新しい住民-虹色
赤色が色彩広場へ行くと、その色が既に待っていました。
ゆっくりと、その色に近づいていくと赤色は驚きました。
その色は単色ではなく、様々な色が混ざった姿をしていました。
単色ではない色を見るのは初めてだった赤色は何度も瞬きをした後、その色に声をかけました。
「えーっと、君…“虹色”さん?」
「え?」
赤色の声に反応し、その色は振り向きました。
その色は、“虹色”という色に相応しいほどの色とりどりのドレスを着ていました。
赤、橙、黄、緑、青、藍、紫…。
それらの色にはグラデーションがかかり、混ざり合った色はまた新しい色を生み出していました。
髪の色は“藍”で長く綺麗に整えられ、目の色は“赤”でした。
「あ…」
赤色は虹色の瞳を見て、小さく呟き息を飲みました。
自分と“同じ色”を見るのは初めてだからです。
同系色を見たことはありましたが、全く同じ色は初めてでした。
「どうかしましたか?」
虹色は、首を傾げました。
頭についている“紫”のリボンも一緒に揺れしました。
赤色が自分を見つめたまま固まっていたからです。
我に返った赤色は、数回瞬きをするとやっと言葉を口にしました。
「え、いや…」
俺と同じ色を初めて見たから、という言葉が喉から出掛けましたが飲み込みました。
その言葉がもしかしたら虹色を傷つけてしまうかもしれない。
赤色はそんなことを考えて、言うのを辞めました。
少し俯き、どうしようかと考え出しました。
けれど、赤色がそう思った瞬間、虹色が口を開きました。
「赤色さん、ですよね?」
「あ、うん。
そうだよ」
「赤色さんの色って、私の目の色と一緒なんですね」
そう言うと柔らかく、虹色は微笑みました。
赤色はその言葉を聞き、この子も同じことを思ったんだ、と少し嬉しくなり、微笑み返しました。
そして、彼の色素が少しだけ濃く赤くなりました。
しばらく、その状態が続きましたが、赤色は此処に来た本来の理由を思い出しました。
「…っと、こんなところで油売ってる場合じゃない。
他の色がカラーパレットで君が来るのを待ってるんだ」
「私が今日から住むところですね?」
「うん。
とりあえず、そこに向かいながら話そうか」
「はい」
虹色が返事をすると、赤色が歩き始めました。
その後を虹色がついて行きます。
赤色は少し、後を振り向き速度を遅めました。
彼の後ろを虹色がついて来れるように。