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第5話 崩壊の紫



ルクスの魔力はカラッポだ。全身にズキズキと劇痛が走り、息はゼエゼエと荒い。【ミティを絶対に連れて逃げる!】彼女は二階の破れた穴からバッと飛び降りる。「ミティ!」


壁の隅で、ミティが弱々しく喘いでる。ルクスを見て、必死に目を開く。ルクスはミティを抱き上げ、厨房の裏口から逃げようとする。【暗い路地に入れば、まだ逃げるチャンスがある!】


指先がミティに触れた瞬間、黒影の毒蛇みたいな長矛がシュッと飛び出し、ルクスの大腿をグサッと貫く。鮮血がドバッと流れ、激痛と絶望が氷の波みたいに彼女を飲み込む。ルクスは耐えきれず、ガクッと膝をつく。両腕で地面を支え、なんとか倒れねえ。大腿は感覚を失ってる。


「まだ走る気か。」操影者リオが地獄みたいな声で囁く。彼は埃まみれ、黒ローブがちょっと破れ、顔に血痕があるが、ほぼ無傷だ。


ルクスは顔を上げ、血走った瞳でリオをガン見、ミティをチラリ。ミティは涙をダラダラ、まるで乾いた布を絞るようだ。「お兄……お兄……」彼女の乾いた唇から、途切れ途切れの声が漏れる。


「ミティ……」ルクスは歯を食いしばって立ち上がろうとする。大腿の血の穴が彼女を嘲笑う。【お前、無理だ! できねえ!】【立て! コイツを倒して! ミティを守る! 俺は……兄貴だ!】黒刺がまたシュッと飛んできて、彼女の手のひらと肩をグサグサッと貫く。ルクスは痛みにうめき、ドサッと倒れる。


「宴会だ、メイン料理の登場だ。」リオが歪んだ笑みを浮かべる。「ミティ……」ルクスはミティに向かって這う。血が川のようだ。「感動物だな。」リオは楽しげにパチパチと拍手。「早く這えよ、小僧。」


ルクスはやっとミティにたどり着く。顔を上げ、ガバッと抱きしめる。ミティは弱々しく抱き返す。「さて、俺の番だろ。」リオがジリジリと近づく。黒影が右腕に絡み、黒い尖刀がギラッと光る。彼は刀を高く振り上げ、「兄妹」をブッ刺すつもりだ。


その瞬間、ルクスはクルッと振り返り、血まみれの腕がピカッと元通りになる。両手に【黒熊の篭手】を装着し、ズバッとリオに突進。「何!?」リオが驚く。ルクスの拳が迫る。だが老練な狩魔人である彼は、すぐに黒刀を黒盾に変え、ガキンッと受け止める。


リオはルクスの手首をガシッと掴み、ミティをチラリ。「お前……治癒能力者か。」長年探してた治癒者がこんなとこに。「それで勝てると思った? 甘え!」リオの言葉が終わる前に、ルクスは【悪犬の首飾り】を装着。犬頭のネックレスだ。彼女はガバッとリオの腕に噛みつく。【悪犬の首飾り! 呑噬の力! 発動!】ルクスは心で吠える。


✦•······················•✦•······················•✦


ルクスの天性の呪いは「呑噬」。屍体や生肉を喰らい、魔法の装飾品に変え、傷を癒す。強い血肉ほど装飾品も強い。血肉が少なけりゃ一時的な力だけ。制限は、生き物を直接喰えねえ。まず血肉を千切る必要がある。


ルクスはリオの肩の肉をガブッと噛み、血がブシュッと流れる。大腿の傷口に肉芽が生え、シュッと急速に癒える。劇痛が全身を駆け巡り、魔力が鍛えられてねえ体にドクドクと流れ込み、痛みが倍増。


「くそっ!」リオが怒鳴る。背後から黒刺がドカンッと飛び出し、黒雨みたいにビュンビュン、ルクスに襲う。ルクスは背中に【黒影披風】をズバッと出し、急所をガード。服は猛烈な攻撃でボロボロ、女の体が露わになる。「お前、女!?」リオがポカン。


ルクスは隙を与えず、野犬みたいにガバッと飛びかかる。「引き千切れ!」【黒影披風】でリオの防御をブチ破り、首と肩にガブッと噛みつき、血がダラダラ流れる。口は血肉でパンパン、ガツガツ喰らう。「畜生! 畜生!」リオは黒影をガンガン繰り出し、ルクスをズタズタにしようとする。ルクスは披風と呑噬の癒力でガチ耐え、振り払えねえ虫みたいにガブッと噛みつく。


「ダメだ!」リオは心でビビる、喰われる恐怖。「離れろ!」彼は魔力をグワッと集め、黒い壁をドーンと作り、ルクスを弾き、逃げようとする。「ぐっ!」リオは膝に激痛。ルクスが黒壁からヌッと現れ、左手で影の槍を二本、ズバッと放ち、リオの両腿をガッチリ貫く。彼女の腕がボキッと折れ、槍が飛び、リオの腿をガッツリ釘付け。


