ゲームスタート!
βサービス開始の日になった。
あれから仕事と学業でみんなと話す機会があまり無かったが、綾に関してはβ期間の1週間は学校を休むと公言しており、花音に関しては元々引きこもりなので関係なく、俺と遼は空いた時間にプレイする形になりそうだ。
遼も大会も近く、先発メンバーに選ばれる為に遅くまで練習をしているのでもしかしたら俺よりプレイ時間が短い可能性があった。
現在時刻16:45開始時刻の15分前
「「雪様と同じ世界で共にできると思うとAIながらワクワクしております」」
「吹雪と同じく俺も楽しみにこの日を待っていたよ」
VRギアをセットしてログイン準備をした。
「少し早いけど起動するからまた向こうで会おう」
俺は電源を入れた瞬間意識が途切れた。
「お久しぶりですね。」
目を覚ますとキャラメイクの時でも訪れた部屋に居て、目の前にはサラサが立っていた。
「貴方がランダムに選んだ種族と見た目がそれですので確認してください」
そう言って何も無かった所に姿見が現れて地震の全身を確認した。
黒色の艶やかな長髪で上質なルビーの様な透き通る赤色の眼、白い肌と鋭い犬歯、まさに吸血鬼そのももの風貌だった。
「これはどういうことだ?」
「どう言う事とは?吸血姫 クラス真祖ですがランダムレア(上位種)です。おめでとうございます」
いや、種族に関しての問題は特にない…あるとすればさり気なく主張している胸にある物体だ。
「このアバターの性別は男か?」
これは聞いておかないといけない事だ。
「何、当たり前な事を聞いてるのですか?姫と付いているのですから、女の子ですよー」
「何でだよ!俺は男だったよな」
どうして俺は女に変わってるのだろうか?
「いやー、最初は私も男の娘にしようと思ったのですが貴方のアバター作成の際に情報を集めていたらユキと言うモデルに行き着いてその素晴らしい可愛さとキュートさに私は負けてしまいファンになってしまったのです」
うん?男の子のニュアンスがおかしいと思ったのだがまぁ流そう。
問題は何故、ユキのファンから俺が女性アバターになっているのかが微妙に繋がらないのだが…
「私ってAIじゃないですか〜。テレビ番組や雑誌などの情報はタダで集めれるのですが実際にお会いして触れ合う事や写真を撮るなどのイベントには参加出来ないじゃないですか。そこで最高スペックをフルに使って導き出した答えが私の世界でユキさんを作ってイベント開催すれば良いのだと」
最高スペック使って出した結論がしょうも無い答えでしかも欲望が強すぎるAIってこいつ、本当にAIなのだろうか?
確かにアバターの姿はユキの時そのものだし違いは眼の色と髪の色と少し肌が白い事以外は全く同じだった。
「胸のサイズも公式発表しているプロフィールを元に完全再現しましたよ。あーアバターを削除して新しく作ろうとしても私の権限で元に戻るので諦めてください」
無邪気な笑顔でトンデモナイパワハラ発言ですよサラサさん…諦めるしか無いのか…
その場でジャンプと腕や体を動かして動作を確認してみた。
「思ったより体に違和感が無いのだが何かしてるのか?」
動作確認を行った結果、現実と変わら無い反応と言うかゲームとは思えない馴染み方で少し怖かった。
「そりゃ私が貴方のデータを全て調べて身長や体重設定まで現実と同じに調整したのだから違和感がある筈が無いよ。逆に筋力などのステータスの分こっちの方が使いやすい可能性もあるね」
成る程、サラサが細かい調整を行った結果か…本人は目の前で自信満々に笑いながら答えてるのだがこいつ、個人情報保護とかそういう物は無いのかと呆れてしまった。
「色々言いたいことはあるけどゲームを早く始めたいのでもう良いかな?」
そう、外ではみんなが待っているのだからこんな事で時間を消費するのも浪費なので先に進めるように促そう。
「そうだね。あとは種族&種族スキルの説明で終わりだね。ユエちゃんも早くプレイしたそうだしさっさと巻きで説明するね」
ちょっと待て!そこが一番重要じゃ無いのか?何故巻きで進行する!
俺が待ったをかけようとしたが時すでに遅くサラサは早口で説明を始めてた。
「質問は受け付け無いから覚えてね。吸血姫(真祖)はエナジードレイン、自己再生(大)、眷属創造、闇夜の支配者が付いています。エナジードレインは相手の生命力を吸収する能力、自己再生は自分の怪我やダメージを再生させて元に戻すスキルで装備品は対象外、眷属創造はアンデット系を魔力や素材を使って産み出す能力、闇夜の支配者は暗闇や夜間はステータスが2倍になりますが陽の光を浴びるとステータスが1/2でHPにも継続ダメージが入りますが自己再生で±0になると思いますのでステータス低下だけだと思って下さい。あと勝手に私の好きな感じに弄ったのでスキルも一つプレゼントします。英雄の器はレベル上がるのに必要な経験値が2倍になりますがレベルアップ時のパラメータボーナスが増える物です。」
本当に早口で説明しやがったよ…まぁ内容は大体理解できたから良いのだが本当にこいつがシステムAIのトップって問題じゃ無いのか?
「ではでは、ゲームを楽しんでくださいね。ユエさんとしてのイベントを開催するのでしたら私も参加しますので一報を下さいね〜」
サラサは物凄い良い笑顔で横のレバーを引いたら俺の足元の床が消えた。
落とし穴からのスタートって何だよーー!!
絶対に次に会ったら殴り飛ばす事を決意しつつこの落とし穴を降下して行った。
(ただ落ちてるだけなのだがね…)




