第14話 帝国軍の規則
さて、ここからどうしようかと思った。
他の変わった場所を探してもよかったが、余計なところを歩いて知り合いに会ってもめんどくさいので、まだ部屋を出て30分ぐらいしか経ってないが戻る事にする。
この兵士寮は13階建てだが、当然上へは階段しかない。
だから他の新兵の皆は階段近くの部屋を確保していたんだが…。
私は部屋の鍵は閉めてなかったが…まあ多分大丈夫だろう。
そんな大した物もお金も持ってなかったし。
入るとシュウヘイは起きていた。
「…なんだ、起きてたのか?」
「いや~、起きてたっていうか起こされたっていうかな~」
「起こされた?」
この状況で一体誰に起こされたというのだろうか。
「ジェイミー大佐からこれの説明をしてくれって頼まれたんだよ」
シュウヘイの視線の先、机の上に小さな携帯らしきものが置いてある。
一度ヘンデリュート国で見た事あるが、帝国では初めてだな。
「これで電話が出来るんだってよ。こんな小さいのに便利だよなー」
電話か…。
確か帝国軍でしか支給されないんだったな。
昔は無線機だったがこうも小さなものになるとは…。
これなら軍服のポケットに入る大きさだし、やはり10年という月日は長いものだ。
「えっと…これで登録できたか?」
どうやらこの携帯は電話番号で登録するのではなく、携帯機器のシリアルナンバーを入力する事で登録されるらしい。
シュウヘイがやってくれましたありがとうございます。
それともう一つ、規則についての紙が置いてある。
えーっと…?
【来月にあるイベントまでの規則】と一番上に書いてあるな。
就寝時間は24時で、起床時間は7時か。
午前中は各メイン武器の稽古場で稽古。
休憩時間等は稽古講師によると…。
昼ご飯休憩は12時から13時までで、13時以降は自主練及び自由時間か。
また夕飯や風呂の時間は個人に任せる。
そして、この携帯を持ち歩く事。
…だそうだ。
あ、あと一番下に本拠地より外への外出は禁止する…と。
【来月にあるイベント】とは恐らくシュネルが言っていた一ヶ月後にあるイベントの事で、新人歓迎大会の事だろう。
今年の新人は私含めて100人ちょっとだった。
その100人ちょっとのうち、総司令を含む上層部が期待をかけた20人くらいを選別して一対一で戦わせるというもの、だったかな?
まあ私が選ばれるのはジェイミー大佐達の反応を見るに明らかか…。
「二人で何してんの~?エロ本でも読んでる~?」
「うお!?びっくりしたシャルロットかよ…」
急に後ろから聞こえた声の主はシャルだった。
…やはり今回もビックリして声が出なかったが。
「鍵は閉めとかないとダメだぞ~?」
そういえば確かに閉めてなかったな、という事は私のせいか。
「別の人の部屋に入ってもいいのか?」
「なんかジェイミー大佐曰く就寝時間に寝れるならいいんだってさ」
今まだ13時半とかですよ?
あと10時間くらいあるんですがそれは…。
「二人のシリアルナンバー見せて~」
と、シャルは勝手に私達の携帯を取り、慣れた手で入力している。
「はい、おっけーだよ!」
「はえーな…」
私自身も昨日の夜からあのトレーニングをしていた。
身体そのものを完全に休めるという事はしていなかった為、午後は丸々休む事にする。
しかし朝七時か、農業やってた時は起きる時間なんて五時とかだったから助かるな。
今日はともかく、普段は3~5時間程度自主練をしてその後は休憩でいいだろう。
恐らく紙に書いてあるこれらの規則は、帝国軍に慣れる為の準備期間だ。
新人歓迎大会後は少尉以上の将校のもとへ配属が決まる。
それ以降は…将校によって稽古や自主練の時間などはバラバラだからわからんが…。
さらに配属場所によってはいきなり実戦の可能性もある。
つまりこの一ヶ月でどれだけ自分自身で調整できるか、もっとも私は10年前の勘を取り戻せるかどうかだが。
「そういえば二人はここに来る前は何してたんだ?」
…今とこれからをいろいろ考えていた時、シュウヘイが突拍子にそんな事を聞いてきた。
「私はウィズベリーで農家をやっていたよ。家族が残って続けてるから、辞めたわけじゃないけどね」
「ウィズベリーって確か果実がウマいって聞くぜ。水道代がタダなんだろ?」
「えっ!?そうなの!?いーなー」
エイミー帝国では地方ごとに盛んな産業物に対する補助金として、ウィズベリー地方ではミカンやレモン等の果実関係が盛んな事から水道代がタダである。
そんなシュウヘイの出身地であるサーモンド地方も生活用品でも使うガラスなどの製造が盛んである為、電気代とガス代がそれぞれ半額である。
その他、首都や他の地方でも電気代がタダだったり全部が半額だったりと…いろいろだ。
「それにウィズベリーは基本冬でも暖冬だっていうから、電気代もほとんど掛かってねえって聞くぜ」
案外詳しいじゃないですかシュウヘイさん。
「確かに、よく掛かってるのは食費くらいかな」
果物はほぼタダに近いけどね。
「という事は、出身もウィズベリーか?」
そう聞いてくると思ったが…まあ素直に答えるか。
「いや、私は元々ニッケラスの出身だよ」
「あーそうか…。すまん…」
シャルは知らないのかポカンとしていたが、シュウヘイが謝るのも無理はない。
私とシュネルの出身地であるニッケラス地方の町は、20年前にドザーナ王国軍に攻め込まれ壊滅し、ほとんどの住民が虐殺されたのだから。




