祝福の瞳(リアン視点)
【リアン】
教室に入った瞬間から、僕の意識はずっと姉さんに向いていた。
新しい場所は、人も多くて雑音も多い。
危険があるわけではないけれど、
姉さんが誰かにぶつかったり、絡まれたりしないよう、視線は自然と周囲を巡ってしまう。
姉さんの近くへ、いく人もの令嬢がそっと寄ろうとする。
「リディア様って……」
「本当に綺麗ね……」
ただその声を聞くだけで、胸の奥がざわつく。
(姉さんを見ないで。姉さんに触れないで。近づくな)
そんな気持ちが湧くのに、表情に出さないよう押さえた。
それでも、姉さんが柔らかい笑顔で返しているのを見ると、
(……姉さんは優しい。その笑顔、好きだ)
と胸の熱が少し落ち着く。
本当に、単純だと思う。
そんな時、ふと柔らかい声が聞こえた。
淡い水色の髪。
ピンクの瞳。
聖女ソフィア。
なぜか、また僕を見ている。
まるで心の内を覗こうとするみたいな視線。
(……この子は何だろう。
悪意は感じないのに、妙に落ち着かない)
姉さんを見る時の気持ちとは、まるで違う。
警戒のほうが先に立つ。
だから僕は一歩、姉さんの近くへ寄った。
姉さんが笑うたび、
胸の奥にあたたかい火が灯る。
僕にはリディア姉さんがいれば、それでいい。




