第42話 絵画と晩餐
デラスカは黙り込むエミリーに近づき、トゲのある口調で言った。「これが君の傑作か、エミリー隊長? キチガイのキノコ人を連れてきて、好き勝手喋らせた?」
エミリー、黙ったまま。デラスカの声はさらに低く、脅しを匂わせる。「君が罪人の一族の出だと、誰より分かってるはずだ。だが、運がいい。デメトリア神使様が君の才能を見込んで、神罰の時は幼かったからと、チャンスをくれた。真面目にやってりゃ、来月の祝祭で神使様が直々に君の罪を赦し、ひょっとしたら……彼女の姓を授けるかもな! その栄誉が、君と汚れた一族に何を意味するかは、分かるよな?」
「なのに、これはなんだ?」彼はグイッと声を荒げた。「神使様は君をガン見してる。この城門のドタバタ、一字一句、全部彼女の耳に入る! その時、どうなるか、想像できるだろ!」
デラスカはくるりと背を向け、捨て台詞を吐いた。「エミリー隊長、ゆっくり休めよ。今夜のディナーの招待、キャンセルだ。」
ルクスはさっきのアシェルの演説にビックリしつつ、チラチラエミリーを観察してた。彼女の顔、複雑だ。悲しみ、衝撃、ほんの少しの恐怖が、潮に揺れる孤島みたいに、チラッと見えては隠れる。
「エミリー……」ルクス、慰めようと近づいたけど、サブリナにガッと止められた。
いつものお喋り娘じゃなく、目がキンキンに冷たく、激しい感情を抑え、ルクスをガン見。
「人間、お前、なに企んでる?」
「は? どゆこと?」ルクス、ポカン。なんでまたサブリナに絡まれるの?
「目的なんかどうでもいい!」サブリナ、鉄鎖をギュッと握り、指が真っ白。歯を食いしばって脅す。「敵じゃなく、エミリー隊長の部下なら、来月の祝祭がどれだけ大事か分かるよな!」
彼女、ルクスの肩をガシッと掴み、金の瞳でガン見。言葉、ナイフみたい。「警告する! 少しでも頭があるなら、エミリー隊長が保証人だと認めな。不用意なことすんな! 彼女のミスは全部、お前のせいだ!」
サブリナの唇、プルプル震え、ルクスの耳元でゴロゴロ唸る。「俺! エミリー隊長を守るなら! 手段は選ばねえ!」
言葉、ゆっくり、でも絶対の警告。ルクスをもう見ず、エミリーにズカズカ向かった。
ルクス、ボーゼン。【勇者の欠片、盗んだら!? エミリーを巻き込む!?】祝祭でドタバタやったら、エミリーも奈落だ。彼女を副神使の座から引きずり下ろし、共に逃亡なんて、できるわけない!
この二ヶ月の穏やかな日々で、ルクス、心の傷を忘れてた。それが抉られ、初めて自分の葛藤の深さに気づいた。どうしようもない。
サブリナ、エミリーとヒソヒソ話して、エミリーが先に帰れと合図。
エミリー、ゆっくりルクスに近づき、聞いた。「これから、どうする?」
「え?」ルクス、はっと我に返り、頭ゴリゴリ掻いた。「ボロ宿で休むかな、なんも予定ないよ。」
「そっか……」エミリー、まぶたをスッと下げ、静かな部屋の半開きの窓みたい。瞳、言葉にできない香りと迷いを隠してる。
彼女、ルクスをじっと見つめ、ちょっと間を置いて言った。「じゃ、うちに来なよ。客室、いっぱいあるから。」
「マジ!?」ルクス、キョトン、すぐバッチリ答えた。「行く行く!」
夕陽のオレンジ、柔らかく二人を包む。人間の少女と精霊の少女、温かくて、でもどこか悲しみと迷いの混じる黄昏の絵みたい。
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夜が迫る中、エミリーとルクス、ようやく彼女の家に着いた。輝光の空地の西、でっかい屋敷が緑の丘にドーンと鎮座。暗くて、部屋は闇にギッシリ。まるで誰もいないって叫んでるみたい。
