表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/44

第18話 絶望の戦いと神秘の手


「ブラッド様。」ケインはブラッドが降り立つと、即座に恭しく報告した。


「恐らく……やはり貴方の助力が必要かと。この小娘、強力な治癒効果を持つ魔法道具を身につけているようです。拙者一人では……彼女を仕留めるのは難しいかと。」


彼は率直に状況を説明した。


「何?! 回復型の魔法道具だと?!」


恵浴師けいよくしブラッドは一瞬呆然とし、すぐに目に灼熱の光を宿した。


「このレベルの回復魔法道具、オークションに出せば……チッ、チッ、チッ……あの忌々しい黒心商人どもに法外な手数料を抜かれ、取引所に分け前を取られたとしても……最低でも閃金幣せんきんへい700枚は下らねえ! そうすりゃ、俺とお前で三七の分け前、俺は確実に……490閃金幣を手にできる!」


「天よ! こりゃお前、今や……1690閃金幣の値打ちがあるお嬢さんだな!」ブラッドは計算を終え、ルクスを見る目に赤裸々な興奮と貪欲が溢れ、まるで歩く金貨の山を眺めるようだった。


彼は腕を伸ばし、掌を開いた。その掌に、色とりどり、形も様々な晶石が浮かび上がった。


「さあ来い! 俺の愛すべき1690金幣のお嬢さん! 素直に……完全に……俺の口座でキラキラ輝く金貨に変わってくれ! お前を捕まえるのに10閃金幣以上のコストをかける前に!」


ブラッドは獰猛に笑い終えると、浮遊する色とりどりの水晶に、透明なエネルギー翅が生えた。


それらは光芒を放ち、流光溢彩のエネルギー弾と化し、ルクスに向けて一斉に射かかった。


あまりにも密集した攻撃に、ルクスは回避する暇もなかった。


彼女は体内のすべての影魔法を駆使し、黒影の層で自身を包んだ。晶石の砲弾が豪雨の如くルクスの周囲を轟撃した。


その密集した爆発は、まるで破滅の花火ショーのようだった。


周囲の樹木は一帯が燃える破片と化し、地面には深浅様々なクレーターが刻まれた。


『もう……耐えきれねえ……』


ルクスは、全力で防御しているにも関わらず、身体に絶え間ない激痛が走るのを感じた。


その影壁も、連続する爆発の中でますます薄くなり、いつ崩壊してもおかしくなかった。


「上出来だ! 計30粒の各色爆破水晶を発射、コストは……おおよそ紫幣しへい12枚! ケイン! やれ!」


ブラッドは爆発の覆滅効果に満足し、爆発が一瞬止んだ隙にケインを呼びつけた。


ルクスは全身の骨が砕けたような激痛に苛まれた。


防御を解き、頭を上げた瞬間、「悪獣」ケインの巨体が彼女に突進してくるのが見えた。


「うっ!」ルクスは急いで防ごうとした。


だが、影盾と巨爪が衝突した刹那、遠くの恵浴師ブラッドが危険な光を放つのを彼女は目にした。


そして、灼熱のエネルギー光束が数本、虚空を裂いて飛来した。ルクスは身をかわしたが、一本の光束が彼女の腰腹を直撃した。


「ジュッ!」と音を立て、彼女の脇腹に拳大の欠け口が焼き焦げた。


皮肉が焦げる悪臭が漂い、逸れたレーザーは彼女の背後の太い樹木の列を容易く貫き、撃たれた樹木は即座に燃え上がった。


その間も、ケインの振り下ろす巨大な利爪は止まらなかった。彼は猛然と利爪をルクスの足元の地面に突き刺し、刹那、森白の骨質尖刺が狂ったように生える荊棘の群れの如く、地下から飛び出した。


ルクスは後ろに跳び、辛うじて回避した。


だが、彼女の体勢が整わぬうちに、遠方のブラッドの攻撃が再び殺到した。


密集したレーザー光束と強大な威力の晶石爆弾が、再びルクスを中心に覆滅的な爆撃を繰り広げた。


このような遠距離の火力压制と凶狠な近接連携に、ルクスは抗えず、狂風中の落葉の如く吹き飛ばされ、巨大な古樹に激しく衝突し、無力に地面に滑り落ちた。


「ブッ――」ルクスは一大口の鮮血を吐き、頭の中でブーンと鳴る音が響いた。彼女の目と耳は一時的に視覚と聴覚を失い、全身が制御不能に激しく震えた。


癒花ゆか】が傷を癒す前に、極端な危険の直感が、意識のぼやけた縁で彼女を駆り立て、全力で身前に影盾を展開させた。


影盾が形成された瞬間、小さな手押し車ほどの大きさで、六対の透明なエネルギー翅を持つ巨大な水晶爆弾が、影盾に猛烈に叩きつけられた――盾に触れた刹那、巨大な水晶は眩い光芒を放った。


そして、恐怖の大爆発が起こり、爆発の衝撃波が四方に拡散した。


爆発の中心から20メートル内のすべての樹木は瞬時に粉砕され、気化し、消滅した!


