嫉妬
魔力測定が始まってからずっと、
僕の視線は姉さんに向いていた。
必死に目立たないようにしているが、姉さんは何もしなくても目立ち周りの視線を集める。
「属性4つ」と告げられた瞬間、
教室の空気が変わった。
生徒たちの視線が一斉に姉さんへ向く。
好奇、驚き、 羨望。
(……また、姉さんが無駄に目立ってしまう)
胸の奥で、焼けるような感覚が走った。
姉さんの良さは僕だけが知っていれば良い。
誰よりも近くにいるのは、僕でなければならないのに。
次に自分の名前が呼ばれ、僕が魔石に触れた瞬間。
魔石がわずかに震え、
何か奥深くの力が響いた。
(これ……まただ)
ソフィアを見た時に反応した、あの“内側の力”。
今日もそれは静かに揺れていた。
教師が戸惑った顔で「特別診断」と言ったとき、
教室がまたざわつく。
「リアンも4属性?」
「魔石が揺れてたよな」
「何あの反応……あんなの見たことない」
彼らのざわめきに興味はなかった。
ただ――姉さんが僕を心配そうに見ていた。
その視線を受け取っただけで胸が熱くなる。
本当に問題だったのは、その次。
レオンハルト殿下の測定。
殿下が魔石に触れた瞬間、
一度に複数の光が弾けた。
「光以外すべて反応」
ざわめく生徒たち。
僕は興味がなかった。
殿下がどれほどの魔力量を持っていても構わない。
……あの瞬間までは。
殿下が、姉さんのほうを見た。
そして、柔らかく笑った。
(……何で…姉さんを見るんだ)
胸がぎゅっと締まる。
視界の端が赤く染まる錯覚。
理由は分かっていた。
僕の中で“嫉妬”という言葉が形を持った。
姉さんは気づいていない。
それがさらに苛立ちを強くした。
(姉さんの視界に入るな……)
心の中で静かに、冷たく呟いた。




