第40話 キノコの演説
帰り道、めっちゃ退屈! エミリーがムスッと前を歩き、ルクスは黙って真ん中。最後尾は、キーキーうるさい木板車を押すキノコ人のおじいさん、アシェル。歩みはカメより遅い。
山谷から輝光の空地へは、でっかい森を抜けて、ガタガタの土道を進む。アシェルのボロ車は木の根や石ころでガクガク揺れ、汗だくで傘帽から汁がポタポタ。ルクスは何度も「手伝う?」って聞いたけど、アシェルは頑固に首を振った。
「車に何入ってるの?」ルクスがチラッと聞いた。
「真相だよ。もうすぐ世界に明かされる真相さ。」アシェルはニヤリと笑い、黒い布でピッチリ覆われた車がますます気になった。
日が暮れて、森の風よけの空地で休憩。アシェルは車から野菜とキノコの詰めパイと干し豆を取り出し、みんなで分けた。热水なしで、ガチガチの干粮をガリガリ。ルクスは歯が痛い! アシェルのボロボロの歯が石みたいなパイをバリバリ噛むの見て、キノコ人の歯のタフさにビックリ! てか、キノコ人がキノコ食うの!?
翌朝、アシェルはまた一人で重い車を押した。一晩の疲れで手足は傷だらけ、薄黄色の汁が滲んでも平気な顔。ルクスとエミリーの助けをまた断った。
昼過ぎ、輝光の空地の緑の城壁がやっと見えた。アシェル、急に喋りだした。「君、人間だろ?」
「うん! 他の人間見たことある? こういう短い耳の。」ルクスは耳をピョコピョコ触った。
「ハハ、ないよ。」アシェルは首を振った。「古い本の切れ端で、人間の話を読んだだけさ。」
「本!?」ルクス、目を丸く。
「精霊が捨てたボロ本さ。ほとんど腐ってる。」アシェルはため息。「森の端の俺たち植物人には、字を教える先生なんていない。俺、二十年以上かけて、ボロボロの辞書でかろうじて字を覚えたんだ。」
「スゴイ!」ルクス、感心。彼女なら本、魚焼く燃料にしてた。
「本は少なくて、まともなのは数冊だけ。」アシェルの目に希望の光。「でも、十年かけて子供たちに字を教えた。いつか彼らがもっと子供に教え、捨てられた本を拾い、俺たち自身の本を書くかもしれない!」
「絶対いける!」ルクスは力強く頷いた。ミティの復活と吟遊詩人になる夢だって遠いけど、希望は大事!
道中、アシェルはいろんな話をしてくれた。植物人は春と夏に花の開花で決めた盛大な祭りをやる。花びらとジャムで作る「百花ケーキ」は絶品で、ルクスに「絶対食べに来い!」って誘ってくれた。赤ちゃんが生まれたら、男の植物人が花と葉のスカートで踊って邪気を払う。恋の時は、男が柳の笛を吹き、女がツルで編んだ琴を奏でて愛を伝えるんだって。
ルクスは聞き入っちゃって、エミリーの尖った耳がピクピク動くのに気づいた。冷たい隊長、実はこの話、超気になるみたい!
