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第26話 靴と長靴


人員が揃うと、出発の物資整理が始まった。


ルクスを含む全精霊が標準の物資袋を受け取り、中には密封の食盒、水袋、縄索、野外生存用の道具が入っていた。


食盒の食物を見たルクスは、任務後に食べることにした。エミリーが外出任務で食事が支給されるとは言わなかったから、ルクスの背囊には水瓶と大量の花餅が詰まっていた。


物資袋を点検するルクスの前に、サブリナがやって来た。


彼女は口元を歪め、作り物の微笑を浮かべ、ルクスに近づき、声を潜めて言った。


「たとえお前みたいなのが運良く試練を突破したところで、何だっていうの? 所詮、お前は下品な女・人・類よ。ただの――」


彼女の視線が下に滑り、ルクスの泥まみれの靴に止まり、軽蔑の口調で続けた。


「――靴すら……汚らしい人間。」


ルクスはこの金髪精霊に笑いものだった。この女、頭に何か病気でもあるんじゃない?


他の精霊はルクスを嫌っても、話さず、距離を置くだけだ。


だが、このサブリナは、嫌悪を顔に貼り付けながら、なぜか口数が多く、わざわざ近づいて絡んでくる。


「へえ? ご忠告ありがとう。」ルクスは「申し訳ない」とばかりの表情を浮かべた。


「じゃ、靴の土を払うね。」そう言うと、彼女は足を上げ、地面を強く踏みつけた。


瞬時に土埃が舞い上がり、サブリナの棘薔薇模様の華麗な長靴に降りかかった。


「うわっ! ごめんごめん! 土を払うのに力入れすぎちゃった! ほら、うっかり君の綺麗な靴を汚しちゃったね。」ルクスは目を瞬かせ、無垢に言った。「でも、君みたいな優雅で礼儀正しい精霊なら、私の不注意、許してくれるよね?」


「てっ、てめえ……!」サブリナはルクスを指差し、怒りで震えた。


だが、すぐに怒りを抑え、彼女は振り返り、近くで荷物を運ぶアクリダーに手を振った。「おい、こい! 私の靴を磨け!」


アクリダーは命令を聞くと身体を硬直させ、荷物を下ろし、サブリナの前に走り寄り、蹲って口袋から比較的清潔な手巾を取り出し、彼女の靴の埃を丁寧に拭き始めた。


「どうだ? この汚靴の人間。」サブリナは顎を上げ、長靴の足を蹲るアクリダーの膝に乗せた。


彼女は腰に手を当て、言った。「このアクリダーに、お前のボロ靴も磨かせてやろうか?」


「ありがと、遠慮するよ。」ルクスは手を振って断った。「私の靴は君の長靴ほど高級じゃない。土がついても平気さ。」


だが、サブリナはその言葉を聞くと、膝に乗せた足を上げ、靴を磨くアクリダーの顔を蹴った。


彼女は倒れたアクリダーに吐き捨てた。「聞いたか? この人間が言うには、お前みたいな卑しい輩は、彼女の靴を磨く資格もないって!」


埃まみれのアクリダーは地面から這い上がり、サブリナを一瞥もせず、屈辱と怨恨に満ちた目で、傍に立つルクスを睨んだ。


『何だよ、この騒ぎ!?』ルクスは、この金髪精霊の頭が絶対におかしいと思った。


「二人とも、子供か? そこで何をぐずぐずしてる? さっさと準備して出発しろ!」


遠くで門衛と話していたエミリーが騒ぎに気づき、眉をひそめ、サブリナとルクスを急かした。


「了解、エミリー隊長!」サブリナは恭敬に応じ、エミリーの方へ歩き出した。だが、振り返る刹那、彼女は先のアクリダーと同じ、怨毒に満ちた目でルクスを睨んだ。


『……何だよ、この騒動……』ルクスはサブリナの背を眺め、心で溜息をついた。


出発後、一行は沈黙を保った。ルクスは精霊の狩猟隊に加わったのではなく、まるで息詰まる罐詰め隊に放り込まれた気分だった。


厚い落葉と樹根を踏む、「ガサガサ」「ザッザッ」の足音だけが響く。


三ヶ月前、森を独り歩いた孤独とはまるで違う。あの時は孤寂だったが、今のこの抑圧的な静寂は、ルクスを不快にさせた。


しばらく歩いた後、ルクスが口を開いた。


「えっと……私たち、何しに行くの?」


「そんなことも聞く? 人間ってほんと役立たずね。」隊の側翼にいるサブリナが軽蔑を込めて言った。


ルクスはひとまず無視した。


「すぐに分かる。私の命令に従え。」エミリーの声は、相変わらず冷たく簡潔だった。


言わずもがな。


ルクスは依然迷茫で、ますます退屈を感じた。


隊の他の精霊たちは、ひたすら歩くか、二人で囁き合うばかりで、新参の「人間傭兵」ルクスと話す気はなかった。


ルクスが何度か話しかけても、誰も相手にしなかった。


はあ……ルクスは、この退屈な行路で何かしらやることが必要だと感じた。


例えば……詩を作る?


ルクスは顔を上げ、陽光が重なる枝葉を縫い、断続の光斑となって苔と草の混じる土に降り注ぐのを感じた。森の湿気を帯びた微風が、時折、柔らかく頬を撫でる……霊感が、来た!


『陽は天に照り、鳥をチチチと鳴かす。風は地に吹き、葉をガサガサと響かす。人は叢を歩み、パチパチと音を立てる。心は苛立ち、ブンブンと唸る。』


「ふう――」ルクスは自作の『叢林行路詩』に大満足だった。


だが、この詩は、真に理解し、賞賛してくれる友と分かち合うべきだ。


この隊はほぼ知らぬ精霊ばかり(知ってる二人は、関係が微妙)。ルクスは詩を胸に秘め、魔音盒でシルヴィに朗誦しようと決めた。


「全員、注意。準備しろ。」隊首のエミリーが声を潜め、手信号を出した。


彼女は何かを発見し、空き地に半蹲し、地面を凝視していた。


ルクスが近づくと、エミリーが巨大な足跡を見つめていた。五本の剣の如く太く鋭い爪痕が土に刻まれていた。


この怪物、一踏みでルクスを釘の如く地に打ち込むだろう。


「人間。」足跡を検分したエミリーがルクスを振り返り、言った。


「これからの手信号の意味を覚えろ。」


エミリーは両手を差し出し、右手の甲を左手掌に強く押し付けた。「これは『停止、絶対静寂』を意味する。」


次に、四指を揃え、鷹爪の如く曲げた。「これは『行動準備』だ。」


最後に、食指を伸ばし、空中で数回転した。「これは『目標の後方へ迂回しろ』だ。」


「分かったか?」エミリーがルクスを見据え、問うた。


「分かった。」ルクスは頷き、答えた。


「『エミリー隊長』を付けなさい!」傍のサブリナが叱った。


ルクスはサブリナを振り返り、エミリーの真似で右手甲を左手掌に押し付け、言った。「この信号は『静寂を守れ』ですよね? ……エミリー隊長?」


「……信号が逆だ。それに、私の信号に従うだけでいい。お前がやる必要はない。」エミリーが訂正した。


サブリナはルクスの仕草に歯噛みしたが、口を開く前に、エミリーが「静寂」の信号を出し、一行を率いて足音を潜め、ある方向へ緩やかに進んだ。


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