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声劇用台本「聖木の森」男女1:1  作者: 木山京


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1/6

■1

noteに載せていた声劇用フリー台本です。

キャラクター設定・シナリオ原案で、友達の林檎さんにご協力いただいてます。


同シリーズの「老いない魔女」っていう台本と、同じ世界観になります。

アドリブ・改変など含めて、よろしければご自由にお使いください。


■キャラクター

◆ルチア

16歳の少女。見習い魔法使い。

魔法使いの中でも癒しいわゆるヒーラーを目指してる。


◆シルヴェストロ

60代くらいの男性。盲目の魔法使い。

辺境で守り手(森番みたいなイメージ)をしながら、ルチアの師匠を引き受ける。


■1

◆幕間。

◆ルチア(独白)

私が生まれたこの世には、魔法使いと呼ばれる人たちがいた。

科学と共存しながら、人ならざる力を使役する彼等。

時に尖兵として戦い、時に学徒として探求する魔法使い。

癒し手と呼ばれる治療師も、そんな魔法使いの生き方だった。

私は、そうなりたいと願っていた。

だからあの人のもとを訪れたのだ。

聖木せいぼくの森と呼ばれる精霊たちの領域で、守り人を担う癒し手を。

あの頃の私は、その人の背中にただただ憧れ続けていた。


◆場面転換。シルヴェストロの小屋。

◆ルチア

あの、すみませーん。あのう…誰か、いませんか?


◆シルヴェストロ

…騒がしいぞ。


◆ルチア

ひゃ…!?


◆シルヴェストロ

なんだそれは。訪ねておいて、ずいぶんな礼節ではないか。


◆ルチア

あ、す、すみません…! 急だったから、私、つい…。


◆シルヴェストロ

私にとっては、キミの訪問こそ急だがね。

さて…この世捨て人に、どんな用向きがあるというんだ?


◆ルチア

あ、っと…私、その…。


◆シルヴェストロ

…無理に聞こうとは思わんさ。

失礼するよ、お若いの。庭仕事が残っているのでね。


◆ルチア

あっ…! あのっ! サー・シルヴェストロ、ですよね…?


◆シルヴェストロ

…さて、どうだったか。


◆ルチア

だって…そう、ですよね?

翆碧街すいへきがいの英雄で…。

帝都の内乱では、サー・ティスデイルと戦功を立てられたっていう…。


◆シルヴェストロ

ティスデイル…ああ、久しぶりに聞いた名だ。


◆ルチア

じゃあ、やっぱりあなたが…。


◆シルヴェストロ

どうだろうな、その名は広く知られたものだ。

私が嫌っている男の名でもある。


◆ルチア

う、それは…ええと…。


◆シルヴェストロ

仮に、私がシルヴェストロだとして、お嬢さんの用向きはなんだね?


◆ルチア

あ、えっと…わ、私、ルチアって言うんですけど、翆碧街に入りたいんです。

癒し手になりたくて…。

それには師匠が必要で…あ、も、もちろんご存知とは思うんですけど。


◆シルヴェストロ

摩天楼ひしめく、魔法使いの都か。

あそこで学ぶものは、基礎でなく応用の類だったな。

つまりは他所で、基本を学ばねばならない、と。


◆ルチア

は、はい…! それで、サー・シルヴェストロに師事を仰げないかと…。


◆シルヴェストロ

仰げんだろうな。


◆ルチア

い、いえあのっ! 私、頑張ります…! 家事でも何でも…!


◆シルヴェストロ

キミがどうだという話ではないよ、お嬢さん。

その魔法使いは、弟子を取りたくないそうだ。

大人しく帰りなさい。


◆ルチア

でも…! だけど…。


◆シルヴェストロ

はぁ…。

…帰れとは言っても、じきに日が暮れるか。


◆ルチア

え…?


◆シルヴェストロ

ルチア、だったか。来なさい。

こんな辺境にわざわざ出向いたのだから、一晩、屋根を貸す理由にはなるだろう。

そのついでに、話しだけは聞くとしよう。


◆ルチア

あ、ありがとうございます…サー・シルヴェストロ。


◆シルヴェストロ

礼などいらんよ。

それよりも考えておきたまえ。


◆ルチア

考え…って、何を…?


◆シルヴェストロ

私を説き伏せられるか否かで、夜明けにキミの道は変わる。


◆ルチア

…はい。


◆シルヴェストロ

では上がりなさい。

椅子は…その隅だな。適当に使うといい。


◆ルチア

お、お邪魔します…わ…っ。


◆シルヴェストロ

どうした?


◆ルチア

あ、いやその…思ってたより、なんていうか…。


◆シルヴェストロ

物がない、かね?


◆ルチア

す、すみません…。


◆シルヴェストロ

謝罪はいらんよ。食事は…黒パンとシチューで構わんかね?


◆ルチア

は、はい…! あの、ありがとうございます…。


◆シルヴェストロ

構わんよ。今のところ、キミは客人だ。

さて…それで?


◆ルチア

え?


◆シルヴェストロ

魔法使いのいおりというものは、どんな形相を考えていた?


◆ルチア

それは、ええと…たくさん本があったり、とか…?


◆シルヴェストロ

では、なぜそうではないと思う?


◆ルチア

…たぶん、意味がないから。

あなたには、本が…。


◆シルヴェストロ

加えて、邪魔にもなる。

つまづいてしまっては、シャレにならんからな。


◆ルチア

じゃあ、やっぱり…。


◆シルヴェストロ

ああ、見えんよ。私は盲人だ。


◆ルチア

病…ではないんですよね?


