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freedomfantasy  作者: 黒猫の手
βテスト編
38/78

横道 とある男の戦闘禄

決勝での話です。

準決勝で戦った少女も筋が良かった。

動きが滑らかで、動きを反射的に行っていた為、無駄が無かった。

ただ、経験が少なく、フェイントの対処が出来ずに俺に負けていた。

2回戦の子と同じく鍛えたら輝くものを持ってると思う。

と言うか師匠の好きな原石タイプだ。


過去の戦闘を思い出して顔がにやける。

ライバルの相馬が死んでから目標も無く惰性で修練を繰り返していた時に、師匠からこのゲームの話を聞いた時は「遊んでる暇もないわ」とキレてしまったが、今思えば、師匠には感謝だな。

決勝の相手は槍使いの男だ。

ジョブは、槍術士と言う衛兵などに多く見られる者だが、彼の動きは槍と言う獲物を理解している動きだった。

基本、槍は長いリーチが長所であり短所でもある。

剣などの相手にはリーチ外からの攻撃も可能で、剣の斬る動作に比べて槍の突くと言う動作は見極めるのが難しく、達人になると目にも止まらぬ内に突かれると言う話も聞く。

だが、槍は柄の内側に入られると攻撃手段が少ないという短所もあるのだが、相手の男は、柄の内側からでも突く事が出来る動きと薙ぎ払いなどの棒術での使い方もするトリッキーで実践的な動きだった。

このゲームでのスキルも存分に理解しているのか発動する場面やタイミングも上手く、かなりの強敵になりそうだった。

体が熱くなり、この仮想の体でも心臓が大きく鼓動したように感じる。

現実ではあまり味わえない緊張感と強敵と戦える興奮が襲う。

頭は冷静にしようとも、師匠から「この戦闘バカが!」と居られる野生が理性を吹き飛ばそうとする。

早く戦いたい。開始まであと1時間…かなり長くこの間に理性が飛びそうだった。



時間になりリングに立つと隙の無い形で相手が立っていた。

長い槍を矛先を地面に柄の先端の上に向けて逆手で持つ男。

その姿はいつでも戦闘態勢と言える物だった。


「いやー。決勝は男か…。にいちゃんも中々、イケメンだがやっぱり可愛い女性と戦いたかったぜ。準決勝のエルフのねえちゃんは中々、好みでよかったぜ」


槍の男は軽口を叩きながら懐から煙草を取り出した。


「ふぅ~。この世界でもあるから良いねぇー。にいちゃんも一服居るかい?」

「いや、結構だ。それよりも俺は戦いたくて、うずうずしてるんだ。早く殺ろうぜ」


俺は殺気を出して相手を威嚇するが、余裕な笑みで煙草に火を付ける男。


「慌てなさんな、時間が来れば試合になる。それまで一服位楽しませてくれや」


ふぅっと煙を出しながら空を見上げている男。だがその姿でも隙は見当たらなく、どう動いても裁かれるイメージがあった。


(これは思ったより差があるな。楽しみだ)


予想以上の力量の差に笑みが零れる。

今までは強いと言っても隠したばかりで将来が楽しみではあったが今現在では戦っても不完全燃焼な感じは否めなかったのも事実で、決勝は本当に自分が楽しむ為の物になりそうだと思った。


「ふぅ。にいちゃん名は?」

「ゴトー」

「俺はランス。槍を極めし男だ。しっかり覚えておけよ」


煙草を足元に落として火を消した。その瞬間に俺は攻撃を開始した。

審判の合図を待つ気も元々無く、戦闘したい欲が我慢の限界を超えたための行動だった。

ダッシュで相手の懐に入ろうとした瞬間に寒気がして横へ飛んだら、横を槍が通る。

あのまま居たら槍の餌食だった。槍が手元に戻る前に体を密着させようとするが、槍が手元に戻るスピードも速く、追撃来る。


「どうした?避けるだけじゃ勝てないぞ」


槍はかなり扱い辛い武器にも入るが男は自由自在に扱い、槍の突き、払い、一歩も動かずに俺を牽制する。

普通に槍使いを相手にする際は、槍を拳や蹴りで逸らして近接に持ち込むのだが、ランスの槍捌き今まで相手してきた奴らが子供の様に感じるレベルだった。目で見ても点にしか見えず、戻しが早くて槍を捉える事が難しかった。


