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怪しい雲行き

庭園での“リアン割り込み事件”のあと、

相手の男の子は気まずそうに笑って去っていった。


私はその背を見送りながら、

(まあ、たまにはあるよね……弟がやたら仲良しアピールしてくる時期って)

と軽く流していた。


が。


その後の交流会でも似たような場面が続いた。


「リディア様、こちらの焼き菓子を――」

「姉様のお皿は僕が管理しています」


「リディア様のリボン、とても綺麗ですね」

「姉様の装飾品に不用意に近づかないでください」


「リディア様!僕、剣の練習で――」

「女性に向かって剣の話題は野蛮です。下がってください」


……え?

なに?

こわくない?(弟が)

セコムなの?


私はそのたびに慌ててリアンの肩を叩く。


「ちょっとリアン、そんな怖い顔しないの」

「怖い顔などしていません。姉様に害意を向ける者への、正当な警戒です」

「害意なんて向けてないわよ?」

「潜在的な話です」


潜在的て。

なんか言葉のレベル上がってるし。


でも、こんなに私のこと大切に思ってくれるなんて……

ありがたい。

ありがたいんだけど……


周囲の子たちがどんどん距離を置き始めた気がするのは、私の思い過ごしだろうか。


「リディア様の義弟…今日もこわ……いや、ご立派ですね……」

「近づくと刺される……目線で……」


うん。

なんかヒソヒソされてる?


でも私が「気にしないでね〜」と笑いかけると、

みんな一応笑い返してくれるし、問題ないよね。


……ないはず。



そして、ちょっとだけ“変なこと”が起き始めた。


ダンスの先生が私を見るたび、

なぜかちらりとリアンのほうを確認するようになった。


王家主催の集まりで、他家の子が私に挨拶しに来る時、

その後ろで親御さんがリアンを見てすごく緊張している。


あと、父様がふとした時に言った。


「……リディア。リアンとずいぶん仲が良いな」

「はい!弟として誇らしいですわ!」

「……そうか」


なぜか父様は遠い目をした。


え、なんで?

私、間違ったこと言った?


気になることは色々あるけど――


(まだ私は“悪役令嬢”とか呼ばれたことないし、

人の悪口も意地悪もしてないし、

毎日穏やかに、優しく、誠実に生きてるし!

いい感じ!だよね?)


未来は順調、断罪なんて影も形もない。

私はそう思い込んでいた。


そんな私の真横で、リアンは静かに笑っていた。


「……姉様は、僕が守りますから」


優しい声。

なのに、その目には何か別の色が宿っていた。


気づいていないのは――

たぶん、この世界で私だけ。



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