新しい朝
彼女の前日の記憶は、管理人とカーディナルによって計画された歓迎パーティーが終わり、他の色におやすみを言って虹色は管理人に部屋まで案内されたときのことでした。
「とりあえず、明日の午前8時くらいに私の部屋まで来てね」
「はいっ!」
「それじゃあ、良い夢を」
その言葉と共に、彼女は虹色の手に部屋の鍵を渡しました。
そして、虹色は案内された部屋ですぐに眠ってしまいました。
彼女にとって、初めての朝でした。
嬉しい嬉しい、始まりの日でした。
外から聞こえる鳥達の声で彼女は目が覚めました。
虹色は身体を起こすと欠伸を一つし、大きく伸びをしました。
視線を下に下ろすとそのまま眠った為か、洋服には皺が寄っていました。
「あー……」
これは替えの服を着ないと。
管理人からは、複数の服を部屋に用意してあるからと言われた。
それぞれの個室に洗濯機を設置しているから、とも言われた。
よくは分からないけれど、このマンションはすごいのだろう。
温かい布団から抜け出し、少し冷たい床を歩き洗面所へと向かいました。
そこに設置されている鏡を見ると髪の毛も所々、絡まっていました。
一つ一つその絡まりを解いていると、寝ぐせもヒドイことに気付きました。
「……このままじゃ、外に行けないわね」
自分の格好を見て、少し苦笑しました。
虹色は鏡から左へと視線を移しました。
洗面所の隣には風呂場があり、そこそこ広いようでシャワーと浴槽がありました。
お風呂に入って、身支度を整えようかしら。
色は元々、お風呂に入って身体を綺麗にする必要はありません。
自分の色素がお風呂に流れ出し、下手をすると消える可能性があるからです。
しかし、虹色は多くの色素を持ち合わせている為、お風呂に入っても大丈夫と管理人から言われていました。
それに、カラーパレットは高性能なマンションなので、そんな事態はまず起こらない。
管理人がそういっていたので、きっとそうなのでしょう。
「どうしようかしら……」
ベッドに再び戻り、しばらく考え込んでいた虹色でしたが、部屋に設置されている時計を見るとまだ“7時前”を指していました。
そして、よしっ!と独り言を言うとお風呂に入る準備を始めました。