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開幕、『新しい世界』①

「おーい」


どこからか幼い男の子の声が聞こえる。


「寝坊助さんだね」


今度は女の子だ。


そんな二つの声に導かれるように、静かに瞼が開かれた。


「「あ」」


二つの声と共に二つの顔がある。


どうやら俺の顔を覗き込んでいたようだ。驚きは少なからずある。その二つの声の主である少年少女は紛れもないアニメ、二次元、もしくはキャラクターを現している。それでいて、一度すでに経験している事だけあって、叫ぶような事態にはならない。


おのずとため息が漏れる。だって、目を覚ましたということは、夢である可能性があったのだ。しかし、その淡い期待も一瞬でなくなってしまった。


意識を失う前の出来事は紛れもない事実で、今もこうして続いているのだ。


「あっ」


ふと倒れる直前のことが思い出される。そういえば俺は脱水症状だか、熱中症で倒れたのだ。体にどこか異変がないか寝かされていた体を起こして確認する。思いのほかだるさはない。むしろなんというか、こう、もっていたはずの違和感と言うべきものがなくなっている気さえした。


「ねぇちゃーん、おきたよー」


「リン君こえ大きいよー」


リンと呼ばれた少年が誰かを呼んでいる。


それに応じ、どこかの部屋の奥から返事が返ってきた。


そこで初めて俺は焦りを感じた。


山だか、森だか、その一幕を思い出したのだ。俺はこの世界ではない現実の人間であり、ましてや初対面のキャラクターに化け物呼ばわりされ、ましてや殺されかけている。そんな人間をどんな形で紹介しろというのだ。


だが、何もいい案が浮かばない間にも徐々に足音は近づいてきている。まずい、言い訳にしろ、なにか会話に繋がる何かがほしい。


その瞬間、俺の中で何か不思議であり、不思議でないことに気が付いた。


そもそも、俺はなぜここにいる?


なぜ、目の前の子供たちは俺に対して、普通に接することができる?


そもそも、俺は助けられたのか?


気が付いてみれば、違和感がなくなっていることが違和感なのだ。


俺は化け物として見られていない。


ガチャリとこの部屋の扉が開かれた。


記憶に残る、肌、指先、手のひら、時すでに遠い記憶のようにうる覚えになっている。


「あ、目覚まされたんですね」


入ってきたのは、俺とそんなに歳が変わらないであろう少女。


「どうかしましたか? あ、無理もないですね。目が覚めていきなり違う場所にいたら」


可愛い少女だと思う。仕草も、口調も、じゃれた子供たちを構う姿も、だからこそ違う。俺はこの世界でその感情を抱ける存在ではなかったはずだ。

少女の問いかけに答えるよりも、俺は恐る恐る確かめる為に自分の手の平を確認した。


叫びはしない。確認するよりも可能性の中にソレが思い当たっている。そして、それは当たり前のように正解へと導いていた。


「勘弁してくれ」


俺の体はすでに現実のものではなくなっていた。


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