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第1話 ローランシア王国の役立たず聖女

皆様ご存じの「異世界」聖女が、現実世界で「学園」聖女となり、自信と幸せを掴み取るお話です!

ハッピーエンド目掛けて毎日更新いたします☆

よろしくおねがいいたします!



 白亜の城を間近に望む、小鳥の囀りに満ちた穏やかな花園。



 誇らしげに大きく咲く深紅の薔薇の生け垣の前で、真っ白い簡素なワンピースに身を包んだ少女がそっと身を屈めた。

 豪奢に整え尽くされた庭園にあって、似つかわしくないほど素朴な少女。けれど使用人と言うには身綺麗で、この場所にはそぐわない、なんとも場違いな印象を受ける。


「お行き、見つからない内に。ね? こんなところに居るのが見付かったら、怖ーい王太子殿下や神官様たちにひどい目に遭わされてしまうもの」


 少女は、幾重にも葉が重なり、地面との間に深い影を作り出した先に声を掛けた。すると、柔らかなほほ笑みを向けたその先から、勢い良く小さな黒い影が飛び立つ。


 真っ黒い体躯に、血をそのまま固めた様な紅玉の瞳。蜥蜴にも見えるが頭には鋭い角が3本も生えている。その生き物は蝙蝠によく似た羽根を忙しく上下させ、あっという間に、聳え立つ主塔の先端よりも遥か上空へ昇ってゆく。


「もうこんなところに来ちゃだめよ! あなたは、この世界に一人だけの役立たず聖女に出会っちゃうような、とっても強運の持ち主なんだもの。そのまま異界の友達や家族のもとに戻るのよ」


 少女が、上空遠くへ飛び去りつつある黒い生き物に手を伸ばし、微かに唇を動かして蜃気楼(ミラージュ)の魔法を唱える。

 瞬間、黒い異形の生き物は虹色に輝き、ほとんど視認出来なくなるほど薄い色に変わって周囲の景色に溶け込んだ。


 ローランシア王国上空をすっかり覆った白銀のヴェールが揺らいで口を開け、微かな羽音がそれを抜けるが姿は見えない。


 けれど、魔法をかけた彼女には分かっている。何度も振り返りながらも、空高く飛んだ闇竜の子が、城下を覆う結界を無事潜り抜けたことを。小さな彼を通す道を、花嫁のヴェールよりも繊細に編み込んだ結界を裂いて作った通り道。目的を果たした裂け目は、ピカリと光を放って修復をし始める。


 光に覆われた修復跡。その先を飛び去る小さな影はもう見えない。少女はホッと息を吐いて微笑む。


「おい」


 背後から聞こえる、怒りをたたえた低い声に、少女はギクリと両肩を揺らした。


「また結界が綻んでいるではないか、お前は本当に役立たずだな! 気概と鍛錬が足りん!」


 そろりと振り返れば、きらびやかな白銀(プラチナ)の鎧に身を固めた近衛騎士を引き連れ、憤慨も顕わな表情の王太子が()め付けてくる。

 彼の波打つ金髪は陽光を集めた色で、肌はきめ細やかな白磁の輝きを讃え、瞳は曇り一つない天空よりも青く輝く。迫力の美貌の王太子。


(うぅっ、面倒なお方に絡まれたわ……。けど闇竜の子には気付いていないみたい。相変わらずいけ好かないけど、抜けた方でよかった)


 心の中で舌を出しつつ、取り敢えず穏便に場を修めるため、少女は()()()()()()しおらしく頭を下げる。


「ごめんなさい、殿下。わたしの力が足りず」


「全くだ! 私の婚約者のままでいたくば、もっと研鑽を積むのだな!」


 ふん、と鼻息も荒く言い捨てた王太子は、頭を下げたままの愚鈍な婚約者を苛立たし気に一瞥すると、くるりと身を反転させて来た道を戻って行く。


(結界の綻びに文句を言う為だけに、わざわざここまでいらっしゃるなんて。目敏く、まめまめしく、嫌味な殿下らしい行動ね)


 遠ざかる彼らの足音が殆ど聞こえなくなったところでようやく顔を上げた少女は、人目もはばからず、深く長い溜息を吐いた。



挿絵(By みてみん)

異世界と現実世界を結ぶ、複雑怪奇な三角関係ラブコメ開幕です!

学園聖女が包まれる腕は「どちらの世界」の「誰」のもの!?(*´艸`*)♪

気になりましたら是非ブクマをお願いいたします☆ 完結まで執筆済みです。

どうぞ、おたのしみください!

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