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暴かれた真実、過去への扉

美月の口から語られた真実は、翔太にとって、衝撃的なものだった。


「20年前…あの天文台で、時間に関する実験が行われていたっていうのか…?」


翔太は、美月の言葉を、すぐには信じることができなかった。


「ええ。桜井博士は、時間移動、特に、タイムリープの実現可能性について、研究されていたの」


美月は、遠い過去を思い出すように、目を細めながら語った。


「タイムリープ…そんなことが、本当に…」


「私も、最初は信じられなかった。でも、桜井博士は、本気だった。彼は、時間とは、一方通行の流れではなく、自由に移動できるものだと、信じていたの」


「でも、そんなこと、できるわけないじゃないか…」


「ええ、普通はね。でも、桜井博士は、それを可能にするための、理論を構築していた。そして、それを実証するために、極秘裏に、実験装置を開発していたの」


「その実験装置が、あの天文台に…?」


「ええ。そして、20年前のあの日…実験は、決行された」


美月は、そこで言葉を切り、深く息をついた。


「その実験…どうなったんだ…?」


翔太は、固唾を呑んで、美月の言葉を待った。


「実験は…失敗に終わったわ。制御不能なエネルギーの暴走…そして、強い閃光…私は、遠くから、その光を見たの…」


美月は、当時の光景を思い出したのか、体を震わせた。


「その光…姉さんも、見ていたんだ…」


翔太は、幼い頃、凛から聞いた、不思議な光の話を思い出した。


「ええ。あの時、凛は、まだ、幼かった。でも、あの光は、凛の体に、何らかの影響を与えてしまったのかもしれない…」


「そんな…じゃあ、姉さんの病気は…」


「ええ。桜井博士の実験が、原因である可能性は、否定できないわ…」


美月の言葉に、翔太は、愕然とした。凛の病気が、20年前の実験と、関係がある…?そんなことが、あっていいはずがない…。


「どうして、今まで、黙っていたんだ…?」


翔太は、怒りと悲しみが混ざった声で、美月に問いただした。


「…桜井博士は、実験の後、行方不明になったの。そして、このことは、誰にも言わないようにって…」


「父さんも、知っていたのか…?」


「ええ。でも、父さんは、凛のことを、ずっと気にかけてくれていた。凛の病気が、自分の研究のせいかもしれないって、ずっと、苦しんでいたわ…」


美月は、涙を浮かべながら、語った。


「そんな…」


翔太は、言葉を失った。凛の病気、そして、自分たちの家族が背負ってきた、重い十字架…。彼は、その事実に、打ちのめされていた。


「でも、どうして、今になって、話してくれたんだ…?」


「…凛の病状が悪化するにつれ、このまま、真実を隠し通すことに、耐えられなくなったの。それに…桜井博士の息子さん、悠斗君が、この町に戻ってきたことも、きっかけの一つだったわ…」


