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静かな牽制
リアンが屋敷に来てから2年ほど経った。
リディアは12歳、リアンが11歳になった頃
屋敷ではとにかく従順で、礼儀正しく、
誰が見ても優秀で“理想的な義弟”。
リアンが屋敷へ迎えられた頃は、彼の心は壊れ物のように不安定だった。
夜中に目を覚ませば怯えて震え、誰の影にも身を縮める。
そんなリアンを包むように支えたのが、
リディアだった。
その行動は、リアンの胸に深く刻まれていく。
その結果、見事に姉のセコムと化した。
外へ出ると――
リディアに近づく相手には、静かに目を光らせた。
「リディア姉様、その方の腕……近すぎます」
「姉様のお飲み物は、僕が」
「姉様の護衛役は、僕が務めます」
声は穏やか。言葉も丁寧。
けれど空気の奥に、ひそやかな警告が混ざる。
周りの子供たちは小さく距離を置き、
“リディアには義弟がついている”という空気が自然に広がった。
リディアは、自分が守られていることに気づかない。
「リアンは本当に優しいわね」
ただそう言って微笑むだけだった。
リアンはその笑顔を見るたびに、
胸がきゅっと締め付けられた。




