戦の前に武器が無いのは不安なのだがと思っていたらセルディウスからナイフを1本渡された。
冒険者のナイフ……攻6 ※力4
鉄で作られた一般的なナイフ。獲物を解体する際にも使う為、冒険者なら全員所持している。
うむ、必要ステータスは力4か…武器を手に入れて武器詳細を見るまではわから無いのは少し不便だなっと呟いたら「商人のジョブに鑑定があるのでそれがあれば見るだけでわかる様になりますよ」との事だ。
冒険者のナイフを装備したのを確認したセルディウスに促されて説明を受けた部屋を後に模擬戦を行う部屋へ向かった。