◆シルヴェストロ

呪いの類だ。ここには目玉でなく怨念がある。

幸いというべきか、どうか…魔法のおかげで、最低限の知覚は代用できるがね。

…さあ、出来たぞ。食べなさい。


◆ルチア

い、いただきます…あむっ…むぐっ!? にがっ!?

げっほ! なんですかこれ…!


◆シルヴェストロ

シチューだ。木の根を使った。

ここで暮らすには、これが一番だ。


◆ルチア

それにしたって…けほっ、もうちょっと味付けとか…。


◆シルヴェストロ

調味料の類は置いてないのでな。

食べておけ。流し込めば、あとは胃がどうにかしてくれる。


◆ルチア

うぅ…は、はい…。


◆シルヴェストロ

…素直なものだ。

それで、なんだったか。

ああ、そうだ。この盲人に何を教えろと言うんだ?


◆ルチア

それは…癒し手になりたいから、そのために魔法を…。


◆シルヴェストロ

必要なのは基礎なのだろう?

他にいくらでも学べる。

ここまで訪ねてきた手間賃に、書いてやってもいい。


◆ルチア

書く…?


◆シルヴェストロ

推薦状をだ。

サー・ティスデイルでも誰でも。

翆碧街なら、煙の魔女宛てでも構わん。

あの魔都を統べる者だ、不足はあるまい。

もしくは…キミはいくつだ?


◆ルチア

え、っと…16です。


◆シルヴェストロ

では湖畔の魔女というのもいる。

不老不死の輩だが、年齢より外見に中身が比例した女だ。

気が合うだろう。

…いや、あれは別に弟子を取ったのだったか?


◆ルチア

あ、あのっ!


◆シルヴェストロ

うん?


◆ルチア

わ、私は…サー・シルヴェストロに師事を仰ぎたいんです…!


◆シルヴェストロ

…わからんな。なぜこだわる?


◆ルチア

十年ほど前まで、サー・シルヴェストロは…この土地の守り手となる前のあなたは、癒し手として各地を回っていたと聞きました。

多くの人を治癒されたと。


◆シルヴェストロ

あれは義務に過ぎん。

内乱の被災地を回っただけで、職務の延長線上にあるものだ。


◆ルチア

…それでも、大勢が助かりました。

私も、あなたのようになりたいと…そう思ったんです。


◆シルヴェストロ

ならば医者でもいいだろう。

魔法などというのは本来、人のことわりから外れた領域だ。

キミの目指す翆碧街が最たる例だぞ。


◆ルチア

…翆碧街は、魔法文明の集まる場所。

でも逆に言えば、魔法使いが隔離された場所でもある。

そういう話ですか?


◆シルヴェストロ

そう。その四方を、決して晴れることのない排煙で覆われた孤島。

魔力の残滓を含み、魔物のひしめく黒い海を作ったあれは、だから魔都と呼ばれ、羨望以上に忌避される。


◆ルチア

だけど…医術でしか救えない命があるように、癒し手でなければ救えない命もあります。


◆シルヴェストロ

キミが目指さなければならない、とは言い切れんよ。


◆ルチア

なります! だって…私も、救われました。

癒し手に…ずっと昔、呪いを受けた時、救われました。

だから…呪いに蝕まれる苦しみは、少しくらいわかってるつもりです。

だから治したいんです。あなたに教わって、治せるようになりたいんです…!


◆シルヴェストロ

…私が、必要とは思えんがね。


◆ルチア

え…?


◆シルヴェストロ

基礎というなら、もう出来ているはずだと言っている。

キミは、ここまでどうやって来た?


◆ルチア

どう、と言われても…。


◆シルヴェストロ

この土地がどういう場所か、魔法使いを志す者なら知っているだろう。


◆ルチア

あ、ええと…聖木せいぼくの森、ですよね…?


◆シルヴェストロ

この世で最も力を持った柊が、唯一自生している聖域だ。

こうした力のある土地は、一方でよくないものを引き寄せる。

人も霊魂も、様々に。

それらを避けるため、迷いのまじないをかけてあった。

突破しなければ、この小屋にはたどり着けん。


◆ルチア

守り手の魔法、ですか。

その…確かに、突破はしたんだと思います。

だけど私の力じゃなくて…たぶん、これのおかげかなって。


◆シルヴェストロ

ふむ…護符か。木星の6番。自作かね?


◆ルチア

いえ、貰い物です。私を治癒してくれた、癒し手だった人からの。

一度呪いにかかったら、魔力の影響を受けやすくなるから…と。


◆シルヴェストロ

賢明なことだ。


◆ルチア

っていうより、単に…幸運だっただけかもです。


◆シルヴェストロ

…それも含めて、実力と呼べるかもしれん。

ふむ…。


◆ルチア

あの…サー・シルヴェストロ?


◆シルヴェストロ

…部屋は、追々こさえるとしよう。

しばらくは居間で寝てもらう他ないが、構わんな?


◆ルチア

え?


◆シルヴェストロ

気が弱いのか強いのか、よくわからん娘だがな。

テコでも動かん、という顔をしている。

家の前で座り込みでもされたら、私としては面倒だ。


◆ルチア

じゃあ…! あの、それって…!


◆シルヴェストロ

家事も手伝ってもらうぞ。それから…。


◆ルチア

な、なんですか?


◆シルヴェストロ

そのシチューは、聖木の根を使っている。

残さず食べなさい。


◆ルチア

うっ…だけどこれ、食べ物の味じゃ…。


◆シルヴェストロ

護符だけでは、ここの魔力で体が壊れる。

わかったか、ルチア。


◆ルチア

うぅ…はい、マスター・シルヴェストロ…。


◆シルヴェストロ

ふむ…まあ、よろしい。

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