PVP大会本戦2
本戦2試合目です。
何度、書いても戦闘シーンの描写が上手く出来ないです。
上手く表現出来るようになるまで、長い目で見守って頂けると幸いです。
左手を握ったり開いたして感触を確認した。
問題は無く、普通に動く。前回の怪我は自己再生の能力と薬が効いていた。
次の対戦相手は間違いなく現実では格上の相手だと思おう。
俺では勝てないと思える技量の差を彼の試合を見て、実感させられた。
俺の顔を覗き込むように、サリアが不安そうな表情を見せる。
俺の不安が彼女にも伝わってしまったのか、俺よりも不安そうで今にも涙を流しそうな目をしていた。
彼女の頭に手を置いて撫でる。
「大丈夫。勝つ気で居るし、全力をぶつけてくるよ」
彼女の不安を払拭することは出来ないかもしれないが、出来るだけの言葉を伝え、会場へ向かう。
「待っていた。君は強者への頂へ向かう途中に居る。この試合で何を掴むかは君次第だ。」
彼はほぼ初期装備の布の服に皮の胸当て、皮の手甲以外に武装は無かった。
「この格好か?何、今まで魔物と闘ったことが無くてね、ログインしてから今まで山に篭って木を相手に殴っていただけだから、装備を買う金が無いのだよ」
彼は笑いながら自分の今までの行動を言ってきた。
魔物と戦ったことが無いのなら、種族レベルは1の可能性があるのだが、1レベルでこの本戦まで来れるものなのか?
「ふむ、君の疑問はレベル1でほかのプレイヤーに勝てるのか?と言うことだと思うが、答えは可能だ。このゲームのステータスは所詮、死に難いだけで、1レベルでも10や20の相手でも勝てるのだよ。俺から言わせればまだまだ、現実の動きが100%出来るわけでは無いので制限がある状態と変わらないのだがね」
彼は笑いながら俺の疑問に答えてくれた。
「では試合を始めようか、審判も困ってるしな」
彼は普通に歩くように俺に近づいてきた。
一歩、二歩、三歩。普通に歩いてきたが、しかし、何処を攻撃しても弾かれるイメージを俺に与えるほどの隙が無かった。
気づけば居合いの範囲内に十分入って居た。ここで放たないと、密着状態で太刀が不利になる。
居合いを放つ。何回も繰り返した動き、それによって無意識で放てるこの太刀筋は鋭く早い。
だが、彼はその太刀筋を歯の無い横へ拳を入れて叩き落した。
俺は唖然とした。
早さも鋭さも自身があった。避けるなら理解も出来るし追撃方法もある。しかし、目の前の彼は叩き落したのだ。
「ふむ、約2万回程度か?誤差が0.3秒。まずまずかな?」
彼は何かを呟く。すぐに俺は意識を切り替えて、太刀を正眼に構えた。
「ではこっちも行くぞ。攻撃方法は正拳突きだ。」
彼は制限すると俺の視界から消える。
体を少し屈めて、左手で構えている太刀をずらし懐へ入り、正拳突きを繰り出す。
彼に気づいたときはもう、拳が放たれた後だった。
防御力で外部のダメージは無いものの、衝撃が内部に伝わり、後方の客席防御結界が発動していた。
「ぐふ」
口の中が鉄の味がする。すぐに痛覚が遮断されるがダメージで膝を着く。
「俺はこの正拳突きなどの色々な技を毎日1000回行っている。体が反射レベルで繰り出せるように。俺は過去に武の天才と言われた彼に負けてから更に厳しい修練を自らに課した。君もある程度は武芸を嗜んでいたのだろうが、最初の試合で見せた回避技術はまだまだ、使いこなしていない。あれの真骨頂は攻撃にある。」
言われなくても理解していた。俺の武術はお兄さんが死んでから止まっていた。その前も周りに甘えて、自分が弱いと認め、放棄していた部分もあった。技もお兄さんのコピーだ。現実より身体能力が高いこの体でも、お兄さんの、本家本元とは似ても似つかない劣化コピー。
「まさか、もう終わりにするのか?それでも、葵 相馬の弟子か!」
この人はお兄さんを知っている。このまま負けるのは嫌だ。
俺が負けるのは良い。弱いもの理解している。だけどお兄さんの強さが否定されるのは許せないしさせない。
「僕はお兄さんの弟子では無かったよ。技を貰った事が無いからね。ただ見て覚えただけ。だけど、僕の負けがお兄さんの強さに傷が付くのなら僕は負けるわけには行かない」
太刀を構え直して相手に対峙する。
「では行くぞ!」
彼は攻撃を仕掛けてきた。認識が出来るかギリギリの速度の拳、威力もある蹴り、それを踊るようなステップで躱す。
相手の攻撃を躱す際に太刀での斬撃を放つ。回避と攻撃の一体化。
「剣技は舞と似ていると俺は思っているんだよ。避けるときは相手の意識に合わせて踊るようにすれば上手くいくからね。まぁこの感覚が理解できる人が少なくて俺は困っているのだがね」
過去にお兄さんが言っていた言葉。
「剣舞、お前なら出来るかもな」
体を捻って回避と同時に蹴りを入れる、バランスは常に取って相手との距離も離れず一定の距離で動く。
彼の表情は楽しそうだった。多分、俺も楽しそうな顔をしていると思う。
観客の声が遠く感じる。お互いに攻撃と防御が素早く変化する様はダンスの様にも思える。
もうそろそろ、終わりが近づいてる感じがする。
「次で終わるな」
「そうですね。」
俺は太刀を鞘に納める。
俺に出来る最大火力の一撃は居合いしか無かった。
相手と同時に動き始める。
太刀を抜くと同時に彼も蹴りを繰り出す。
彼は種族レベルもステータスも俺より低いのに、この体の扱いがかなり旨かった。
脱力してから放つ蹴りで太刀と一緒に吹き飛ばされる。
俺は一撃で彼の足も切れるがダメージは俺のほうが大きく、立ち上がることも出来なかった。
愛刀が俺の隣で刀身を半分折れた状態で転がっていた。
「これが足じゃ無かったら、俺が負けていたわ」
(負けたのか…僕は…)
動かない体、相手が僕の前で片足で立って、手を差し伸べていた。
「さすがあいつの弟子だ。楽しかったぜ!」
負けて悔しいのに、彼の言葉がお兄さんに認められたような気がして嬉しくもあった。
「おいおい、泣くなよ。俺が泣かしたみたいじゃないか」
僕はこの試合、最後に号泣してしまった。
チートステータスでも負ける様なゲームです。
技術(PS)だけだと敷居が高いが、能力だけだとまた飽きてしまうのでゲームはバランスですよね。
年内中にβテスト編、終わらせたいですね。
終わったと同時に章管理使ってみたいと思っています。




