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甘い朝
翌朝。
私は胸がむずむずするような、変な感覚で目を覚ました。
「……なんか昨日より疲れてる気がする……?」
ぼんやりと身支度をしていると、
コン、コン。
「姉さん。朝ですよ」
扉の向こうからリアンの声。
……声がやけに甘い。
昨日の夜の延長みたいな、静かな低音。
私は慌てて扉を開けた。
「おはよ、リアン──」
言葉が止まった。
リアンの赤い瞳が、
いつもより近くて、深くて、熱っぽい。
距離が……近い。
近い。
近すぎる。
「姉さん。昨日、眠れましたか?」
ゆっくりした口調。
少し低めの声。
しかも見上げると……色気が半端ない。
なんで朝からそんな雰囲気なの!?
私はバッと距離を取った。
「えっ、ええ!元気よ!ほら見て、こんなに健康!」
意味不明な健康アピールをしてしまった。
リアンは一瞬だけ目を細め、
まるで“何かを確かめるように”私を見つめた後、
「よかった。……今日も僕がそばにいます」
落ち着いた声でそう言う。
胸がどきんと跳ねた。
(……なんか……昨日より“弟っぽくない”んだけど……?)
理由は分からないけれど、
リアンの距離がやたら近くて、私は朝から混乱気味だった。




