File17 マーベリック洋画劇場
前回も述べたとおりマーベリックは大の洋画好きである。ジャンルは結構雑食でB級アクションから涙ボロボロのヒューマンドラマまで何でも見る。
洋画は良い。現実や日本じゃ見られないモノが見れて、役者本来の演技と吹き替え版の声優さん達の上質な演技を見れて二度美味しい。
マーベリックが洋画にはまったのは小学生のころだった。父親がお土産に買ってきてくれた『トップガン』を見てアメリカや英語に憧れを持ったのだ。ちなみにユーザーネームの『マーベリック』はトップガンのトム・クルーズが演じたパイロットのTACネーム(パイロットのあだ名)から取ったのは知る人ぞ知る話。
今回は大好きな洋画が一号室の僕と学校とのお話。
中間試験が終わり、客足も増えた一号室に担任の市川先生がやって来た。お土産にはお菓子と世界史のプリントとその他宿題。お菓子は良いけれど宿題は……
その後、僕と先生は学校で起こった事や現在の自分の体調などの話をしていると話題は世界史の授業に変った。マーベリックは無類の世界史好きで先生や生徒の間で有名で、卒業文集で付けた通り名は『歩く用語集』だ。ちなみに友人のねこぜなユーザー様は『毎朝8時半起床』との事。
「そういえば、いつもの映画授業なんだけど、中世ヨーロッパの映画知らないんだよね……映画係としてオススメある?」
いつもの映画授業。
市川先生は時代のイメージを掴む事によって生徒の理解の向上を図る『映画授業』を試験が終わるたびに行う。ローマの時は『グラディエーター』ギリシアの時は、個人的には『300』が良かったが『アレキサンダー』古代インドでは何故か解らないが『7イヤーズ・イン・チベット』。噂によると、先生は主演のブラピのファンとの事。公私混同の騒ぎじゃないですよ。インドなのにチベット……ゴリ押しもいいところ。
あと、映画係というのはクラス特有の係りで、放課後とかに見たい人が集まって見る映画を選定する係りであったが、係りのマーベリックが入院したせいで形骸化された悲劇の役職である。ちなみにマーベリックの本業は柔道係とトイレ掃除。トイレ掃除は誰よりも綺麗に早くできるのが自慢なので就任することになった。
「オススメの映画っすか?」
中世時代の映画……中世ヨーロッパといっても結構広い。800年のカールの戴冠から絶対王政が始まる16世紀くらいをモチーフにした映画はあまり多くは無いが、とっさにリストアップできたのは
「ブレイブ・ハートなんてどうですか?」
「どういう映画?」
ブレイブ・ハート。これは中世映画の最高傑作と言っても過言ではない。14世紀前半のイングランドはプランタジネット朝の頃、模範議会で知られるエドワード1世に反旗を翻したスコットランドの英雄ウィリアム・ウォレスの生涯を描いた作品。タイタニックのJ・ホナーの美麗なケルト音楽が雰囲気を作り、合戦のシーンは血肉沸き踊る最高にいい映画だった。
これを先生に薦めた所……
「スコットランドはまだやってない。イングランドとフランスの百年戦争まで」
え……なら仕方ない。なら第二候補として……選んだのは
「ロビン・フッドはどうです?ラッセル・クロウの」
ロビン・フッド。イングランドの弓の名手であり、義賊である彼の生き様をイングランドとフランスの抗争とを交えて描いた映画。ラッセル・クロウ、どんだけ歴史ものに出てるんだってツッコみたくなる一品だが、当時の税制度や農村での三圃制とかを良く描かれえいたので、教材には良い感じだと判断した。
「いいね。じゃあレンタルしてくる」
「その必要は無いですよ」
そう言って僕は万能棚から数年前の『ガンダム一番くじ』で当たったMSM-04アッガイが描かれたCDケースを取り出した。何でアッガイかって?好きだから。ジオン系のMSの中じゃ一番可愛いから……可愛いすぎてプラモデルを買うほどです。ちなみに一番すきなのはGP01と、パワードジム。最近のガンダムに欠ける泥臭い兵器感が良いんですよ!!若い人にはそれが解らんのです。
……このまま行ったらガンダムエッセイになりそうだから本題に戻ります。
僕は病院で暇をしないようにDVDをこの中に入れて持ってきていたのだ。もちろん、ロビン・フッドも。ちなみにマーベリック厳選の映画は大分渋い。地獄の黙示録やらビッグなど色々と変なのが沢山入っている。
「これ、持って行って下さい」
そう言って僕は先生にディスクをパッケージに入れて手渡した。
「……マーベリックも一緒に見れれば良いのに」
手渡された先生はさびしげに漏らした。
「マーベリックがいないと世界史の授業寂しいから、早く戻ってきてね」
出たいよ。出たいさ。病気がいやだとかそんなんじゃない。心配して待っている人がいるから早く治って安心させてあげたい。そんな一心で僕は病気と戦い続けたのかもしれない。だって、その心配に報いないと申し訳なくて申し訳なくて……。
「はい……絶対に」
どこかのドラマの再生不良性貧血が発症したヒロインが「絶対治る」といった人に向かって「絶対なんて無い!!」とお涙頂戴のセリフを言った。多少はマシになった最近に聞いたセリフだが僕はこのセリフを聞いて同情は出来なかった。むしろ蔑む様な感情が胸をくすぶった。
“絶対”なんて無い。だけど、その“絶対”を信じられないは絶対に治る事は無い。そう僕は思った。絶対に治ってやる。絶対にみんなと同じ授業を受けて、残された高校生活を生きていくんだ。そんな気持ちも味わった事の無いような役者や脚本家が放つ“絶対”って言葉が本当に軽く聞こえて仕方ない。
その数日後、一通のメールが来た。
映画、面白かったよ(≧∇≦)
絶対に戻って来いよ!!
友人の一人からだった。言われなくても、絶対に戻るよ。僕はふと笑ってメールの返信をした。
先生から聞いた話だが、結構この企画の評判よかったらしい。映画係として最初で最後の職務を果たせて嬉しかったが――――先生はどうやら『スコットランド反乱』をクロムウェル時代のモノと勘違いしていたらしく、別にブレイブ・ハートでも良かったとの事……。個人的にはロビン・フッドよりブレイブ・ハートを推していたのになぁ……
ちなみにウィリアム・ウォレスは山川の用語集に載っていないので受験には出ません。




