ゴブリンの国と試験1
森の奥にある洞窟。
前回、この洞窟に来た時にゴブリン王と出会ったのは偶然だが、今回は自分の足で、ゴブリン王の居る国へ向かうことになる。
「私は前回、この洞窟のボスの間まで行ったときは、基本的にゴブリン系が中心で前衛が多く生息しています。吹雪とセシリアは後衛として補助、サラは盾役と敵を引き付けながら対処、アリスとサリアはアタッカーとして、サラが引き付けた敵から順番ずつ倒してください。私は遊撃としてみんなのフォローに回ります」
「「はい」」
「がんばるぞ!」
「任せてください」
「了解」
戦い方を説明してみんなの返事を貰い、洞窟内へ入る。
戦闘はサラ アリスとサリア 吹雪とセシリア 俺の順だ。
俺が一番後ろなのは、背後からの挟み撃ち対策でもある。
洞窟内は魔素が充満しており、モンスターは壁や天井、地面から生まれてくるのだ。
だから、通った道だと油断すると挟み撃ちに会うこともあるので、油断出来ないのだ。
ゴブリン種で洞窟などの魔素から生まれた物は魔物で知性あるゴブリン同士や多種族との間で生まれた物は魔族に属する。
前回のゴブリン王たちは知性ありそうな魔物のゴブリンを捕まえて魔族にするのが目的だったらしい。
ゴブリンと蝙蝠を倒しながら奥へ進む中、セシリアは何かに気づいたのか歩みを止める。
「うん?どうしたの?」
セシリアと吹雪の後ろを歩いた俺が歩みを止めたセシリアに理由を尋ねる。
「すみません。こっちの道から何かある気がして気になっただけです」
俺たちの道順は前に俺が歩いた道で一応、ボスの間まで繋がってるのは確認済みではあるのだが、俺が前回歩いていない道に何も無い訳も無いし、仲間の直感を信じるのもありかと思った。
「ごめん、サラさん。こっちの道に変更しよう」
セシリアは進む順路を変更する俺の指示に申し訳なさそうな顔をしたが、頭に手を置いて「セシリアが気になった道を私も気になっただけだから気にしないで」と言うと「ありがとうございます」と答えてくれた。
セシリアが気になっていた道を進む。ゴブリンと蝙蝠に人と同じ大きさはあるジャイアントアントが新たに加わり、戦闘回数がかなり多くなってきていた。
ジャイアントアントは甲殻が固く、力もあるので中々、決定打にならず、サリアとアリスでは厳しい相手になっていたので、俺が対処していた。
吹雪も洞窟内なので影響の少ない風系の攻撃魔法で対応していた。
その間、セシリアが一人でPTの補助と回復に当たっていたが、サラの洞窟内の狭さを利用して上手くモンスターを受け止めていた為、基本的にサラの回復だけで済んでいた為、大きな被害は無かった。
「「アリは嫌だ~」」
戦闘後にアタッカー二人の泣き言が洞窟内に響いた。
防御の固い敵に対する攻撃手段を見つける事が今後の二人の課題になりそうだ。
数回の戦闘を終えて、進むとボスの間に着いた。
しかし、俺が前回来たボスの間と位置が違う気がした。
広さもだが、ボスの間の奥には扉があり、扉の前に2匹のゴブリンが立っていた。
「あのゴブリンがボスかな?」
「いや、あれは魔族の方だな」
黒の鎧に黒の片手剣と盾を持っているゴブリン。
魔鉄鉱はゴブリンの国の名産鉱石で鉄鉱石に魔力が宿って黒く輝いているのが特徴だ。
魔力が宿った事で強度も色も段違いで魔力伝統率も高いのだが、加工が難しく熟練の職人しか加工が難しいの魔鉄鉱の武具は原産国のゴブリン国以外ではかなり高い品になる。
魔物のゴブリンが持つには絶対にありえない武具を目の前にゴブリン2体は装備しているのですぐに知性ある魔族ゴブリンだと理解した。
「この先は我らがゴブリン族が治める【ゴリン王国】になるが、旅の者、未熟な者、許可無き者はこの地を踏むことは許されぬ、立ち去るがよい」
ゴブリン騎士の一人が厳しい口調でこちらに告げる。
「隊長、少し硬いっすよ。少し実力を見せてもらうか許可書あれば良いじゃ無いっすか」
小柄のゴブリン騎士がお調子者特有の軽い口調で隊長と呼ぶゴブリン騎士に話しかける。
「うぬ。確かにそうだが、見た感じ許可を持っているような身分にも見えぬし、実力のある者の感じも無いのだが…お嬢さん方、許可書があるかね?無ければ入国テストを行って貰うことになるのだが良いか?」
大柄のゴブリン騎士はこちらに問いかける。
俺はゴブリン王自身に貰っているが他の許可書が無い物は試験を受ける旨を伝える。
「確かにこれは我らが王の許可書。お嬢さん以外は試験を受けると言うことで良いかね?」
俺以外のメンバーが頷くのを見て、ゴブリン騎士の隊長はテスト内容を伝える。
「この洞窟内に光輝く薬草【発光草】(はっこうそう)があるのだがそれを4つ集めて来てくれぬか?ただ、発光草の近くには発光草の光で魔物が集まっているので危険も伴うので注意してくれ」
クエスト:ゴブリン騎士からの試験を受けて洞窟内の探索に再度、乗り出した。




