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第17話 バースリー・クラン


ホリーが誰かわかんない『K.S』ってのに呼び出されて行ってしまった。

というか何も書かれてないけどどこに呼び出されたか分かってたのかなぁ…。

反応を見てた感じ分かってたっぽいけど。

「なあ、バースリー・クランについて教えてくれないか?」

これまた唐突に。

「いいけど、なんで?」

「いや、お前が常識だって言うからよ。この軍に入ったからには知っといた方がいいんだろ?」

まあ、確かにそうではあるね。

今はもう時が経ったから少ないけど、少し前まではバースリー・クラン少将に憧れて軍に入った人も大勢いたみたいだし。

本当に…伝説の人だもん。

「いいよ、教えてあげる」



バースリー・クラン少将。

妹のシュネル・クランと共にニッケラス地方出身。

しかし、ニッケラス地方に存在した町はドザーナ王国との戦いに巻き込まれ壊滅。

両親共に、その場で死亡している。

先代国王エイミー04世54年に当時としては高齢の25歳で入隊。

僅か2年と6か月でエイミー帝国軍最速で将軍(少将)へ昇進している。

この記録は現在までで一度も破られていない。


「…つまり俺の年齢の時点で既に将軍だったってわけか」

まだほんの一部分しか話してないのにもう驚いてるし。

こんなもんで驚いてちゃダメなんだけどなー。


少将へ昇進後、彼は5年連続で中将昇進を断り続ける、彼が30歳を過ぎた頃、『伝説の少将』と呼ばれ始める。

誰が最初にそう呼んだかは不明だが、『帝国の守り神』との異名が付いた。

エイミー帝国軍では中将以上が軍を率いる事になっているが、『伝説の称号を持つ者』はたとえ中将で無くても軍を率いる事が可能である。

彼の"伝説エピソード"をいくつか取り上げる。

彼は『伝説の少将』と呼ばれる以前から、エイミー05世05年に退役するまでの13年間の間、誰一人として部下を死なせていない。

そう、"一人も"死なせていないのである。

その戦歴も凄まじいもので、彼が少将になる前には『エルフの森虐殺戦争』において大人数のエルフを助け、その戦いの勝利に大きく貢献している。

『伝説の少将』となって以降、退役するまでの8年間は"無敗"である。

この8年間はドザーナ王国との戦いが勃発した時期であり、彼が居なければエイミー帝国は滅んでいたと言わしめるほど苛烈な戦いが多かった。

彼がずっと"無敗"だった理由の一つとして、誰にも真似できない卓越した【勘による予想】が出来た事である。

自身の軍に対し、敵国の軍が倍以上であっても、その【勘】を武器に誰一人死なせず、僅か一日で完勝したという逸話も残っている。

また彼のメイン武器は剣となっていたものの、剣以外に槍、矛までほぼ同レベルに扱う事が出来た。



「…まあこんなもんかなぁ」

「………」

シュウヘイは大口開けてポカーンとしてる。

その反応は予想通りだったけどね。

シャルもバースリー少将の大ファンでもあるから本当はもっと布教したいところだけど…。

「し、質問いいか?」

「なんでもどうぞ!」

多分答えられない事は無いかな~。

「なんで中将昇進を5回も断ったんだ?」

やっぱりそれ聞くと思った。

「中将以上になると敵国の警戒とかで遠征をよくするの。それで自由を奪われる事になりやすいから断ってたんだって」

何より家族との時間を大切にしたいからとも聞いた。

「そういえばその8年間は俺も覚えがあるな。俺はあまり新聞とか見なかったから詳しくねーが、ウチの親が「劣勢なのによく勝った!」って何度も喜んでるのを見てたからな」

シャルも幼かった頃だけどよく覚えてる。

シャル達が住んでる所にも何回かドザーナ王国軍が攻めてきて、どうにもならないって思った時に助けてくれた。

その時掛けられた言葉を今でも覚えてる。


『お迎えに上がりました。美しい小さなお嬢さん』


初恋ってああいう事を言うんだろうなぁ。

もう叶わないけど。

「…つまり無敵の人だったってわけだな。悪い面とか無かったのか?」


実はこれはこれで面白いエピソードが残ってる。

ただ聞いた話だから本当かどうかわからないけど。

さっきも言った通りメインの剣と槍、矛が普通以上に扱えたのに対して、魔法はからっきしで、当時の魔法科特務講師に「魔法は一生覚えない方がいい」とまで言われたらしい。

また実は不器用だったという話も残っていて、料理が全てにおいてド下手だったらしい。


「それでいて人間らしいそのエピソード普通におもしろいな…」

「でしょ?」

これでシュウヘイもバースリー少将推しになってくれないかなぁ…。

その時、部屋の扉が開く。


案外早かった、ホリーが帰ってきた。

「あれ、何してたの?」

「おう、バースリー少将についてシャルロットに聞いてたぜ!やっぱ帝国軍に居るんだったら知っておく必要があると思ってな!」

え、いやそれはそれは…。

私その場に居なくてよかったというか、それとも私の事がまた一人に知られてしまったというか。

そのまま知らなくてもよかったのに、別に大した事してないと思うし…。

「ホリーは当然知ってるでしょ?」

何故かすごい食い気味に来るシャルロットさん。

もしかして君私のファンだったりする?

「う、うん。もちろん」

というか本人なので知ってるも何もない。

まあ覚えてない事も何個かあるけど…。

しかしこの後もシャルのバースリー少将語りは続き、シュウヘイも乗り気だった為止める事も出来ず…。

一応聞いてるフリはしてたがあまりに自分自身の事を詳細に語り尽くす為、恥ずかしすぎて脳を通らず、耳から耳へ話が通り抜けていった。


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