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怒涛の1日


注目を大いに集めながら、なんとか次の教室に到着し、扉を開けた瞬間――


……はい、ざわつき発生第2ラウンド。


「アーヴェント公爵令嬢……!」

「弟君も綺麗な顔……すご……」

「聖女様…可愛らしい…」

「っていうか王太子殿下までいるの??」


フェリクスくんのほうもチラッと見られたけど、


「……ああ、あの赤髪の子ね」

「なんか陽キャっぽい」

「あいつは…まあ、いっか」


……以上で終了。

彼だけ扱いが雑すぎる。


(フェリクス君…強く生きて……)


私はただ席に座りたいだけなのに、

周囲の視線はこっちに全集中。


レオンハルト殿下は相変わらず微笑んで距離を詰めてくるし、ソフィアさんは心の底から心配してくれて可愛すぎるし、フェリクスくんは「いや〜すげえなぁ!」と終始呑気。

リアンはもう……静かに暗黒オーラを纏っている。


授業が始まっても視線が気になりすぎて、

黒板の文字が一切入ってこない。


(お願いだから普通に授業受けさせて……!

私は平凡な当たり障りのない令嬢でいたいの……!)


こうして初日は混乱とざわめきのまま終わった。



夕食後、私は自室に戻ると同時にベッドへ倒れ込む。


「…………むり…………」


枕に顔を押しつけながら、

今日のあらゆる騒動を思い出す。


(どうして私、王太子でも聖女でもないのに中心に巻き込まれてるの!?良い人作戦頑張りすぎた!?)


頭を抱えてゴロゴロ転がっていると――


コン、コン。


扉を叩く音。


「……姉さん。起きていますか?」


リアンだ。


私は跳ね起きた。


「え、な、なに?」


扉の向こうで、少しの間。


「初日でしたし……今日は疲れたでしょう。

眠れないのでは、と気になりまして」


(なにその声……優しい……)


姉として扱われてるはずなのに、

なんか違う。


「へ、平気よ!寝ようとしてたとこ!」


また静かに間があって、


「……なら、よかった。

ゆっくり休んでください。姉さん。

……明日も、僕がそばにいます」


その言い方が、

まったく“弟”ではなかった。


胸が跳ねる。


……と思った瞬間。


扉が、ゆっくり開いた。


「えっ……リアン?」


顔をのぞかせたリアンは、

昼間よりもずっと静かで、

そして――


色っぽかった。


黒髪は少し乱れ、

赤い瞳は昼より深い光を宿している。

なんだか、表情が妙に大人びて見えた。


「……姉さんの声が、少し震えていたので」


近づく。


距離、近い。


(ちょっ……え……待っ……近っ……!)


リアンは私の顔色を確認するように覗き込み、

静かに微笑んだ。


その笑みが――

どう考えても“弟”ではなく、

“男”の顔だった。


「無理しないでください。

誰に何を言われても……僕が守ります」


耐えきれず、私は後ろに下がってベッドに沈んだ。


「なっ……えっ……あ……ありがとう……?」


(な、なんで私……ドキッてしてるの!?

これは違う、これは心労からの動悸……!

そうよ、きっとそう!)


リアンはほっとしたように息をつき、

扉を閉める直前、低く囁いた。


「……おやすみなさい。姉さん」


その声に、また胸が跳ねた。


扉が閉まったあと、私はベッドに倒れ込み、

両手で顔を覆った。


「今日……なに……どうしたの……リアン……

いや私もどうしたの……?」


胸が変に熱くて、ざわざわして。


(明日こそ……もっと穏やかに……

静かに暮らして……断罪回避して……!!)


強く願いながらも、

眠りにつくまでずっと、

胸の熱は消えなかった。



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