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焦燥(リアン視点)
【リアン】
王城からの帰り道、馬車の中でリディアに手を握られたながらリアンは先程の出来事を思い返していた。
――殿下が、姉さんを見ていた。
それはただの観察ではなく、特別な興味の目。
(嫌だ)
この感情の名前は分からない。
だけど、はっきりと理解した。
(誰にも……姉さんを奪われたくない)
気づいてはいけないものに触れたような感覚があった。
胸の奥がざわつき、息が少しだけ乱れた。
(姉さんは、僕の大切な……)
言葉の続きを心の中で濁す。
口にしてしまえば、もう戻れない。
それでも、確信だけは鮮明だった。
(殿下だろうと誰だろうと、姉さんを“選ぶ”のは姉さんだ。
……その横に立てるのは、僕だけでいい)
「誰にも渡さない…」
彼はまだ幼い。
しかし、その執念は誰より深く強かった。




