第29話 精霊の祝祭?吟遊詩人ルクス(転職)
「神使様は十年ごとの祝祭以外、ほぼ聖殿を出ないよ。聖殿内部の警備もめっちゃ厳重で、最奥に入るなんてほとんど無理。」
「そっか……教えてくれてありがとう。」ルクスの希望は少し翳った。
今の自分の力じゃ、そんな場所に踏み込むのは不可能だとわかっていた。
「諦めないで、ルクス!」
シルヴィはルクスの心を見透かし、再び彼女の手を握った。
「あと三ヶ月で、精霊族の十年一度の盛大な祝祭がある。その時、神恩を祝い示すため、聖殿の警備はほぼ全部、広場の祭典に動員される。神使様と三人の副神使様も、広場で儀式を執り行う。輪番の数人以外、聖殿はほぼ無防備になるよ。」
「本当!?やった、シルヴィ、ありがとう!」
ルクスは力強く頷いた。
これは絶好のチャンスだとわかった。一度逃せば、十年待つしかない。十七歳で、妹を復活させたいルクスにとって、十年は長すぎ、恐ろしすぎる。
「ルクス、絶対に気をつけて!」シルヴィはルクスの興奮を見て、慌てて忠告した。「祝祭でも、聖殿禁地に潜入するのは超危険。無理しないでね。」
彼女は付け加えた。
「それに、大きな問題がある。普通の人間は、輝光の空地の城内に入れない。特に祝祭期間は審査が厳しい。『輔佐傭兵』の特別な身分があれば、入れるけど。」
「輔佐傭兵?その身分……どうやって取るの?」
「私はただの辺境巡回護衛だから、」シルヴィは少し無力そうに首を振った。
「普段の仕事は、森の近くを散歩したり、楽な見張りくらい。この特別な身分の申請権はないよ。でも、知り合いの精霊なら助けられるかも!まあ……そこそこいい精霊かな。彼女に手紙で頼んでみるよ。彼女の地位と権限なら、ルクスの『輔佐傭兵』身分を申請できるはず。」
ルクスは、シルヴィが「その精霊」を語る時、表情に一瞬の寂しさと不自然さがあるのに気づいた。
「じゃあ、私にシルヴィの恩を返すためにできることって?今は何もないけど……本当に何かしたい!」
「恩返し?」シルヴィはルクスの言葉に、細い指を顎に当て、真剣に考えた。
ルクスの心はドキッとした。
もしシルヴィが「勇者の使命」を押し付けてきたら、どうしよう?
そんなら、街頭役者のように「勇者」を演じるしかないか。
「うん、思いついた!」シルヴィの目がぱっと輝き、絶妙なアイデアを思いついたようだった。
「じゃあ、ルクス、吟遊詩人になってよ!」
「は!?」ルクスは頭がクラッとした。「吟遊詩人?私、学校行ってないし、字もほとんど読めないよ……」
「もしかして、シルヴィの詩を覚えて、広めるってこと?」ルクスは推測した。
シルヴィが辺境の小屋に縛られ、広い世界に行けないから、誰かに詩を伝えてほしいのかな?それなら全然オッケー!
ただ、発音と記憶力をちょっと鍛えないと。
「違うよ、ルクス。」シルヴィは首を振った。「ルクス自身の詩を作ってほしいの。」
「えっと……それ、めっちゃ難しいと思う……だって、詩の書き方なんて全然知らないし……」ルクスは苦笑いし、竜退治より難しそうだと感じた。
でも、シルヴィの期待の眼差しに、決意した。
「頑張ってやってみる!でも、シルヴィ、まず字を教えて!」
「字を教えるのはいいけど……」シルヴィは少し残念そうに言った。
「今は時間がないかも。ルクス、たとえ『輔佐傭兵』の身分を取れても、祝祭まで三ヶ月で十分な貢献をしないと、輝光の空地に残れない。三ヶ月は短いよ。この辺境の小屋に字を習いに戻る時間、たぶんないと思う。」
「……そっか。」字のことは後で考えるか、自分で何とかするしかない。
「そういえば、輔佐傭兵って具体的に何するの?」
「その身分は、危険な任務で外に出る精霊の戦闘や任務を助ける役割。」シルヴィが説明した。「貢献度は、ルクスを保証した精霊が評価する。任務中は保証者の命令に従えばいいよ。」
「なるほど……」これからの三ヶ月、忙しくなりそう。
「それと――」シルヴィの声が急に高くなり、厳粛になった。
ルクスは驚いて身を震わせた。
シルヴィはルクスの目を見つめ、言った。「ルクス、これからの三ヶ月、たくさんの戦いを経験するよ。知恵のない、攻撃だけの巨大植物モンスターには容赦しなくていい。でも、でも、お願い……喋って、思いや感情を持つ生命は、どんな姿でも『人』として扱って。」
ルクスは理由を尋ねなかった。シルヴィの声に潜む悲しみを聞き取った。
「うん、わかった!」ルクスは力強く答えた。
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