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聖女ソフィア

大広間には新入生が溢れ、華やかな笑い声が響いていた。

かわいらしいリボンの令嬢、緊張して背筋を伸ばしている少年、

それぞれが新しい生活に胸を高鳴らせている。


その時だった。


不思議な静けさが、ふっと広がった。

まるで風が軽く撫でたように、人の動きが自然と開いていく。


淡い水色の髪が光を吸い、さらりと揺れた。

春の花びらのように柔らかく輝くピンクの瞳。


(……ソフィア)


祝福を受けた者特有の気配。

透明で、温かくて、それでいてどこか神秘的。


原作ヒロインの強さが一目で分かる。


(ついに来ちゃった……!

私の破滅フラグが……こんにちはしてきた……!)


固まっていると、隣のリアンがぴたりと動きを止めた。


赤い瞳がソフィアをまっすぐにとらえる。

静かで、深く、少し冷たい。


ソフィアはその視線を受けて、驚いたように目を瞬いた。


ほんの一瞬だけ、

その強さに吸い寄せられたように見えた。


「はじめまして。今日から同じ学園ですね」


ソフィアは優しい声で微笑む。

心を和ませるような柔らかい声だった。


私は引きつった笑顔で返した。


「よ、よろしくお願いしますわ……!」


声が震える。


(この子は悪くないのよ……むしろすっごく良い子なのよ……!

でも原作的には……私の天敵なのよぉぉ!)


気持ちが忙しい中、リアンが静かに口を開いた。


「リディア姉さんは、緊張しやすいので」


声は丁寧。

だが、奥に冷たい響きが混ざっていた。


ソフィアは少し驚きながらも、穏やかに答えた。


「そうなんですね。とても綺麗な方でつい声をかけてしまいました。ソフィア・フローレンスといいます。これから仲良くしていただけたら嬉しいです」


リアンは微笑みを返す。


「仲良くするかは姉さんが決める事です。

……誰が相手でも」


言葉は柔らかいのに、空気は鋭い。


ソフィアの瞳が微かに揺れた。

興味なのか、驚きなのか、判断が難しい表情。


(リアン……初対面からそんな本気で牽制する……?

しかもソフィア、レオンハルトじゃなくて……リアンを見てる……?)


リアンの勢いに戸惑いつつも、私はそこに生まれた小さな気配に気づかず、いつも通りに笑っていた。


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