「悠斗さんが…?」


「ええ。彼は、お父様の研究を、継ぐために、戻ってきたのかもしれない。そして、もしかしたら、凛の病気を治すための、手がかりを、見つけてくれるかもしれない…」


美月は、かすかな希望を胸に、悠斗の名を口にした。


「でも、母さん。悠斗さんは、姉さんの病気のことを知って、アメリカに戻ってしまったんだぞ…」


翔太は、悠斗への不信感を、拭い去ることができなかった。


「いいえ、悠斗君は、きっと、何か、考えがあるはずよ。彼は、お父様と同じ、強い意志を持った人だわ。私は、彼を信じたい…」


美月は、そう言うと、静かに目を閉じた。翔太は、母親の言葉に、複雑な思いを抱えながらも、一縷の望みを、悠斗に託すことにした。


一方、アメリカに到着した悠斗は、アレックスの出迎えを受け、彼の研究室へと向かった。


「ユウト、無事でよかった。しかし、一刻を争う事態だ」


アレックスは、深刻な表情で、悠斗に言った。


「ああ、分かっている。それで、盗まれたデータは、特定できたのか?」


「ああ。主に、時間場における生体反応と、タイムリープが遺伝子に与える影響に関するデータだ。特に、エリザベスのデータが、狙われた可能性が高い」


「エリザベスのデータ…?」


悠斗は、アレックスの言葉に、胸騒ぎを覚えた。


「ああ。彼女の遺伝子情報は、タイムリープ実験の、重要な鍵を握っている可能性がある。そのデータが、悪用されれば、取り返しのつかないことになるぞ」


「一体、誰が、何のために…」


「それは、まだ分からない。しかし、今回の事件、ただのデータ窃盗ではない。背後に、巨大な組織の影が、ちらついている…」


アレックスは、そう言いながら、研究室の奥にある、大型のコンピューターを起動させた。


「これは…?」


「盗まれたデータの一部を、復元したものだ。見てくれ、この遺伝子配列…」


アレックスは、モニターに表示された、複雑な遺伝子配列を指差した。


「これは…エリザベスの遺伝子情報…?」


「ああ。そして、この部分を見てくれ。通常ではあり得ない、特殊な配列が、確認できる」


「これは…」


悠斗は、その配列を見て、息を呑んだ。それは、健太から見せられた、凛の遺伝子異常と、酷似していたのだ。


「やはり、そうだったのか…」


悠斗は、確信した。凛の病気は、自分の過去の研究、そして、エリザベスの失踪と、深く関わっている。


「ユウト、君の推測は、正しいのかもしれない。凛さんの遺伝子異常は、タイムリープ実験の影響で、別の時間軸から混入した、エリザベスの遺伝子情報が、原因である可能性が高い」


「どうすれば、凛さんを救えるんだ…?」


「時間軸を超えて、エリザベスの遺伝子情報を特定し、凛さんの遺伝子情報から、それを取り除く必要がある。しかし、それは、理論上のものであり、実現できるかどうかは、未知数だ」


「それでも、やるしかない。凛さんを救うためなら、どんなことでもする」


悠斗は、強い決意を胸に、アレックスに言った。


「ユウト…」


「時間がない。早速、研究を始めよう」


悠斗は、そう言うと、コンピューターに向かい、盗まれたデータの解析を始めた。


その頃、日本では、健太が、佐々木から、驚くべき事実を知らされていた。


「佐々木先生、それは、本当なんですか…?」


健太は、佐々木の言葉に、耳を疑った。


「ええ。先ほど、アメリカの学会から、連絡があったの。桜井悠斗の、過去の研究に関する、緊急調査依頼よ」


「悠斗の…?」


「ええ。彼の研究データが盗まれるという、事件が起こったらしいの。そして、そのデータが、凛さんの病気と、関係している可能性があると…」


「そんな…」


健太は、愕然とした。悠斗の研究データが盗まれた…?そして、それが、凛の病気と関係している…?


「詳しいことは、まだ分からないわ。でも、悠斗君が、アメリカに戻ったのは、そのためだったのかもしれないわね…」


「悠斗…」


健太は、悠斗の行動の真意を、ようやく理解した。彼は、凛を救うために、一人、戦っていたのだ。


「佐々木先生、悠斗と連絡を取る方法は、ないでしょうか?」


「それが、難しいのよ。彼は、今、厳戒態勢の中で、研究を進めているはずだから…」


「そんな…」


健太は、無力感に苛まれた。自分は、医者でありながら、凛の病気の原因すら、突き止めることができない。そして、悠斗は、遠いアメリカで、一人、戦っている…。


「でも、希望はあるわ」


佐々木は、健太の肩に、そっと手を置いた。


「希望…ですか?」


「ええ。悠斗君の研究、そして、凛さんの未来…全ては、時間軸を超えた、奇跡に、託されているのかもしれないわ…」


佐々木の言葉は、健太の心に、一筋の光を灯した。そうだ、まだ、希望はある。悠斗を信じよう。そして、自分にできることを、精一杯やろう。


健太は、決意を新たに、凛の病室へと向かった。彼の瞳には、強い意志の光が、宿っていた。

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