エミリー、ルクスをツタ絡まる鉄の門から案内し、梨の木の扉をギィッと開けた。大広間、キレイだけど、床は古びて、昔の栄光がくすんだ、半死にの高貴さが滲む。シャンデリア、明かりなし、水晶と空の燭台がブラーン。両側のロウソク、ユラユラ頑張って広間を照らすけど、ムリ。廊下、闇がグネグネ、黒い巣みたい。
「エミリー、君の家、かくれんぼにバッチリ!」ルクス、マジで感心。
「やりたきゃ勝手にやれ。」エミリー、冷たく返し、暗い部屋に叫んだ。「オリバーさん、帰ったよ。」
ササッと灯りが揺れ、足音。メガネの老アクライダー、オリバーが礼。「お嬢様、お帰りですか? お連れ様?」ルクスの人間っぷりにちょいビックリ。
「やあ、ルクスだよ! エミリー先生の弟子で、川辺グルメのパートナー!」ルクス、馴れ馴れしく即答。
エミリー、ため息。「急でごめん。メイおばさんに二人分の晩飯、いつものでいいから用意してって伝えて。」
「お嬢様、よろしいですか?」オリバー、エミリーの頷き見て、静かにキッチンへ。
「今夜の部屋見せとく。兄貴の古い部屋。」エミリー、言った。
「兄貴?」ルクス、好奇心ピクピク。
「うん、チャールズ。チャールズ・パーシー。」エミリー、淡々。
ルクス、エミリーの提灯ついて二階へ。長い廊下、暗い。エミリー、ドアをギィッと開けた。「ここ、今夜の君の部屋。オリバーに掃除させる。」
ルクス、キョロキョロ。広い部屋、薄青の天井、濃茶の床。ベッド、キッチリ整って、シーツと枕バッチリ。床、ちょっと埃っぽいけど、誰か掃除した跡。正面の木の机、黄色い紙がドサッ、羽ペンの横、インク瓶は干からびた沼みたい。
「兄貴の部屋、いいの?」ルクス、聞いた。
「他の部屋、何年も掃除してない。埃の山か廊下で寝たいなら、好きにしろ。」エミリー、冷たく。
【じゃ、君の部屋は!?】ルクス、心でツッコミ、口では「OK! 夜中に兄貴帰ってこないよね?」。
「帰らない……」エミリー、声、月影みたいに冷たい。「永遠に。」
ルクス、エミリーに屋敷案内頼もうとしたけど、「先に進め、蜘蛛の巣かぶるぞ」って言われて終了。
晩飯、すぐできた。長いテーブル、ガラーン。二つの椅子、砂漠のオアシスみたい。ロウソク、ユラユラ、ホウレン草のスープ、野菜コロッケ、薄焼きパン照らす。
「アクライダーの普段のメシ。自分たちで育てた。」エミリー、言った。
「へえ、こんな緑食べて、なんで紫なの?」ルクス、ポロッと失礼。白目くらった。
晩飯、サクッと終了。味、いいね。ちゃんと味付け、植物精霊の干粮とちゃう。【アクライダー、元は精霊だろ?】ルクス、頭で思った。
「なあ、エミリー。」ルクス、聞いた。「終焉の河、どこ?」
「神殿のそば。罪人を流放す時、副神使と十人の沐恩者が見張って、小舟に縛って流す。」エミリー、答えた。
「ふーん。」ルクス、次何話すか分かんない。アシェルとの出会い? 精霊の真相? どっちも微妙。
「シルヴィとどうやって知り合ったの?」ルクス、好奇心でポン。
「子供の頃、幼馴染。」エミリー、ポツリ。ルクス、精霊の歳にまたモヤモヤ。
暗いロウソクの下、晩飯のムード、イマイチ。「食ったら早く寝な。」エミリー、スプーン置いた。
「星見ようぜ!」ルクス、急にひらめき。エミリー、ポカン。「なんで?」
「こんな時間に寝ろって、無理ゲーだろ!」ルクス、「退屈死ぬ!」って顔。「客に呼ばれたんだ、ちょっとくらい願い聞いてよ! 古い屋敷で冒険、蜘蛛の巣探しとかマジない!」
エミリー、呆れ。こんな図々しい客、初。「……」
「行くよ行くよ!」ルクス、引っ張る勢い。エミリー、渋々、外の庭へついてった。
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