第18話 絶望の戦いと神秘の手
「ブラッド様。」ケインはブラッドが降り立つと、即座に恭しく報告した。
「恐らく……やはり貴方の助力が必要かと。この小娘、強力な治癒効果を持つ魔法道具を身につけているようです。拙者一人では……彼女を仕留めるのは難しいかと。」
彼は率直に状況を説明した。
「何?! 回復型の魔法道具だと?!」
恵浴師ブラッドは一瞬呆然とし、すぐに目に灼熱の光を宿した。
「このレベルの回復魔法道具、オークションに出せば……チッ、チッ、チッ……あの忌々しい黒心商人どもに法外な手数料を抜かれ、取引所に分け前を取られたとしても……最低でも閃金幣700枚は下らねえ! そうすりゃ、俺とお前で三七の分け前、俺は確実に……490閃金幣を手にできる!」
「天よ! こりゃお前、今や……1690閃金幣の値打ちがあるお嬢さんだな!」ブラッドは計算を終え、ルクスを見る目に赤裸々な興奮と貪欲が溢れ、まるで歩く金貨の山を眺めるようだった。
彼は腕を伸ばし、掌を開いた。その掌に、色とりどり、形も様々な晶石が浮かび上がった。
「さあ来い! 俺の愛すべき1690金幣のお嬢さん! 素直に……完全に……俺の口座でキラキラ輝く金貨に変わってくれ! お前を捕まえるのに10閃金幣以上のコストをかける前に!」
ブラッドは獰猛に笑い終えると、浮遊する色とりどりの水晶に、透明なエネルギー翅が生えた。
それらは光芒を放ち、流光溢彩のエネルギー弾と化し、ルクスに向けて一斉に射かかった。
あまりにも密集した攻撃に、ルクスは回避する暇もなかった。
彼女は体内のすべての影魔法を駆使し、黒影の層で自身を包んだ。晶石の砲弾が豪雨の如くルクスの周囲を轟撃した。
その密集した爆発は、まるで破滅の花火ショーのようだった。
周囲の樹木は一帯が燃える破片と化し、地面には深浅様々なクレーターが刻まれた。
『もう……耐えきれねえ……』
ルクスは、全力で防御しているにも関わらず、身体に絶え間ない激痛が走るのを感じた。
その影壁も、連続する爆発の中でますます薄くなり、いつ崩壊してもおかしくなかった。
「上出来だ! 計30粒の各色爆破水晶を発射、コストは……おおよそ紫幣12枚! ケイン! やれ!」
ブラッドは爆発の覆滅効果に満足し、爆発が一瞬止んだ隙にケインを呼びつけた。
ルクスは全身の骨が砕けたような激痛に苛まれた。
防御を解き、頭を上げた瞬間、「悪獣」ケインの巨体が彼女に突進してくるのが見えた。
「うっ!」ルクスは急いで防ごうとした。
だが、影盾と巨爪が衝突した刹那、遠くの恵浴師ブラッドが危険な光を放つのを彼女は目にした。
そして、灼熱のエネルギー光束が数本、虚空を裂いて飛来した。ルクスは身をかわしたが、一本の光束が彼女の腰腹を直撃した。
「ジュッ!」と音を立て、彼女の脇腹に拳大の欠け口が焼き焦げた。
皮肉が焦げる悪臭が漂い、逸れたレーザーは彼女の背後の太い樹木の列を容易く貫き、撃たれた樹木は即座に燃え上がった。
その間も、ケインの振り下ろす巨大な利爪は止まらなかった。彼は猛然と利爪をルクスの足元の地面に突き刺し、刹那、森白の骨質尖刺が狂ったように生える荊棘の群れの如く、地下から飛び出した。
ルクスは後ろに跳び、辛うじて回避した。
だが、彼女の体勢が整わぬうちに、遠方のブラッドの攻撃が再び殺到した。
密集したレーザー光束と強大な威力の晶石爆弾が、再びルクスを中心に覆滅的な爆撃を繰り広げた。
このような遠距離の火力压制と凶狠な近接連携に、ルクスは抗えず、狂風中の落葉の如く吹き飛ばされ、巨大な古樹に激しく衝突し、無力に地面に滑り落ちた。
「ブッ――」ルクスは一大口の鮮血を吐き、頭の中でブーンと鳴る音が響いた。彼女の目と耳は一時的に視覚と聴覚を失い、全身が制御不能に激しく震えた。
【癒花】が傷を癒す前に、極端な危険の直感が、意識のぼやけた縁で彼女を駆り立て、全力で身前に影盾を展開させた。
影盾が形成された瞬間、小さな手押し車ほどの大きさで、六対の透明なエネルギー翅を持つ巨大な水晶爆弾が、影盾に猛烈に叩きつけられた――盾に触れた刹那、巨大な水晶は眩い光芒を放った。
そして、恐怖の大爆発が起こり、爆発の衝撃波が四方に拡散した。
爆発の中心から20メートル内のすべての樹木は瞬時に粉砕され、気化し、消滅した!