黒壁がサッと消える。リオが振り返ると、ルクスは左腕が折れ、両腿が刺され、影の魔力で体を支える。髪は血まみれ、地獄の悪鬼みたいだ。彼女はガバッと飛びかかる。「怪物! 悪魔! 離れろ!」リオが叫び、細い刺がシュシュッと放つ。ルクスは避けず、脚の踝にガブッと噛みつき、赤い目がギラギラ、全部喰う気だ。


「やめろ! 寄るな!」リオはパニック。脳裏に過去が閃く。娼婦の母に男娼として売られ、娼館で切り刻まれ、瀕死で魔力が爆発。斗篷人に連れられ魔法を学び、「同伴」に虐められ、顔を壊し、狩魔人となり、母と仇を殺した。燃え尽きた炉火のようだ。


ルクスはリオをガブガブ喰らい、死ぬまで。屍体はグニャッと溶け、ルクスに流れ込む。劇痛が層々と重なり、リオの雑乱な魔力がドクドクと彼女に流れ込む。紅光がドーンと爆発、目と髪が血紅に染まる。折れた掌がシュッと再生。【黒影披風:ボロい黒披、初級影魔法。】


「アアッ!」ルクスは叫び、短い髪が肩に垂れ、痛みで崩れそう。「ミティ、撐えろ!」彼女は角落の暗影に向かう。


「お兄……お兄……」ミティは目を開けられず、声がか細い。


「ミティ、聖光教の沐恩者に連れてく。絶対大丈夫。」ルクスは慰め、リオの黒袍を羽織り、布を撕いで自分とミティを縛り、抱き上げ、聖光教へ走る。


ルクスは街頭をガンガン駆ける。聖光教? 被詛咒者? そんなのどうでもいい。「ミティが死にそう。アイツらしか救えねえ。」


「どけ!」ルクスは吠え、ミティをギュッと抱く。宝を守る野犬、死んでも離さねえ。


「お兄……見えねえ……」ミティの声は虚弱。突然、響きが強まる。「回光か?」


「大丈夫、ミティ、俺がいる!」ルクスは歯を食いしばる。リオの雑乱な魔力が体内でグチャグチャ、鍛えられてねえ体は消化できず、血と一緒に流れ出す。頭が霧に飲まれ、ズキズキと痛む。


「お兄……顔、触りたい……」ミティが囁く。


「触れ、ミティ。」ルクスは街角をグインと曲がる。血まみれの姿に市民はビビり、避け、怪訝な目を投げるが、みな自分の事に忙しい。ミティの冷たい手がルクスの顔に触れる。服を縫い、美食を作った手だ。「お兄……キレイ……俺のため『お兄ちゃん』演じて……足手まといの俺……」


「違う! ミティ、一番大事だ!」ルクスは喉が詰まる。「もうすぐだ!」聖光教が目の前に現れる。


「ドンッ!」ルクスは頭で門を叩く。「助けて! 頼む!」聖光教の臨時教堂、信徒集めに沐恩者が常駐。


「神聖な地で騒ぐな。」厳しい声。門がガチャと開く。金星の面具の沐恩者、白袍がキラキラ。


「妹を救って! 閃金幣十枚! なんでも払う!」ルクスが叫ぶ。


沐恩者は金に反応せず、「なんでも」でわずかに頷く。「静かに、傷を見せろ。」


ルクスが下を見ると、腕は空っぽ。血まみれの紫裙の碎片が地面に散らばる。「ミティ!? ミティ!?」心が刀でグサッと割れる。「何だ!? いや、ありえねえ!」


胸元に、紅緑の布花がポッと現れる。【癒花:紅緑の布花、装着で治癒魔法。】


「あ——!」ルクスは悲鳴を上げ、爪で顔をガリガリ、血がダラダラ、指の間に碎片を挟む。「キチガイか!」沐恩者が冷たく言い、門をバンッと閉め、泣き声を遮断。「消えろ!」


ルクスは地面に跪き、額を石板にゴツンとぶつけ、血と泥が混ざる。呆然とし、失神したように碎片と癒花をガン見。「俺、喰った……ミティ……」


「ごめん……ミティ……」涙が血のよう。「埋める? 城を出る?」彼女は動かず、跪いたまま、震える手で碎片をギュッと抱きしめる。


ルクスは麻木に立ち、城門へ向かう。時間は無情、絶望が流れ去る。黄昏、市民は晚飯を準備、店を閉め、静かだ。


突然、内城からビリッと布を撕く爆音、平穏を打ち破る。市民は窓から覗き、街でキョロキョロ。


ルクスは振り返らず、麻木に歩く。懷中の裙片が紫の焰でポッと燃える。紫のもの——レンガ、漆、衣——すべてが燃え上がる。熱波が空気を歪め、泣き声と助け叫ぶ声が紫の都に響く。


「やだ、やめろ!」ルクスは焰に飛び、手が焦げても消せねえ。紫焰はガンガン燃え、逃げ場はねえ。紫の都は煉獄と化す。

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