第43話 月光の下の雑談
花園は雑草とタンポポだらけ。もうずっと誰も手入れしてねえ。
「ほら、こっち!」ルクス、いい場所見つけて、ゴロンと寝転がる。頭をエミリーに傾け、ちょっとキョトン。「寝転がらねえの?」
エミリー、寝転がらず、ルクスの横にスッと座る。顔を上げ、満天の星を眺める。
「星って、どうやってできたか知ってる?」ルクス、口開く。「妹がさ、星って空に撒かれたシュガーパウダーみたいだって。宇宙、実はでっかいケーキなんじゃねえかって!」
「君の妹、ケーキ好きだな。」エミリー、答える。「星のことはわかんねえ。本には、光明神が諸神と妥協して、空を独り占めしねえために、夜と星を分けた、七神の儀仗だって。」
「だろ、めっちゃケーキ好き! 七神か……そういや、財福神って何? なんか神のインターンみたいじゃね?」
「知らねえよ。でも、七神以外の神でも、気軽に冒涜しちゃダメだ。」
「俺、本読んだことねえから、わかんねえや。」ルクス、話がマジすぎる、話題変えようと。「妹が言ってた。人は自分の世界で生きられねえけど、自分の天国で死ねるって。」
「自分の天国? 天国は神が作るもんだ。凡人は信心で入場券買うしかねえ。自分で天国作る? いい幻想だな。」
「天国、行ったことねえし、どんなか知らねえよ。考えるより、頭で自分の天国作って、生き足りたらそこに住めばいい!」
「天国を夢見る奴らと何が違うんだ?」
「話、聞いたことある。肉屋が豚飼ってて、ある日、豚が柵抜け出した。遠くに逃げねえで、教会にズカズカ入って、神像の前でガチッと跪いたんだ。」
ルクス、グーっと伸び。髪、草だらけ。「その豚、神父に経読まれて祝福されて、祈り終わったら、自分で柵に戻って、肉屋にブッ殺された。」
エミリー、ルクスをキョトンと見る。
「豚の天国、人のと同じか?」ルクス、続ける。
「知らねえ。ペットになれたんじゃねえ?」
「それも微妙! 豚、毎日泥んこで転がって、虫追いかけたいのかも! 天国、ピカピカで泥がなかったら?」
「もっとマシな選択あんのか? 豚が逃げなかったこと、責めてんのか?」
「んなわけねえ! 俺、他人に決めつけねえよ、豚でもな! でも、俺がその豚なら、絶対逃げる。一番泥だらけのとこ探す!」
「だからさ、自分の天国、作らねえと。他人の天国なんか待って死ぬより、生きてるうちに頭で作っとけ。入れなくても、まあいいじゃん。少なくとも天国、持ってたんだから、死後の心配いらねえ!」
「それ、自己欺瞞じゃね? 意味あんのか?」
「あるよ。だって、結局、このガッカリな世界と仲良くやんねえと。自分騙しても、勇気出してガッツリ生きなきゃ。ハッピーな死人みたいに生きるんだ!」
「ハッピーな死人?」
「妹のアイデアだ。死人は死を恐れねえ。だから、死人みたいにガッツリ生きろって。生きることばっか考えると、うまく生きられねえ! ミティのアイデア、いつもいっぱい!」
「じゃ、君の妹、今……?」
「ミティ……死んだ、でも、生きてるかも!」ルクス、星見つめ、希望と痛みが混じる声。
エミリー、追及せず、ちょっと黙る。やがて、自分の話。「俺、兄貴がいた……」
「名前、ローリエン。俺より二十歳上。二十五で隊長、三十七で沐恩者の候補になった。」
「うち、小貴族で、両親、どっちも沐恩者。レストランやってて、でかい厨房あった。」
エミリー、ルクスのキョトン顔見て、説明。「ここじゃ、料理人は神聖な仕事。沐恩者の候補、料理習わなきゃ。トップのレストランのシェフ、だいたい沐恩者で、神に飯を捧げる。」
「普通なら、兄貴、隊長辞めて、親の店で料理手伝って、勉強して、沐恩者の枠空いたら、順当に就くはずだった。なのに、別の道選んだ——反乱だよ。反乱軍にガッツリ入った。」
「三十年以上前の反乱……」ルクス、心でサッと計算。「三十七歳、俺より二十歳上……エミリー、今何歳?」簡単な算数、わかんねえ、落ち込む。
「その頃、普通の精霊、暮らしキツかった。紫皮族よりマシって程度。」エミリー、続ける。「反乱後、神使が命令出して、植物人を奴隷に残して、精霊の待遇、ちょいマシに。」
「でも、反乱に参加した精霊、家族が関わっただけでも連座で、終焉の河に流された。うちの両親、沐恩者だったから罪重く、裏切り扱いで、神職剥奪、不帰の河に流された。」
「俺、ちっちゃかったから、神使デメトリアの赦免で助かった。ただ、家族の罪背負って、もう神職にはなれねえ。」
「変だろ? 沐恩者一家の精霊が、底辺精霊の反乱に参加するなんて。」
ルクス、何て返すか分からず、黙って聞く。エミリー、返事待たず、独り言みたいに続ける。「もっと変なのは、親も家族も全部失った奴が、罪を洗い流して神職になりたくて、こんなガチで頑張ってること……もっと変じゃね?」
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