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平穏終了のお知らせ


5人で廊下を歩くだけなのに、まわりの視線が集まるせいで、私は落ち着かないまま歩き続けていた。


レオンハルトは歩幅をそっと合わせてきて、自然に距離を詰めてくる。

リアンはそのたびに私の反対側へ体を寄せ、間に割り込むように歩く。

ソフィアは小動物のように私の袖をつまんで不安げに周囲を見回している。

フェリクスはただ一人、ケロッと楽しそうに進んでいた。


この組み合わせで移動するの、無理があるのでは?


そんな私の心の悲鳴をよそに、廊下の学生たちがざわつき始める。


「やば……王太子と聖女……?」

「アーヴェント令嬢にリアン様まで……何が起きてるの?」

「フェリクスは……まあいいか」


……フェリクスだけ軽い。


次の教室が近づいたころ。


レオンハルトがふと私を見て微笑んだ。


「リディア嬢。少し騒がしかったけれど……大丈夫だったかい?ソフィア嬢が色々あったことを教えてくれてね」


横でソフィアが「あ……」と恥ずかしそうに身を縮める。


私は慌てて首を振った。


「いえ、私は大丈夫ですわ。ソフィアさんも、お気遣いありがとう」


ソフィアはぱっと顔を明るくして微笑んだ。


その瞬間。


リアンの空気が、すっと冷えた。


「姉さんは優しすぎます。

誰が相手でも、無理をする必要はありません」


いつもの柔らかい声なのに、言葉の奥に薄い棘がある。


ソフィアは驚いてリアンを見つめた。


「ご、ごめんなさい……。迷惑だったら……」


「迷惑ではありません」

とリアンは即答した。


その語尾に、なぜか“僕以外なら”という響きがにじんだ気がした。


私は思わずリアンの袖をつまんだ。


「リアン、今の発言は少し怖かったかも。ね?

ソフィアさんは悪くないわ」


リアンははっとしたように目を伏せる。


「……すみません、姉さん」


そのやり取りを見ていたフェリクスが笑った。


「リアンは本当に姉ちゃん大好きだよなー!

いや〜見てて微笑ましいけど嫉妬深すぎ!」


リアンは鋭い目をフェリクスへ向けた。


「フェリクス。余計なことを言わないでください」


「図星だったかー!」


軽口で返せるフェリクス、本当に肝が座ってる。


そんなやり取りの最中。


レオンハルトがゆっくりと歩みを緩め、私へ声をかける。


「リディア嬢。

君は……この学園で何を望んでいる?」


突然の質問に、私はつい素直に答えかけてしまった。


(断罪回避とソフィアさんと殿下を幸せにして自分はフェードアウト……)


その本音は危険すぎるので、


「穏やかに……過ごせたらと思いまして……」

と誤魔化すのが精いっぱいだった。


レオンハルトはその答えに目を細め、


「……穏やか、ね。

果たして、それは簡単な願いなのだろうか」


と意味深に言った。


隣でリアンがすっと私の前に出る。


「姉さんは穏やかに過ごせます。

誰かが乱そうとするなら、僕が排除しますから」


空気が一瞬、静かになる。


少し離れていた生徒まで振り向きそうなほど、緊張した沈黙。


私は慌ててリアンの腕を引いた。


「ちょ、ちょっとリアン!排除って言い方が怖いわ!」


リアンは素知らぬ顔で、


「的確な表現です」


と返す。


フェリクスが爆笑する。


「お前ほんと最高だよリアン!」


ソフィアはおろおろ、レオンハルトは……なぜか楽しそうに微笑んでいた。


そのタイミングで、次の授業の鐘が鳴り響く。


こうして、5人の“目立ちすぎるグループ”は

周囲にざわめきを撒き散らしながら

次の教室へ足を踏み入れた。


私は胸の奥に不安と好奇心を抱えながら思う。


(……私、穏やかに過ごすの、やっぱり無理かもしれない)

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