方針と行動
少し短めです。
「やっぱり、新しいシステムはしっかり活用したいと思うし、クラン結成するなら、初期メンバーは知り合いで埋めたいからね。けど嫌なら断っても良いよ。」
綾の話を聞き終えて、カップを置きながら皆を見る。
少し不安そうに、愛里沙が意見を言った。
「私たちは完璧な初心者でレベルも無いのですが大丈夫ですか?」
なるほど、彼女はβ組の俺たちとのレベルの差を気にしてるのか。
「別にそれは問題にならないよ。レベルは上げれば良いけど、メンバーは取り合いになると思うからね。それに、実際にクラン結成した後も初心者とかも勧誘すると思うから大丈夫。」
「結成後の募集は希望者なら誰でも加入出来るの?」
「そこは試験を考えてるよ。誰でも受け入れていたら組織が成り立たないからね。ただこのメンバーは知り合いだし、ユキの仕事仲間はユキ自身が知ってるでしょ?なら大丈夫だよ」
ケーキの残りを食べ終えて、コーヒーを飲みながら彩は答えた。
「おや、ゲームの話ですか?」
マスターがコーヒーのお代わりを注ぎにテーブルに来ていた。
空のカップにコーヒーが注がれていく。香りが再び鼻をくすぐる。
「明日からサービス開始のゲームの話ですよ。私たちでチームを組むんです。」
綾のカップにもコーヒーを注ぎながら優しい笑みを浮かべるマスター。
「それはそれは、楽しみですね。ではゆっくり、話していってください」
お代わりを注ぎ終えるとマスターはカウンターへ戻っていった。
店内のBGMが少し音量が下がった気がした。
マスターが話を行い易い、音量にしたのだろう。
「じゃあ、クランのマスターはユキで副マスターは2名 私と沙羅ちゃんにお願いしたいと思ってるのだが良い?」
「どうして?私たちが?」
疑問に思うのも無理はないと思う。
沙羅も珍しく、困った表情をして居るので理由は聞きたいと思う。
「そうだね。まずマスターだからと仕事をして貰うわけじゃないよ。クランの運営は私や沙羅ちゃんが向いてると思うのよ。冷静な沙羅ちゃんなら公平な目で判断出来ると思うしね。ってユキはクランのシンボルとしてただ、居れば良いよ。時々、マスターとして承認許可とか貰うかもだけど。」
「じゃあ、私は二人が決めたことに目を通して承認すれば良いの?」
「そうだね。あと、資金源もユキだから資金提供分の利権が無いと可哀そうって言うのもあるね」
俺の理由は金として、沙羅さんの抜擢理由は理解できた。
やはり組織にするなら冷静な人物が運営に関わるのが理想だしね。
「じゃあ、明日はクラン結成クエストをユキが受けて手伝いなどが必要なら呼んで。その間に残りのメンバーは愛里沙ちゃんと沙羅ちゃんのレベル上げね」
「綾、メンバー募集とかの勧誘はいつやるんだ?」
遼がクランのメンバー募集に関しての質問を始めた。
「そうだね。今考えているのはクラン結成して、各自の種族レベルが15以上、各自、メインジョブを決めてそれがβ時の限界20以上になってから勧誘開始しようと思っているよ。あと最初の勧誘は3~5人位かな?」
「結構、具体的だな?」
「まぁね。まず、勧誘するとしたら初心者の可能性が高いから、指導出来るレベルが欲しいって事と、人数は、一人に対して一人~二人位で対応して、ケアー出来たらいいかな?っと」
クランの運営は綾に任せていれば問題ない気がするな。
「しかし、クランを結成してのメリットって何だろう?」
「うーん、情報は多分、実際にクエスト受ける際に聞けると思うよ。ただ、私個人としては仲の良いメンバーで集団戦闘とかを行うためのグループって認識かな?特典があれば余計に盛り上がると思うよ」
クランの件以外で新規追加しか内容の事は実際に体験してから話し合うことになった。
そのあとは綾と沙羅さんがお互いに連絡先を交換して、細かい話をしていた。
多分、クランの結成時の規則や入団試験の内容だろう。
全員がテーブルにあるコーヒーとケーキを完食して会計に行く。
会計は俺が一括で支払う。
割り勘とかは行わず友人で順番に支払う形をしているので、今日は俺の番だった。
喫茶店の外へ出ると夕暮れになっていた。
喫茶店の前で沙羅さんと愛里沙と別れる。
二人は、沙羅の家の車に乗って帰るそうだ。
俺たちは久々に4人で帰った。4人で帰るのは何年ぶりだろうか?
「兄さん、サーちゃんって実物もやっぱり可愛いね。」
「そりゃね。けど花音も可愛いし、彼女は見た目で友人を作る子じゃないから気にせず接しな」
人付き合いが苦手な花音の幼馴染の綾たち以外の初めての友人に少し不安だったのだろう。
喫茶店でも愛里沙と会話する事が無く、無言を最後まで貫いていた。
「花音。愛里沙の連絡先教えてあげるから今日の夜にでも電話かメールでも送ってあげな」
俺は遼と綾に気づかれないように、花音の頭を撫でた。
この光景を過去に見られてシスコンと言われた事があるので、二人の前ではあまり見せたい光景ではなかった。
頭を撫でられて嬉しそうな顔をする花音。
シスコンでは無いと思うがそんな顔をされると、こっちも嬉しくなる。
「おい、早く来よ」
遼と綾が俺たちに向かって手を手を振って呼んでいる。
俺たち兄弟は顔を合わせて少しお互いに笑った後に、手を繋いで走った。




