シナリオ(リディア視点)
【リディア】
王宮での魔力調査から数日後。
体調は戻り、ようやく自室でゆっくりできるはずなのに…
私はベッドの上で、枕を胸に抱えて悶々としていた。
「もう訳わからない………」
天井を見つめながら小さく呟く。
王宮での魔力調査。
あの日の出来事は、考えれば考えるほど頭が痛い。
(だって……私、本来は悪役令嬢なんだよ?それなのに、あんな加護を持ってるなんて…)
原作の乙女ゲームの中で、加護を持つ者なんてヒロインのソフィアだけだった。
悪役の私にそんな力は無い。
それなのに、
リアンの凄まじい力を、たった一瞬で鎮めてしまった。
(どういうこと?私に加護なんて……そんなの聞いてない)
自分の中にあるはずのない力。
未知の感覚。
少し怖い。
(……それに、リアンの力…)
次に胸を占めるのは、リアンのことだ。
リアンの力は、そこにいるだけで息が苦しくなるほど禍々しかった。
あれが彼の力だなんて、想像もできなかった。
(リアン…原作のストーリーとは関係のないはずのキャラなのに…絶対に何か大きな秘密を抱えてる)
“聖女の力に反発するように力を増す”
“私の加護の光で暴走が止まった”
(私が知らない、ゲームの“隠しルート”がある……?)
自分の知らないストーリーがあり、原作と違うストーリーが進んでいっていることに焦りと不安が押し寄せる。
でも同時に、リアンが泣きそうな顔で私の名前を呼んだ時の声が、忘れられなかった。
枕をぎゅっと抱きしめる。
そして別の混乱要素。
(レオンハルト殿下……)
彼は原作で、ヒロインの聖女ソフィアと深い絆を築き、その力で厄災から国を救う。そして、ニ人は結ばれハッピーエンドを迎える。
そんな彼が──なぜか、私にやたら興味を持っている。
「君が倒れたとき……胸が張り裂けそうだった」
あの声を思い出すだけで、心臓が跳ね上がる。
(それヒロインに言うセリフだから!なんで私に言ってるの!?)
……と、叫びたい気持ちもあったけど。
殿下が本気で心配してくれたのは、わかっている。
あのときの瞳は、嘘じゃなかった。
だからこそ…分からない。
(原作のストーリーは、もう……完全に壊れちゃったんだろうか)
もしこの先、殿下の気持ちが私に向いてしまったら。
ソフィアとの関係は?
リアンの暴走は?
私の加護は?
厄災との戦いは?
何一つ、原作の筋書きに戻る気配がない。
頭の中が情報過多でぐるぐるして、私は布団にくるまることしか出来ない。
不安はある。
怖い。
全部変わってしまうのかもしれない。
でも──
(リアンも、殿下も……私を大切にしてくれるのが、嬉しいと思ってしまう)
そんな気持ちが混ざってしまって、また頭が混乱する。
「……もうやだ、平穏返して……」
自室の静かな空気の中、
その叫びだけが虚しく響いた。




