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第14話 夜話の始まり:吟遊詩人と中毒の疑惑

「あなた、紫都しとから来たの?」シルヴィは考えながら言った。


「昔、この辺を通る商隊から聞いたことがあるよ。精霊の森の北に、紫都っていう都市があるって。多くの商隊がそこで中継するんだって。」


「北?」ルクスはその単語を捉えた。


「じゃあ、『演劇のえんげきのみやこ』はどこにあるか知ってる?」


「演劇の都……たしか……紫都のさらに北で、精霊の森からはもっと遠い……はず。」


「うん……そっか。」ルクスは少し無力そうに目を細めた。


「ルクス、」シルヴィはルクスの表情を見て、驚くべき推測に至ったようだった。


「まさか、ルクスの目的地って……」


「違う違う、そっちじゃないよ。たぶん、この森の方向で合ってるんだ。」


なにせ、あの幻のような手は確かにこの森を指していた。


だから、彼女の目標はここでいいはず。たぶん……おそらく……きっと……ね?


「じゃあ、なんでここに来たの?」


シルヴィは好奇心に目を輝かせて尋ねたが、すぐに失礼かもしれないと気づき、慌てて補足した。


「あ、プライバシーを詮索するつもりじゃないよ!ただ、ルクスの目的地がわかれば、道案内できるかなって思って。」


「実は……」ルクスは少しだけ本音を明かすことにした。「……私、どこに行くべきか、わかってないんだ。」


「え?目的地がないの?」シルヴィは驚いて目を丸くした。


「もしかして……ルクス、伝説の吟遊詩人?虚無と詩を追い求め、足のない鳥みたいに天涯を彷徨うの?」


「足のない鳥……って何?」ルクスは興味津々に尋ねた。


「伝説では、足のない鳥がいるんだよ。生まれた瞬間から飛び続け、始点も終点もない。疲れたら風に身を預けて休み、目覚めたらまた目的もなく飛び続ける。そして、足のない鳥が地に落ちる瞬間、それが命の終わりなんだって。」


「へえ、めっちゃ不思議……」


学のないルクスにとって、この世界の魅力は、未知の驚奇に満ちていることだった。


「でも……私は吟遊詩人でも、足のない鳥でもないよ。ただ、導かれてここに来ただけ。」


「それって、吟遊詩人が宿命を追う人生そのものじゃない?」シルヴィはさらに興奮し、目がキラキラした。


「運命の糸に引かれ、迷える人生の海で、最終の居場所――いや、墓地を求めるの?」


「ちょっと誤解してると思う。実はこうで……紫都が燃えて滅んだ時、私は逃げ出した。その後、重傷の青い肌の男に会って、そしたら……」


「紫都が……燃えた?!」シルヴィは信じられない表情で、ルクスの言葉を遮った。


「いつ?」


「たぶん……三ヶ月前くらい。」ルクスは答えた。


「三ヶ月前?!」シルヴィはさらに驚いた。


「でも……ここから紫都まで、歩いても三日しかかからないよ!」


「えっと……それは……その話は置いといて!」ルクスは三ヶ月も森で迷った話を絶対にしたくなかった。絶対に。


「大事なのは、その男が死ぬ前に、変な水晶の欠片をくれて、演劇の都に持ってくように言われたの。でもその後……なんか……」ルクスは言葉を整理し、曖昧に説明した。「……とにかく、幻みたいな手が現れて、この方向を指した。だから、こっちに来たんだ。」


「つまり……」シルヴィはルクスの話を聞き、納得した表情で真剣にまとめた。


「紫都が燃えた時の煙が毒で、ルクスがそれを吸って幻覚を見たんだね?毒キノコ食べた時みたいに?」


「そうじゃないと思うよ。」


ルクスは無力だった。


「今の私の目標は、そういう水晶の欠片をもっと集めること。」


「そっか……じゃあ、その欠片、見せてくれる?」


「えっと……それは無理。だって、その欠片はもう……」ルクスは自分の身体を指差した。「……私の体に吸収されちゃったから。」


「何?!」シルヴィはルクスの言葉を理解できず、ますます心配そうな顔になった。


「ルクス、まさか本当に毒煙を吸ったんじゃないよね?それじゃ大変だよ!明日、解毒剤探してくる!毒素って体に長く残ることもあるから……」


「本当に違うって!」ルクスは気づいた。


目の前のシルヴィは、成熟で知識豊富に見えるけど、妙なところで頑固だった。


「それは私の能力……というか……生まれつきの呪いみたいなもの。」ルクスは深呼吸し、この純粋で優しい精霊少女に秘密を打ち明ける決心をした。


「能力?……まさか――」


「うん。」ルクスは頷いた。この言葉を口にした後、何が起こるかわからない。夜は深まっていたが、シルヴィが受け入れられなければ、今夜ここを去ればいい。


「私は呪われのろわれもの。私の能力は『呑噬どんぜい』。その欠片はもう吸収した。」


「ルクス!」予想外に、シルヴィはルクスの両手を握った。


「聞いて、ルクス。」シルヴィはルクスの目を見つめ、言った。


「ここでは、絶対!絶対にこのことを他人に言っちゃダメ!絶対!他の精霊、誰にもこの能力のことを知られちゃダメ!」彼女の目は真剣だった。


「それに、ルクス、覚えてて。これは呪いなんかじゃない!ただ……生まれ持った特別な能力だよ。邪悪でも、恥ずかしいものでもない!」


「……うん。ありがとう、シルヴィ。」ルクスはシルヴィの信頼と庇護に心を動かされ、温かさと羞恥を感じた――ミティのもう一つの秘密を彼女に話せなかった、話す勇気がなかったから……


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