50メートル内の灌木は焦黒の灰燼と化し、100メートル内の樹木も次々に燃え上がった。
火光が夜空の半分を赤く染めた。
この水晶爆弾は、鬱蒼とした原始林に、燃える広大な空地を切り開いた。
爆発の煙塵がゆっくりと晴れ、一人ぽつんと立つ人影が現れた――正確には、もはや人影とは呼べず、かろうじて人型を保つ、全身真っ黒な……炭だった。
それは、辛うじて生き延びたルクスだった。
彼女の全身の皮膚は完全に焼き焦げ、魔力は尽きて【癒花】すら召喚できなかった。
凝固した黒い焼傷組織の下から、暗紅色の血がゆっくり滲み出た。彼女の髪は高温で焼き尽くされ、焦黒の頭皮が露わになっていた。猟魔人から剥ぎ取った黒袍も、すでにボロボロに破れていた。
彼女の破れた衣から、橙黄色の水晶が地面に転がり落ちた――それは、青肌の男が彼女に託した「冒涜者の欠片」だった。
「ハハハハ! 見事だ!」恵浴師ブラッドは大笑いした。
「この『六翼熾天使』大水晶を含め、合計で……うむ……閃金幣8枚、紫幣10枚、藍銀貨20枚のコストだ! めっちゃお得だぜ! しかも小娘は俺の計算通り、攻撃を防いで……魔法道具を守った! これで大儲けだ!」
彼の指はなおもせわしなく動かし、金を数えるようだった。彼は精気溢れる様子で、先の猛烈な魔法爆撃による疲れを微塵も見せなかった。
「それに……あの『冒涜者の欠片』、やっぱり彼女が持ってた! ハハハ! 最高だ! ケイン! 早く! あの『1690閃金幣の値打ち』の小姐を捕まえてこい! これで……俺たちは本当に大金持ちだ!」
「御意、ブラッド様。」ケインは応じ、炭と化したルクスへ一歩一歩歩み寄った。彼の歩みはゆっくりと、まるで自宅の裏庭を散歩するようだった。
だがこの時、ルクスは彼らの対話を聞くこともできなかった。
彼女の脳は激痛以外、何も感じられなかった。
『俺……死ぬのか……』ルクスの意識が散漫になり始めた。
『ミティ……ごめん……お前を守れなかっただけじゃなく……俺自身もこんな早く死んじまうなんて……ミティが今の俺を見たら……きっと悲しむよな……それに……ミティの分までケーキを……一つも食えなかった……こんな死に方で……ミティに会ったら……なんて言えばいいんだ……?』
ルクスの思念は、死の縁で急速に閃いた。まるで時間がこの一刻、彼女のために止まったかのようだった。
突然、彼女は世界が異常に明るくなったのを感じた。まるで純粋な光の国に身を置くようだった。
『ここが……死後の世界か? 俺……やっとミティに会えるのか……』ルクスの意識に、解脱のような穏やかさが湧き上がった。
『なら……このまま死んじまうか……でも……俺……』
『……まだ……ちょっと悔しいんだよな……』
微かな念が、風中の残燭の如く、消えゆく意識の深奥で頑強に瞬いた。
彼女自身、何を悔やんでいるのかわからなかった。あの死んだ青肌の男の託した物を届けられなかったことか? それとも……ミティの最後の言葉「俺の分までケーキをたくさん食べて」と言われたのに、それを果たせなかったことか?
「その欠片を……喰え……」その時、空霊で、幽かな、だがどこか懐かしい少女の声が、ルクスの脳裏の奥深くに響いた。
『誰? 誰が喋ってる?』
ルクスは無意識に問いかけようとした。
『ミティ……お前か?』
だが現実では、彼女はただ口を開き、焼き潰された喉から「ホッホッ」と漏れる風の音を漏らし、完全な音節を発することはできなかった。
「その欠片を……喰え……」声が再び響き、今度はルクスがぼんやりと、細く白い手が地面の何かを指すのを見た。
今度こそ、ルクスは躊躇しなかった。
何も見えず、何も聞こえなかったが、彼女は全力で口を開き、声の導く方向へ噛みついた!
「ガリッ」
彼女は噛みついた。
青肌の男が託した、あの水晶の欠片を。
『呑噬……発動!』
意識が完全に闇に沈む最後の刹那、ルクスは心の咆哮を放った!
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改めて、読んでくれてありがとう!これからも応援よろしくお願いします!