第15話 五色貴族
「いや、シュウヘイが謝る事じゃないよ」
事実、シュウヘイは当時まだ八歳だし、まったく関係が無い。
「でもよ…親もそれで死んでるんだろ?」
「いや、親はその3年前だから…23年前か。だから関係ないから大丈夫だ」
それにもう私も48歳になるし、忘れるわけじゃないけど折り合いをつけれる歳になった。
今こうして生きてるからもうあまり気にしてはいない。
むしろ一度軍に入った事で『そういう世界』に居る事が分かったというのもあるが…。
「そうか…」
「シュウヘイやシャルはどうなんだ?兄弟とかいるのか?」
私はシュネル以外居なかったからな。
実の兄弟も居なかった。
「シャルはお姉ちゃんが居るよー」
「俺も弟が二人、妹が一人いるぜ!」
私はシュネルの事どうやって言いましょうかね…。
このまま黙っておけば何も聞かれないかな?
というかさっきので家族関係の事は聞かれにくいからある意味助かるか。
「そうか。それで、シャルは今まで何してたんだ?」
なんとなく分かってはいるが、一応聞いておく。
「シャルは去年まで大学生だったよ」
「大学?お前今24だろ?留年したのか?」
「しつれーだなー!脳筋はー!」
「脳筋は脳筋にとって誉め言葉だぜ?」
脳筋らしからぬ見事な受け流しじゃないですか?シュウヘイさん。
しかし留年ではないとなるとやはり…。
「他国留学とか?」
「ううん、希望大学入試の勉強で一年浪人しただけ」
おっと、そうくるか。
一年間丸々勉強に費やせる時間とお金があるということは…。
ましてや姉が居る…なるほど、なんとなく読めてきたな。
「なるほど、という事は金持ちだね?」
「かもねー!」
と、屈託のない笑顔でそう返してきた。
これが私の探りに対してそれを全く悟らせない為なのか。
それとも単に気付いていないだけなのかわからないが…。
「なんだぁ?首都出身のお嬢様か~?」
ニヤニヤと、半分からかいのように聞こえるようにシュウヘイは言ったが、
「ひ・み・つー!」
とまあこれも裏表の無い、もしくはそう見えない笑顔で返した。
「まっ、いつか教えるよ!」
ここで私がフォローしておくか。
「確かに無理に話す必要は無いよ。私みたいに家族を失ってることだってあるし、
まあシャルはそうじゃなさそうだけどね」
彼女は何も言わなかったが、笑顔だけで返した。
なるほど、やはり面白いな。
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「今年の徴兵は何人だ?」
跪き、面を上げる事も許されない圧倒的な威圧を放つ。
私だけが面を上げる事を許され、そこに王に相応しい薄い鼠色の髭。
ドザーナ王国の国王である、レンドルク・ヴァン・ドザーナ様がそこに、いつもの玉座に座られていた。
「今年は3000人でございます」
無論、徴兵とは強制徴兵の事。
我が国だけではなく、我が国の支配下にあるデードラード国からの徴兵も含めている。
微少ではあるが、人間では無い彼らの潜在能力は人間の遥か上を行くという。
「何故軍は、エイミー帝国を攻撃せぬ?」
この国にも軍のトップ、総大指令が存在する。
しかし、総大指令よりもさらに上がこの軍、いや国に存在している。
「現在軍の駒は『ローゼ・FS家』が握っております」
「ふむ…。『レッド・DH家』ではないのか?」
今年で300歳を超える国王も、当然私も、やはりあの事件を忘れる事が出来ていない。
王国、いや王族を含めた血で血を洗った内戦だ。
「国王様、『レッド・DH家』はもう…」
もうあの事件も100年前だが、国王の脳裏にも、記憶にも、まだ新しい。
「そうであったな。彼らは優秀であったが、もう失ってしまった」
彼らは人間では無かった。
だがそれがドザーナ王国を長く支える要因でもあった。
しかし彼らは失ってしまった。
「内政の駒はどこだ?」
王国軍、内政、外政…この三つの駒を争い、いまだ終わらない権力争いを続けながら握っている。
「内政は、『グレイ・EG家』でございます」
内政も王国軍も、権力争いの真っ只中だ。
国王が何もしないのもあるが、この争いを止める事は誰にもできないだろう。
外政はここ200年ほど『ホワイト・GS家』が握っている。
外政などという、扱いづらく、小難しい事はエリートが多い『ホワイト・GS家』の他にはいない。
しかし彼らもまた、外政だけでは物足らないのか、王国軍にも手を出していると最近聞いている。
「駒を握っていないのは『パープル・TR家』か」
この王族に仕える、もしくは仕えていた五つの一家。
王族も、王国の民も、彼らをこう呼んだ。
『五色貴族』と。
…どうやら国王様は正気に戻られたようで、
「『ローゼ・FS家』に伝えよ。しばらく待てと」
そう、言った。
「…承知致しました。国王様」
嗚呼、そう…まだ我らは今ではない。




