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パーティ勢揃い

休み時間。

教室が少し落ち着いたころ。


私は鞄を整理していた。


その時――

影がふわりと揺れて、誰かがそっと声をかけてきた。


「リディア様……少し、お話してもよろしいですか?」


顔を上げると、そこにはソフィアが立っていた。


「まあ、ソフィアさん。どうかしたの?」


「先ほど……皆さまが押し寄せてしまって。

ご迷惑ではなかったか心配になってしまって」


その言葉に、私は目を瞬いた。


「いえいえ、あなたが心配してくれるだけで十分うれしいわ。ありがとう」


ソフィアはほっと息をつき、

頬に小さな笑みを浮かべた。


「よかった……。あの……もしよろしければ、

この後の授業、場所が少し分かりづらいので……

ご一緒しませんか?」


う……

優しい……

可愛い……

断罪する未来のヒロイン……

でも可愛い……!


私はあたふたしながら答えた。


「え、ええと…………もちろんですわ!」


ソフィアと一緒に教室を出ようと、私はゆっくり立ち上がった。


ソフィアは小動物みたいにそわそわしていて、

なんだか守ってあげたくなる可愛さだ。


「迷ったら困りますものね。私でよければ――」


と言いかけたところで。


「その案、僕も混ぜてもらっていいかな?」


柔らかな声がすっと割り込んできた。


振り返れば、金の髪が光を受けて揺れる。


レオンハルト。


王太子スマイルを完全装備している。


「……殿下?」


私が固まる横で、ソフィアも「えっ」と声を漏らす。


レオンハルトは気にも留めず、私をまっすぐ見つめた。


「学園は広いから迷いやすいだろう?

よかったら僕が――」


言い終わる前に、私の後ろからひやりとした気配。


「殿下。姉さんは僕が案内できますので」


リアンだった。


赤い瞳が静かに、しかし鋭くレオンハルトの動きを牽制する。


空気がピシッと締まった。


レオンハルトは穏やかに笑った。


「義弟くんは気が利くね。

けれど僕だって“婚約候補”の心配をする権利くらいはあるだろう?」


……こわいこわいこわいこわい。


笑顔が優しいのに、言葉は完全に挑発している。


リアンの眉がわずかに動いた。


そこに横から明るい声が飛ぶ。


「おーい、なんかすっげぇ怖ぇ空気出てね?」


フェリクスだ。


赤髪を揺らしてひょいと近づき、場の空気をぶち壊すように笑った。


「殿下にリアンに、リディア嬢にソフィア嬢……

なんだこのメンバー!めちゃくちゃ目立つじゃん!」


周囲のクラスメイトが一斉にこっちを見る。


ひそひそ声が飛び交う。


「やば……レオンハルト殿下じゃん……」

「フェリクス何者だよ……あいつ心臓に毛が生えてるだろ……」


もはや逃げ場ゼロ。


レオンハルトは微笑みながら私へ一歩近づく。


「リディア嬢。君は誰と行きたい?」


(やめて。選択肢を迫らないで。断罪回避したいだけなのに!)


私は必死に笑顔を作った。


「え、ええと……みんなでご一緒したらよろしいのでは……?

ほら、仲良く、ね?」


フェリクスが大爆笑した。


「だよなー!もうセットで移動しよ、この超目立つメンバーで!」


ソフィアは小さく頬を赤くしてオロオロし、


リアンは私の隣から一歩も離れず、


レオンハルトはなぜかご機嫌で、


フェリクスはテンション高く盛り上げ、


――結果的に、教室中の注目を浴びながら5人で移動することになった。


私は胸を押さえながら歩いた。


(断罪回避したいだけなのに……なんでこんな目立つの……?)



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