ようこそ、カラーパレットへ(1)
しばらく、他愛のない話が続きました。
カーディナル自身のこと、他の色のこと、カラーパレットのこと。
たくさんのことを話しているうちに、二人はカラーパレットの玄関についていました。
「わぁ…」
虹色は思わず声を漏らしました。
見上げたカラーパレットは、様々な色で溢れていました。
その階に住んでるであろう色達を基調として、色分けがされていました。
「さ、中にどうぞ」
カーディナルが少しだけ、笑顔を浮かべました。
淡い色で“カラーパレット”と書かれた白い看板が上に飾られた玄関を通り、二人は中に入りました。
玄関も様々な色があしらわれ、白に近い灰色の壁紙に茶色と黒のタイルが敷き詰められた床。
右側にはセピア色のソファに茶色のテーブル。
玄関といっても、談話ができるような物が置かれていました。
左側には“管理人室”とプレートが下げられた扉がありました。
奥には各階に行く為の階段とエレベーターがありました。
「綺麗な場所ですね!」
真紅の瞳を輝かせながら、虹色は言いました。
まるで、小さい子供の様に。
カーディナルはその言葉を聞き、得意そうに答えました。
「だろ?
管理人が毎日掃除とかしてくれてるからな。
話をしたりする時は、ここで話したりしてるんだ」
「素敵です!
こんな所でお話し出来たら、会話も楽しくなりそうです」
「まぁな。
毎日のように、女子たちはここで話しこんでるよ。
…それは、いいんだけど」
その光景を思い出して、少し溜め息を吐きました。
楽しそうに喋ったあとに残されたお菓子のゴミ。
忘れていった雑誌。
話すのはいいんだけど、ちゃんと片付けてくれよな。
溜め息に首を傾げた虹色は不思議そうな顔をしました。
「どうかしたんですか?」
「いや、ちょっと嫌なことを思い出しただけ。
気にしないで」
苦笑いを浮かべ、カーディナルは“管理人室”の扉に近づいていきました。
手をかけたところで、虹色の方へ振り向きました。
「ここで、皆待ってるんだ。
それで俺がこの扉を開けたら、虹色さんが先に入ってくれないか?」
「はい、分かりました」
なんでだろう、と思いながらも虹色はカーディナルが扉を開けるのを待ちました。
軽い音を立てながら、静かに扉が開きました。
虹色はゆっくりと中を覗き込むと、中は真っ暗でした。
不安になり、後に立つカーディナルをもう一度見つめました。
「虹色さん、中に入って」
「は、はい」
恐る恐る中に入ってみると、軽快な音を出して何かが鳴りました。
それがクラッカーだということに気付くのに、時間はあまりかかりませんでした。
パチっという音と共に明かりがつきました。
そして、辺りに舞う紙吹雪を見て、虹色は何度も瞬きをしました。
「え、え?
これは、なんですか?」
驚きのあまり、固まってしまった虹色の後からカーディナルが前に出ました。
イタズラっ子っぽく笑みを浮かべて、後の方を見ました。
そして、大きな声でわざとらしく言いました。
「皆、隠れてないで出てこいよ」