(少しダメージ覚悟で近づくか)


拳闘士のスキル、「金剛の構え」を発動。


金剛の構え…自身の防御力を上昇&カウンター確率上昇。構え解除するまで効果は永続


「来い」


槍を構え直して対峙するランス。

俺は素早く一歩進む。点の攻撃を確認、最小限で避ける。

先ほどよりも早い、突きの動作。

ギリギリで避けるため、手甲を上手く使って防御する。直撃を避ける。

時間にすれば数秒のやり取りだが、俺にとっては長い時間に感じた。

この長い時間が終わりを告げる。やっと俺の射程範囲内に相手を捉えた。


「喰らいやがれ」


腹部、脛、下顎に打撃と脚撃を与える。

最後に体に回転を加えて両手で腹部に掌底を当て、相手を吹き飛ばす。


ランスは壁まで吹き飛び、砂埃が舞い上がり、視界が遮られる。


「はぁはぁ」


肩で息をして整える。与えだ手数に比べてかなりのダメージを与えたと思う。


「やべー、意外と良いダメージ貰ったぜ」


砂埃を槍で吹き飛ばすと、ランスが立っていた。


「じゃあこっちも少し本気出すぜ」


穂先を少し下に向けて左柄で柄を持ち、右手を添えて腰を落とした。

明らかに先ほどと違い攻撃するための構えだった。


「しっかり耐えてくれよ」


ランスが踏み込んでくる。滅多突きと言えるくらいの素早い突きのラッシュ。

俺の目ではもう点の攻撃から平面の攻撃に代わっている。


「おらおらおら」


腕、足、腹部、色々な部位が突かれる。金剛の構えと急所の胸部と顔を両手の手甲で防御する。


「おらよ」


横薙ぎで吹き飛ばされる。

体中が傷だらけで、もうダメージが結構、貰った状態のゴトーに対して、まだ少し余裕のあるランス。

(ああー楽しいぜ。やっぱり戦いは良いな)



それからランスとの攻防戦は過激を極めた。

凄まじい突きのラッシュとそれに対応して、ゴトーも槍に向かって拳を放つ。

槍と拳がぶつかると衝撃が周囲に広がる。


「あー、もう止めだ」


その言葉と同時にランスは槍を納めた。


「どういうことだ?」


俺は少し怒気を含む声で聞いた。

それはそうだ、やっと楽しめる戦いに巡り合って、絶頂の中に居たのに急に相手が武器を納める行動は怒りも覚えると言うものだ。

観客も急な終わりにどよめきが広まる。


「俺の目的は決勝に出た段階で終わってるからな。さっきの打ち合いで槍にヒビが入ってしまったから、これ以上の戦闘は俺にメリットがない所が武器を失う可能性もあるから終わるだけさ。審判、俺はギブアップだ」


新しい煙草を取り出して咥える。


「目的とは何だったんだ?」

「いや、お前も知ってるがここでは剣が騎士として由緒ある武器で、拳は蛮族、槍と弓は臆病者の武器と言われている」


確かに騎士や貴族は剣こそ、忠誠を誓う気高き武器として認識されている。


「だから俺は槍が強い武器だと認めさせたいから出たのさ。そして、ここまで来れれば目的は達成出来た。槍をバカにする奴も少しは減るだろう」


咥えた煙草に火を付けて煙を吐く。


「まぁ不完全燃焼だろうが俺はこれ以上やる気も無し、降参宣言もしたから終わりだ」


大会の決勝は相手のギブアップで終わりを告げた。

しかし、試合の中身はレベルが違ってた為、観客もかなり興奮していた為、この結果に納得の行かない人もかなり居たが、ルールに問題ないため、終了した。


「次戦うときは、本気でやろうぜ」


煙草を咥えて去っていく後姿を見ながら俺は、本当にこのゲームを始めて良かったと思った。

やはり騎士と言ったら剣で、槍は衛兵などのイメージですよね。

不遇ではないけど人気が無い槍の普及のために大会に出たので負けるイメージは避けたいという感じで降参したのですよ。



誤字修正

損でる暇もないわ→遊んでる暇もないわ

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