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freedomfantasy  作者: 黒猫の手
クラン結成編
42/78

人助けと弟子

前方にジャイアントベアが2匹で後ろには少女が二人。

一人は怯えて頭を抱えて座り込んでおり、一人は友人を守るためか精一杯の勇気で彼女の前で震える手で剣を持ちながらジャイアントベアの方を見ていた。


「もう大丈夫だよ。あとは任せて」


少女たちを安心させる為に、振り返って笑顔で答えたが、少女二人の顔が恐怖で固まっていた。

目を離したタイミングでジャイアントベアは爪で俺を薙ぎ払おうとしたのだろうが、気配で分かっていたので、問題なくしゃがんで躱す。


「お前は彼女たちを守って」


俺の指示でスケルトンナイトは少女たちの前で盾を構える。

モンスターのスケルトンが急に目の前に来たので少女たちは更に怯えるが、スケルトンナイトは主人の命令の通りにただ、防御の大勢を取る。


「じゃあ、殺るかな」


突進して来た1匹を突進の勢いと居合のスピードで切り伏せる。

ほぼ一撃で真っ二つになった、ジャイアントベアを見て、少女たちは驚く。

この森での上位種のモンスターが一撃で切り伏せられる状況は異様な光景だっただろう。

ただ、ユエは今まで、上位の相手と戦って来ていて、レベルと言うより戦闘経験や技術は初めて戦った時よりも高く、無駄な力が入らず、脱力と力むべきタイミングをしっかり見極めて放つ技はかなりの威力を持っていた。


「さて、あと一匹」


この森では上位の種族で、捕食者としての本能があったが、目の前の餌と思しき存在が同種の仲間を倒す光景に野生としての恐怖が芽生えた。

勝てない敵、餌ではなく、自分が捕食される対象。

初めての感覚に困惑して、ジャイアントベアはユエに背を向けて逃げ去る。


「「えっ」」


逃げ出すジャイアントベアを見て、少女たちは驚きの声を出していた。

狂暴、食欲旺盛、闘争心が高く、危険な種類として広く伝わっているモンスターの逃走。

少女たちが驚くのも無理はない。

リョウやアヤメたちが見ても「はぁ?」と言うべき光景だから、驚くのは普通の感想なのだ。


「怪我はないかい?」


太刀を鞘に戻して、少女たちに近づく。

逃げるときに傷ついた怪我が見当たるが大きな怪我は無く安堵する。

ゲームと言ってもこの年の子が負うには死は気楽な物では無い。

一応、年齢制限はあるし、痛覚遮断処理も施せるのだが、恐怖はどうしても拭えないだろう。

今も、敵が居ないにも関わらず、震えが収まらない二人。


「もう大丈夫だからね」


思わず二人を抱きしめて慰める。


「「うわ~ん」」


優しく慰めると緊張と恐怖から解放されたのか、二人は泣き出し始めた。

泣き止むまで、ユエは二人を泣き締めつつ「もう安心して良いんだよ。頑張ったね」と声を掛け続けた。




「助けてくれて、ありがとうございます。私はアリスでそっちの子が私の友達のセシリア」

「ありがとう」

「私はユエでこっちのスケルトンは私の従者」


剣を持ってた子がアリスで蹲ってた子がセシリア。

アリスは加護持ちのプレイヤーで何とセシリアはNPCらしい。

ただゲーム内で話をして仲良くなった二人は、今日、初めての依頼で薬草を採取する為に森に来ていたら、ジャイアントベアに襲われたらしい。

アリスもセシリアが加護が無いNPCで友人だから自分よりも彼女を守る事で一杯だったらしく、逃げる方向も街の位置も分からずセシリアを引っ張って逃げていたらしい。


「そうか、アリスちゃんはセシリアちゃんをしっかり守れたんだね」


よく頑張ったねと頭を撫でるとアリスちゃんは顔を赤く染めて恥ずかしそうに俯いた。


「友達だもん。守らなきゃ」

「アリスちゃんありがとう」


二人は手を繋いで無事だったことを喜んだ。本当に仲が良い。


「じゃあ街まで私も一緒に行くから帰ろうか?」

「「はい」」


帰り道に何匹かウルフと遭遇したが問題なく倒す。


「お姉さん強いね。」


アリスちゃんがキラキラした目で俺を見ている。


「それにそのドレス、お姫様見たい」


セシリアちゃんも俺の服装に感想を言う。


「うーんこのドレスは私の初期装備だったからね。強さも元々の経験もあるからかな?」

「ねぇ。ユエお姉さん。私をユエ姉さんの弟子にしてくれない?」


急な言葉にかなりビックリした。

弟子って俺、弟子とか教えるとかやった事ないし自信ないな…と思いつつ悩んでしまう。


「うーん実は、私、生産職がメインなのよ。その合間で良ければ少しだけ教える事は出来るかも。あと弟子とか初めてだし教えれないこともあるかも知れないけど良い?」

「それでも良いです。お願いします」


街の中へ入り、ギルドへ依頼達成の報告を行うために向かう。


「私たちも薬草採取の達成報告があるので、問題ないです。」との事でギルドも3人一緒に向かう。

二人は通常の受付へ、俺は傭兵団専用受付へ向かう。

専用受付には最初に比べて人の数が少なく、受ける人より諦めた人の方が多かったらしい。


「もう、終わったのですか?」


受付嬢にカードを提示すると討伐数と依頼完了の情報を確認して返して来た。


「じゃあ次の依頼も受ける?」


その言葉を聞きすぐに首を縦に頷くとすぐに内容を話し始めた。


「森の奥深くの洞窟の先にゴブリンの国があるので、そこから【魔法の水】を貰って来てくれれば良いけど。洞窟の奥はかなり強いモンスターも居るのでPTでの参加もokよ」


今回はPTでの参加が可能なので仲間を集めて行こうと思うし、ゴブリンの国は前回、出会ったゴブリン王の治めている国なので挨拶も兼ねて行くのも良いかなと思っていた。

クエストを受け終えた後、室内を見渡すと、アリスとセシリアも報告が終わったのか、椅子に座って待っていた。


「ごめんね。待たせたかな?」

「いえ、そんなことありません」

「私たちも今、終わったところです」

「今から私の拠点に行くけど、二人は家とか何処なの?」


俺の問いかけにアリスとセシリアは少し困った表情で答えた。


「師匠、私は異世界人で家が無くて、セシリアも孤児なので二人で宿暮らしをしているのです。」


そうか、宿暮らしか。お金がかかるし、薬草採取のクエストじゃ泊まれるには泊まれるがその日の分しか稼げれないし、貯金も出来ない。


「うーん、アリスとセシリアが良ければ私の拠点で寝泊まりする?一応、手伝いとかして貰うけど」


一応、師匠的な立場になったのだから、寝床の提供位はしないとね。


「「本当に良いのですか?」」


二人そろって聞いてくるところを見ると、本当に宿暮らしはギリギリだったのだろう。


「良いよ。それに私は生産職でお店もしているからそっちの手伝いもするなら賃金も渡すよ」


お店の手伝いの話に二人は余計に食いつき、「「お願いします」」と頭を下げて来た。

二人を連れて拠点である我が家に向かう為、ギルドを後にした。


(二人も皆に紹介しないとな)


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