第18話 衝撃の再会
あれからシャルはなんと5時間も私の事について語っていた。
シュウヘイも全く知らないものだから気になったら質問するので余計長くなり、私は私でさえ覚えてない事を聞かれ思いっきり間違えるなどをしてしまったりと…。
正直途中から半分寝ていたせいか後半はシャルがいつの私の話をしていたのか知らない。
そのせいかシャルからは「布教の途中だったのにー!」と怒られた。
いや、本人だから、何度も思うけど…というか布教って何?
…というわけで外は暗くなり時間は19時。
夕飯を食べる時間になった。
一ヶ月間の午後は自由時間とあるように、恐らく夕飯と風呂は個人の自由で何時でもいいんだろう。
私とシャルは1階の食堂へ行ったが、シュウヘイは先に風呂に入るとの事でここで別れた。
なんでも「夕飯の後は眠くなる」らしい。
夜の食堂は昼とは違い、ボリューム満点の丼飯から軽めの定食、昼食でも見かけた首都ラーメンなど、昼に比べて多種多様である。
私もシャルも、午後は特に何もしていないので、軽めの定食で済ませた。
シャルはこの後すぐ風呂に入るとの事だったが、私は一人で入りたかったので恐らく誰も入ってないであろう22時半頃に入ると伝えた。
まあシャルも寝間着を取りに私と一緒に部屋に戻ってきたが。
今日はもうシャルと会わないだろうと思い互いにおやすみと言っておいた。
そういえばクローゼット内を何も確認してなかったがサイズとか大丈夫なんだろうか。
それは心配ご無用だったようで、中を確認したら男性用から女性用までサイズも大きいものから小さなものまでしっかり揃えられていた。
もう何もしないし、先に着替えておくか。
2時間後、長い風呂からシュウヘイが戻ってきた。
どうやらそのまま直接夕飯も食べたとのことだった。
シュウヘイは明日以降、午後は休憩を挟みながら2時間ずつ自主練を行うらしい。
まあ拳主体の攻撃となると、単調な攻撃パターン含め様々だろうしな。
どうやら講師に技術的な事も多少教えてもらえるらしい。
槍術もそうだと一番いいんですけどね…。
あの感じだと一週間くらいは様子見が続きそうだしなぁ…。
そんなこんなを話しているうちに時計は22時半を指していた。
さて、風呂に行くか。
風呂は兵士寮の10階、男性、女性共に大浴場がある。
この大浴場を使用するのは一番下っ端の三等兵から中佐まで。
確か大佐以上で個人の部屋に浴室が追加されるんだったかな?
目論見通りこの時間にもなると人は少ない。
まだちらほらいるが、もうほとんどが入り終わった者で、大浴場の中も私含めて3人くらいしかいなかった。
私はその長い髪のせいで洗うのに多少時間がかかる、がもう慣れたものだ。
大浴場に設置された時計が曇りながらも23時付近を指している。
ここからは湯船に浸かり、ゆっくりと疲れを取る。
この時間が、この一人の時が、最高に落ち着く。
「は~…」
本当に生き返るよ。
「隣、いいかい?」
「ああ、どうぞ」
珍しいな、こんな時間に。
少なくとも少将時代には私より遅い人は居なかったが、まあ人それぞれか。
それより随分高い声の人だったな。
どれ、どんな人か少しだけ見てみるか。
!!!?
今、見てはいけないものを見た気がした。
いや、今この場において見えたらおかしいものだった。
見間違いか…?
今…"π"が見えた気がしたが…。
しかも結構デカいのが…。
いや、見間違いの可能性がある。
もう一度確認しよう。
……!!。
うん、間違いない。
やはり"π"がある!!
何故だ…?
いや、人を疑う前にまずは自身の行動を振り返ろう。
えっと?男性大浴場に入ったのは間違いない、のれんも〈男湯〉としっかり書いてあった。
脱衣所はどうだ?
他に居た人はみな男性だった、それも覚えてる。
大浴場の中も同様だ…。
じゃあ何故今横に"π"があるんだ!!?
"π"について様々な理由と考察をしていたところで、横の人がこう話しかけてきた。
「久しぶりだね、バースリー・クラン君」
!?
なんだと…!?
何故私の事を知っている?
いや、なんで私がバースリー・クランだと…。
「…人を間違えてませんか?」
「じゃあこう呼べばいいかな?ホリージョン・レイラー君?」
な…何故私の本名を…。
少将時代から私の本名を知っているのはシュネルを含めても僅か数人だ。
しかしこの人に私は会った事が無い。
間違いなく私より若いであろう声…。
横目でしか見てないが恐らく見た目でも…というか肌スベスベじゃないですか…。
「…何故私の名前を?」
知っている以上小細工は出来ない。
ならば理由を聞き出すしかない。
「教え子の名前を忘れるわけないだろう?」
教え子…?
え、もしかしてこの人私より年上??
じゃあ人間じゃないのか?
「大学からの付き合いだからなぁ…これで思い出せんか?」
エイミー帝国私立大学時代から…?
つまり私の親友も知ってる人…しかも教授で…。
…!!
馬鹿な…あの人は人間で男だし、それに年齢も既に80歳を超えているはず…。
いや、でも聞いてみるしかない!
「もしかして…ロッキー・コンステレーション教授ですか…?」
彼女は微笑んで、
「フフッ、ようやく思い出してくれたか。とても嬉しいよ、ホリージョン君」
改めて彼女を見た、見てしまった。
髪は薄く長い銀髪、肌はスベスベで、どうやってもそこに存在する大きな"π"。
とても80歳を超えた人とは思えない若さと美しさに溢れている。
どこか…若い頃の私にそっくりな見た目をしていた…。