50メートル内の灌木は焦黒の灰燼と化し、100メートル内の樹木も次々に燃え上がった。


火光が夜空の半分を赤く染めた。


この水晶爆弾は、鬱蒼とした原始林に、燃える広大な空地を切り開いた。


爆発の煙塵がゆっくりと晴れ、一人ぽつんと立つ人影が現れた――正確には、もはや人影とは呼べず、かろうじて人型を保つ、全身真っ黒な……炭だった。


それは、辛うじて生き延びたルクスだった。


彼女の全身の皮膚は完全に焼き焦げ、魔力は尽きて【癒花】すら召喚できなかった。


凝固した黒い焼傷組織の下から、暗紅色の血がゆっくり滲み出た。彼女の髪は高温で焼き尽くされ、焦黒の頭皮が露わになっていた。猟魔人から剥ぎ取った黒袍も、すでにボロボロに破れていた。


彼女の破れた衣から、橙黄色の水晶が地面に転がり落ちた――それは、青肌の男が彼女に託した「冒涜者の欠片ぼうとくしゃのかけら」だった。


「ハハハハ! 見事だ!」恵浴師ブラッドは大笑いした。


「この『六翼熾天使ろくよくしてんし』大水晶を含め、合計で……うむ……閃金幣8枚、紫幣10枚、藍銀貨らんぎんか20枚のコストだ! めっちゃお得だぜ! しかも小娘は俺の計算通り、攻撃を防いで……魔法道具を守った! これで大儲けだ!」


彼の指はなおもせわしなく動かし、金を数えるようだった。彼は精気溢れる様子で、先の猛烈な魔法爆撃による疲れを微塵も見せなかった。


「それに……あの『冒涜者の欠片』、やっぱり彼女が持ってた! ハハハ! 最高だ! ケイン! 早く! あの『1690閃金幣の値打ち』の小姐を捕まえてこい! これで……俺たちは本当に大金持ちだ!」


「御意、ブラッド様。」ケインは応じ、炭と化したルクスへ一歩一歩歩み寄った。彼の歩みはゆっくりと、まるで自宅の裏庭を散歩するようだった。


だがこの時、ルクスは彼らの対話を聞くこともできなかった。


彼女の脳は激痛以外、何も感じられなかった。


『俺……死ぬのか……』ルクスの意識が散漫になり始めた。


『ミティ……ごめん……お前を守れなかっただけじゃなく……俺自身もこんな早く死んじまうなんて……ミティが今の俺を見たら……きっと悲しむよな……それに……ミティの分までケーキを……一つも食えなかった……こんな死に方で……ミティに会ったら……なんて言えばいいんだ……?』


ルクスの思念は、死の縁で急速に閃いた。まるで時間がこの一刻、彼女のために止まったかのようだった。


突然、彼女は世界が異常に明るくなったのを感じた。まるで純粋な光の国に身を置くようだった。


『ここが……死後の世界か? 俺……やっとミティに会えるのか……』ルクスの意識に、解脱のような穏やかさが湧き上がった。


『なら……このまま死んじまうか……でも……俺……』


『……まだ……ちょっと悔しいんだよな……』


微かな念が、風中の残燭の如く、消えゆく意識の深奥で頑強に瞬いた。


彼女自身、何を悔やんでいるのかわからなかった。あの死んだ青肌の男の託した物を届けられなかったことか? それとも……ミティの最後の言葉「俺の分までケーキをたくさん食べて」と言われたのに、それを果たせなかったことか?


「その欠片を……喰え……」その時、空霊で、幽かな、だがどこか懐かしい少女の声が、ルクスの脳裏の奥深くに響いた。


『誰? 誰が喋ってる?』


ルクスは無意識に問いかけようとした。


『ミティ……お前か?』


だが現実では、彼女はただ口を開き、焼き潰された喉から「ホッホッ」と漏れる風の音を漏らし、完全な音節を発することはできなかった。


「その欠片を……喰え……」声が再び響き、今度はルクスがぼんやりと、細く白い手が地面の何かを指すのを見た。


今度こそ、ルクスは躊躇しなかった。


何も見えず、何も聞こえなかったが、彼女は全力で口を開き、声の導く方向へ噛みついた!


「ガリッ」


彼女は噛みついた。


青肌の男が託した、あの水晶の欠片を。


『呑噬……発動!』


意識が完全に闇に沈む最後の刹那、ルクスは心の咆哮を放った!


✦•······················•✦•······················•✦

みなさん、こんにちは!『呑噬の呪い ~乙女たちの叛天英雄譚~』をここまで読んでくれて、本当にありがとう!この物語を気に入ってくれたなら、ぜひコメントを残してください。みなさんの声は、私にとって大きな励みになります!


現在、私は日本で一緒に創作を進めてくれるパートナーを積極的に探しています。日本語の語感や軽小説のスタイルによりマッチするように作品を磨くだけでなく、イベント(コミケやライトノベル関連のコンテストなど)への参加やプロモーションもサポートしてほしいと思っています。私はこの小説の収益を公平に分けるつもりで、学生さんでも社会人の方でも、この物語に興味を持ってくれるなら、ぜひDMでご連絡ください!一緒にこの物語を日本で広めていきましょう!


改めて、読んでくれてありがとう!これからも応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