断罪回避…できてるよね?(リディア視点)
【リディア】
リアンは私が想像していた以上に、ぐんぐん成長していく。
勉強も礼儀作法も完璧で、父様も母様もいつも“よくできました”と褒めていた。
そして何より――
最近のリアンは「リディア姉様の護衛係」を自任しているらしく、
やたらと世話を焼いてくれる。
「姉様、今日は日差しが強いのでこちらを」
「姉様、その段差は危険です」
「姉様、隣は僕が歩きます」
とても頼もしい。
頼もしすぎて、たまに笑ってしまう。
もちろん私は“悪役令嬢”として断罪される未来を避けるため、
できる限り穏やかで誠実に振る舞っている。
それが理由なのか、
周りの大人たちはいつも微笑ましそうに私とリアンを見ていた。
リアンのほうは、私が頭を撫でるたびに真っ赤になって固まるけど、
まあ弟なんてそんなものだろう。
今日も庭園で出会った他領の子が、
「リディア様、ダンスの練習でペアを――」
と言っただけで、
リアンが私の前にスッと滑り込んだ。
「姉様のペアは僕です」
うん。
……すごい“姉様大好き”なのは伝わる。
(こんなに好かれてるなら、断罪とかないんじゃない?
なんか未来変わってきてる気がするし!)
と、私はかなり気楽に考えていた。
けれど――
私の楽観とは裏腹に、屋敷の外ではもっと別の空気が流れ始めていた。




