表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/29

File23 マーベリック・ファイルズ

 闘病生活を思い返していると、ふと自分の異常な幸運に恵まれていた事に気づいた。多くの再生不良性貧血の症例に比べ、自分の症状は最重症であったが、それによる二次的な病傷などが殆ど無くここまで生きてこられた。


 そして、マーベリックはある結論に至る。自分は『異能生存体』では無いのかと……


 異能生存体。遺伝確立250億分の1で誕生し、生存能力と回復能力が不死身並みに高い固体を指す、どこぞの宇宙軍のヨラン・ペールゼン大佐が提唱した概念である。それの疑いがある一兵士は一種の因果を狂わしたような奇跡を起こし、至近距離で機関銃に狙われても機関銃が暴発して壊れたり炎で焼かれても生き延びたという。


 ……と、冗談はさて置き、今回はそんなマーベリックの命を救った幸運について書きたいと思う。


 幸運。今思えばマーベリックは『不幸中の幸い』で幾度も危ない橋を潜り抜けてきた。


 川の急流に流されても岩にひっかかって生存したり、両手をスキー靴を持って両手を塞いだ状態で凍った道で滑って転んで頭を打ちそうになっても、スキー靴が勝手に吹っ飛んで両手をつく事ができたりした。


 だが、一番危なかったのは再生不良性貧血とわかる直前の学校だった。


 普通に遊んだり授業の柔道に出たりしてたがアザを沢山作っただけで、脳出血も他の人から風邪やら変なウィルスをもらう事も無く平穏に暮らせた……だが、もしあの時に鼻血を出さずに平穏な生活を続けて気がついたらポックリと……などと思うとやっぱり怖い。


 だが、自分の異様な不幸中の幸いで特筆したいエピソードが一つある。それは『カンボジア研修』だ。


 カンボジア研修。共産主義政策で国内産業やキリング・フィールドと呼ばれるような惨状を作り上げたポルポト政権の爪あとは今も深く残されており、多くの孤児たちが学校はおろか食事にもありつけないような現状が繰り広げられている。


 そんな状況から孤児たちを救おうと自分の高校では文化祭で募金を呼びかけたり、春休みに現地に行って孤児院で子供たちと交流したりするプログラムがある。子供好きのマーベリックにとっては、純真な子供達を政治の道具にしたポルポトは最悪のクズ野郎だと思うし、何よりも彼らの現状を知り、何かを行動を起こしたいなとその当時思った。


 そんな一心でプログラムに申し込もうとしたが、事件は起きた。


 恥ずかしながらマーベリック、家で問題を起こして両親に怒られてしまい、このプログラムの参加を許されずに春休みを日本で過ごすことになった。まぁ、問題というのは、マーベリックが親に黙ってiPodを買ってしまったんですよ。それで母がキレてしまい……まったく、あの教育ママめ!!


 ……でも、もしカンボジアに行けてたら死んでたかもしれない。


 衛生的にも行進国のカンボジアで水を飲んで変な病気になったかもしれないし、鼻血を出して輸血をしてエイズをもらってたりしたかもしれない。というか、飛行機に乗ったら血中物質の影響で悲惨な事になってるよ!!


 本当にあの時は危ない橋を渡りまくってた。


 マスクも付けずに東京の満員電車に乗ったり、友達とじゃれあったり……今、思い返すと本当に我ながら命知らずな事をしてた。入院中もマスクせずに色々な所をちょろちょろした。


 そんなでも生きている僕の事をある人は神様が護ってくれたと言う。だけど、マーベリックは思う。神様がいるんなら俺はこんな目に遭っていない、と。ただの幸運。それだけである。今も昔もこうやって健康に生きていられるのは小さな偶然がそんな『当たり前』を護ってくれているのだ。


 そんな当たり前に感謝しながら僕は毎日を生きている。


 とは言いつつ、それでも生きてた俺って異能生存体じゃないのか?とボトムズを見終わったマーベリックは思う。

※異能生存体:装甲騎兵ボトムズというアニメの用語。主人公、キリコ・キュービィーがそれらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