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星空のカンバス、時を超えたメッセージ

凛の夢を叶えるため、悠斗が企画した天文台「星見の丘」での個展「星空の絵画展〜アルビレオの約束、時を超えた奇跡〜」の準備は、星見町の人々の協力を得て、着々と進められていた。美咲は、天文台の展示スペースを、凛の絵で彩るために、奔走していた。翔太は、当初は悠斗に対して不信感を抱いていたものの、母、美月から聞かされた20年前の真実、そして、凛の病気を治すためには悠斗の研究が必要不可欠であることを知り、複雑な思いを抱えながらも、個展の準備に協力していた。


潮騒病院のスタッフたちも、陽菜や陽子を中心に、個展の成功のために、一丸となって動いていた。健太は、凛の体調を気にかけながらも、彼女の夢が実現することを、心から願っていた。


「凛ちゃん、個展の準備、順調みたいだよ。みんな、君のために、一生懸命頑張ってくれている」


健太は、凛の病室を訪れ、優しく語りかけた。


「健太先生…皆さん、本当に、ありがとうございます…」


凛は、ベッドの上で、感謝の言葉を述べた。彼女の顔には、以前のような生気が戻りつつあった。悠斗がアメリカから送ってくれた星空の写真や、励ましのメッセージが、彼女の心を支えていたのだ。


「悠斗君も、アメリカで頑張っている。きっと、凛ちゃんの病気を治すための、手がかりを見つけてくれるはずだ」


健太は、悠斗から送られてきたメールを、凛に見せた。そこには、凛の遺伝子異常と、悠斗の過去の研究との関連性について、アレックスと協力して調査を進めていること、そして、必ず凛を救うという、強い決意が綴られていた。


「悠斗さん…」


凛は、悠斗の言葉に、目頭を熱くした。


「さあ、凛ちゃんも、個展に向けて、体調を整えないとね。無理は禁物だけど、できる範囲で、準備を手伝ってみたらどうかな?」


健太は、凛を励ますように、優しく微笑んだ。


「はい、先生。私、頑張ります」


凛は、力強く頷いた。彼女の瞳には、希望の光が灯っていた。


数日後、悠斗から、アレックスを通じて、健太に連絡が入った。


「健太、重要な情報が得られた。凛さんの遺伝子異常の原因が、判明するかもしれない」


アレックスは、電話口で、興奮気味に語った。


「本当ですか!?それで、原因は…?」


「時間軸の歪みだ。凛さんの遺伝子情報には、別の時間軸から混入したとしか考えられない、特殊な配列が確認された。そして、その配列は、かつてユウトが研究していた、エリザベス・ミラーのものと、高い確率で一致する」


「別の時間軸…エリザベス…」


健太は、アレックスの言葉に、衝撃を受けた。


「ああ。そして、その歪みを修正する、理論上の方法も、見つかった。ユウトの父、ヨウイチ・サクライが遺した、『アルビレオ計画』のデータが、大きなヒントになったんだ」


「アルビレオ計画…?」


「ああ。ヨウイチは、タイムリープ実験の失敗で、別の時間軸に飛ばされたエリザベスを、元の時間軸に戻すための研究を、密かに進めていたんだ。そして、その研究データが、凛さんの治療に、応用できる可能性がある」


「そんな…」


「ユウトは、今、その治療法を、現実のものにするために、全力を尽くしている。近いうちに、具体的な方法を、君たちに伝えることができるはずだ」


アレックスは、力強く言った。


「分かりました。希望を、信じます」


健太は、電話を切り、深く息をついた。凛を救うための、希望の光が、ようやく見えてきたのだ。


一方、天文台では、陽菜が、凛の絵の展示作業を手伝っていた。彼女は、末期がんを患いながらも、凛の夢を叶えるために、精一杯の力を尽くしていた。


「凛ちゃん、この絵、本当に素敵ね。まるで、本物の星空みたい…」


陽菜は、凛が描いた、アルビレオの絵を、うっとりと眺めながら言った。


「陽菜さん、ありがとうございます。この絵は、私にとって、特別な一枚なんです」


凛は、照れくさそうに微笑んだ。


「特別な一枚…?どうして?」


「この絵には、悠斗さんへの想いが、たくさん詰まっているんです。悠斗さん、アルビレオが大好きなんです。二つの星が寄り添うように輝いているけど、お互いの個性を失わず、美しく存在している。まるで、理想的な関係みたいですって…。私、悠斗さんと一緒に、いつか本当のアルビレオを見たい…」


凛は、遠くを見つめながら、静かに語った。


「凛ちゃん…」


陽菜は、凛の切ない想いに、胸が締め付けられる思いだった。


「陽菜さんは、悠斗さんに、ちゃんと想いを伝えましたか…?」


凛は、陽菜に、尋ねた。


「私…?私は、もう、そんな歳じゃないわ…」


陽菜は、照れくさそうに笑った。


「そんなこと、ないですよ。陽菜さんは、とっても、魅力的です。それに、悠斗さん、きっと、陽菜さんのこと、大切に思っていますよ」


「ありがとう、凛ちゃん。でも、私は、今のままで十分幸せよ。凛ちゃんと、こうして、一緒にいられるだけで…」


陽菜は、凛の手を、優しく握りしめた。


「陽菜さん…」


凛は、陽菜の温もりに、涙が溢れそうになった。


「だから、凛ちゃんも、諦めないで。悠斗さんに、ちゃんと、想いを伝えるのよ。後悔しないように…」


陽菜は、凛の瞳を、真っ直ぐに見つめながら言った。


「はい…私、悠斗さんに、ちゃんと伝えます。必ず…」


凛は、力強く頷いた。


その夜、美咲は、悠斗の父、陽一の研究室で、古い研究ノートを、改めて読み返していた。そこには、陽一が残した、「アルビレオ計画」に関する、詳細な記録が記されていた。


「ヨウイチさん…あなたは、どこまで、真実に近づいていたのですか…?」


美咲は、ノートを抱きしめながら、呟いた。彼女は、陽一の遺志を継ぎ、悠斗を支え、そして、凛を救いたいと、強く願っていた。


その時、美咲の目に、ある記述が飛び込んできた。


「『時間軸の歪みを修正するためには、対象者の強い意志と、時を超えた想いが、必要不可欠である』…?」


美咲は、その一文を、何度も読み返した。時を超えた想い…それは、一体、何を意味するのだろうか?


そして、美咲は、もう一つの記述に、気づいた。


「『アルビレオの輝きが、最も強まる時、時空の扉が開かれる』…?」


美咲は、天文台の観測記録を調べ、アルビレオの輝きが、極大を迎える日を特定した。その日は、奇しくも、「星空の絵画展」の開催日と、一致していたのだ。


「まさか…そんなことが…」


美咲は、偶然とは思えない一致に、深い畏怖の念を抱いた。そして、彼女は、このことを、悠斗に伝えるべきかどうか、葛藤していた。もし、これが真実ならば、凛の運命、そして、悠斗の過去が、大きく動くことになるかもしれない…。

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