アシェルはまだ話したそうだったけど、輝光の空地の城門がもうすぐ。精霊たちの視線が集まり、彼はピタッと黙った。
「エミリー隊長!」金髪のハリケーン、サブリナがビューンと駆けてきた。「やっと帰ってきた!」
彼女はアシェルをチラ見して、キョトン。「このキノコ人……?」
「サブリナ、ご苦労。」エミリーはサラッと手を振った。「今は聞かないで。」
彼女はアシェルに振り向いた。「始めていい?」
「もう少し待って。」アシェルが懇願。「人がもっと集まってから。」
「隊長、これって……?」サブリナ、ますます混乱。エミリーは「待て」と合図。アシェル以外、誰も何を待ってるか知らなかった。
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昼下がり、森から続々と帰還する精霊の狩猟隊。みんな、城門の真ん中で跪く奇妙なキノコ人、アシェルをチラチラ見てる。彼はガチで跪いて、頭下げて、唇をモゴモゴ。知られざる神に祈ってるのか、特別な瞬間を待ってるのか。
各隊の隊長は任務を報告しにドタバタ。暇な精霊たちがゾロゾロ集まり、ヘンテコなキノコ人をガン見。アシェルは祈り続け、人が十分集まったと見るや、ゆっくり立ち上がった。
「尊敬する精霊の皆様、こんばんは!」彼はドジッこく礼をした。「礼儀なんて習ったことないよ。ボロ本の絵で見ただけ。失礼があったら、許してね!」
精霊たちはポカン。顔を見合わせ、「食材」が礼して喋るなんて、ぶっ飛びすぎ! なんかモヤモヤして、みんな自然と後ずさり。アシェルをゆるーい円で囲んだ。
「ふう……」アシェル、深呼吸。緊張してるけど、目がキラリ。彼は何度も頭でリハーサルしたんだ。視線をぐるっと巡らせ、好奇や警戒の目を見つめ、ガッと叫んだ。「今日、俺はこの森の平和と未来のために、話に来た! 過去と今と未来の、真相の話だ!」
「は? 城門でギャーギャー騒ぐキノコ?」キラキラ神袍の沐恩者精霊、デラスカが城門から出てきた。彼は人群の前のエミリーにニヤリ。「エミリー隊長、獣潮から隊を守って、一日行方不明の後、無事帰還! お祝いに来たよ。ついでに、俺のレストランに遊びに来てよ。で、これ、なに?」
「デラスカさん、ありがと。招待、楽しみにしてるよ。」エミリーは軽く頭下げ、精霊の礼。「でもさ、今、キノコの話聞くのも悪くない。話終わったら食っちゃうのも、面白いよね?」
「デラスカさん、はじめまして。」アシェル、エミリーの真似でビシッと礼。「俺、喜んであなたの店の食材になるよ。でも、まず話させて。終わったら、好きにしてください。文句なし!」
「キノコのスピーチ?」デラスカ、クスクス笑い。「バカバカしいにもほどがある!」
でも、集まった精霊をチラ見して、手を振った。「ま、いいよ。喋れ。この干からびた老キノコ、揚げ物には向かないけど……濃いスープなら、まあイケるか。次の新メニュー、キノコスープだ!」
「その機会、感謝します。」アシェル、ビビらずホッと息を吐き、両手を上げ、ぐるっと見回した。
「尊敬する精霊の皆様、俺たち、どこが違う!?」彼の声、デカくてクリア。夕暮れの静けさにビーンと響く。
誰も答えず、ヒソヒソ声がデカくなる。ニヤニヤ笑う奴も、こいつ「野菜」のくせに何!? って感じ。
「見てよ! 俺たち、両手がある!」アシェル、両手をガバッと上げ、手のひらと甲を見せた。
「足もある、頭もある、体もある、喋れるし、命を支える骨だってある!」彼の声、どんどんデカく。一言ごとにピタッと止まる。声の波、どんどん高まる。
「家族がいる! 生きていたい! 収穫の時は食い物を分け合い、祭りで盛り上がり、家族が死んだら心がズタズタ! 好きな人にドキドキだってする!」
「俺たち、根本は同じだ! ただ……住む場所が違うだけ!」アシェル、喉ガラガラで叫んだ。
でも、返ってきたのは拍手じゃなく、もっとうるさいヒソヒソと、モロバレの嘲笑。
「それだけ?」デラスカ、ニヤッと冷笑。「キノコスープさん、想像力スゲーな。芸術も知らず、魔力ゼロ、ただの菌糸のクズが、高貴な精霊と同等!? ハハハ!」
精霊たち、ドッと笑い。優越感バリバリ。
でも、アシェル、めげない。顔は落ち着いて、目は炎みたいにギラギラ。彼、全部覚悟済み。
「デラスカさん、俺たち、全然違うって……」アシェル、頭下げ、声ガサガサ。でも、目はデラスカをガン見。
「じゃあ……これ、見てよ!」
彼、ガバッと手を伸ばし、そばの黒い布でビッチリ覆われた木板車を引っ張った……




