カラーパレットの管理人
二人は再び、歩き始めました。
今度は虹色はカーディナルの横に並んで。
「さて、まずは何を教えようか」
「さっき、“管理人”って言ってましたよね。
どんな方なんですか?」
やっぱり、そうきたか。
管理人について、新しくやってきた大体の色は反応した。
何度も他の色に繰り返し伝えてきたことを、虹色に伝える。
「カラーパレットの普段管理してくれてる人さ。
色じゃなくて、本物の“人”。
俺達のマンション以外の管理人とは違うんだ」
他のマンションの管理人は完全な“色”だ。
けれど、カラーパレットの管理人は本当の人。
どこから来て、どうやってなったのかは一番最初にやってきた俺でも知らない。
ただ、すごい人間ってことだけしか知らない。
「知識が豊富な人でさ、特に色に対しての知識はすごいんだ」
「そうなんですか?」
「あぁ。
だから、俺の目の色を見て“カーディナル”って名前をつけてくれたんだ。
他の色の名前もそうだよ」
「え、でも…」
「ん?」
カーディナルは何か、疑問でも?と虹色に聞き返しました。
虹色はその疑問を言葉にしようか、しないか迷った末、口にしました。
「さっき、前の住んでいた所で、管理人に名付けてもらわなかったのか?って聞かれたので…」
「あぁ…そのことか」
どう説明しようか。
考えが上手くまとまらない。
けれど、とにかく言ってみるのが策かもしれない。
「大体の色は前の住んでいた所の管理人に名前をもらってたから。
もちろん、もらってなかった色もいたんだけど…。
その上で、管理人は俺たちに二択だすんだ。
前の名前のまま過ごすか、新しい名前で暮らすか」
「なんか、怖いですね…」
虹色が身震いするのをみて、カーディナルは少しだけ苦笑した。
言い方が悪かったのだろうか。
その発言に対して、フォローするように言葉を付け加えた。
「いや、そこまで怖くはないよ?
あの人は優しい人だから。
実際ヒドイ名前を付けられてた色も新しい名前をもらって喜んでいたしな」
「そうなんですか…?」
不安そうな表情が少しだけ、明るくなった。
カーディナルは更に言葉を続けます。
「あぁ、そうだよ。
だからきっと、虹色さんにもいい名前を付けてくれると思う。
俺が保証する」
カーディナルはそういうと、ニカッと笑いました。
それを見て、虹色は少し安心した表情を見せました。
記憶を失って、どこの色だか分からない私に対して優しくしてくれる。
不安だった心が少しだけ、明るくなりました。