第13話 懐かしの罰小屋
昼食後、ジェイミー大佐から私達新人の部屋へ案内すると言われた。
前にも話した通りこの中央棟はエイミー帝国首都で一番高い建物であり、なんと15階建てである。
長方形みたいなシンプル型ではなく、元々5階建てだった建物に幾度となく増築を繰り返した建物の為、映画で登場しそうな歪な形をしている。
特に出っ張っているのが7階で、魔法科学科の研究所があるのが特徴だ。
兵士寮の、特に階級の低い者のほとんどは11階より上が基本となっている。
今回私達が案内されたのは12階だった。
「えー部屋なんだが、特に決まりはない。お前ら好きな部屋使っていいぞ」
との事だった。
ならお言葉に甘えて一番端っこの部屋を使わせてもらう。
シュウヘイやシャルにも一応どこがいいか聞いたが特に決まってないとの事なので、私が意見した端っこの部屋ということになった。
「あー、一つ言い忘れた。一部屋につきベッドが二つある、一人一部屋でもいいし、二人でもいいぞ」
と端っこに向かってる最中に後ろからそう聞こえた。
他の皆はここが12階という事もあり階段近くの部屋を選ぶ者が多い中、私達3人は端っこへと向かってゆく。
各部屋に鍵が刺さりっぱなしになっており、自動ロックではなさそうだ。
私とシュウヘイが同室で、シャルはその右隣の部屋を使用する事で決まった。
ジェイミー大佐の言ってた通り並んでいるわけではないがベッドが二つある。
そして二人用という事もあってか部屋は広い。
当然のように風呂とトイレは別だし、これはまるで兵士寮というより普通の家の部屋のような感覚である。
「午後はどうする?」
私は一応行く場所があるのだが、シュウヘイの予定も聞いておきたい。
「俺はとりあえず寝るぜ。朝少し早かったからな」
ならある意味好都合だ。
私しか知らない場所だし、連れていってもどうにもならないからってのもあるか。
「そうか、私は少し色々見てくるよ」
「了解!」
寝ながら敬礼するからちょっと笑ってしまったよ。
さて、見に行くか、懐かしの場所。
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兵士寮の入り口のほぼ裏側、周りにある雑草と木の隙間を上手く通れるようにある道を行く。
やはりしばらく誰も手をつけていないのか、10年前よりも雑草が明らかに増えた。
まだこの場所へ行く道が残っていただけでも嬉しいよ。
もちろんここは兵士寮の外から全く見えない場所であり、夏になれば蝉が煩わしいほどうるさく鳴く場所である。
「…なんだ、まだ残ってたのか」
懐かしい記憶と共に笑みが零れる。
私達の秘密基地であり、かつては罰小屋と呼ばれた小さな小屋。
まるでここだけ10年前の時のままのような場所だった。
小屋の中はだいたい3畳か4畳程度で広くはない。
小さなテーブルと、それに合った椅子が3つか4つほど置かれている。
天井には小さなランプがそのまま残されていて、明かりが点くかどうかはわからない。
…私がまだ少将になる前、多分その時の階級は少佐だったかな?
当時この小屋はセントー・アレン大将の罰小屋として有名で、彼女の稽古と演習において不甲斐なかった者、もしくは彼女からそう見えた者は容赦なくこの小屋へ送られる。
当時いつものトレーニングをやっていた私も寝ていると勘違いされて一度この部屋に送られた経験がある。
彼女が大将を降りた後は私の休憩部屋として私や私の弟子、部下と共によくここを訪れたものだ。
私が居なくなったからとっくに壊されていると思っていたが…。
30分くらい懐かしんだが、今度はシュウヘイやシャルにも見せてあげたいところだ。
さて、そろそろ戻るか。
「あらあら、新人が初日からサボりだなんて、いい気なものね」
突如私の後ろから、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
恐らく小屋ではなく兵士寮のここから見えない角の裏だろうか、その辺りから聞こえてきた。
「…今は自由時間ですよ、シュネル・クラン総司令」
間違いない、相手は我が妹であるシュネルだ。
「あら、急に敬語なんか使ってどうしたの?クソ兄貴」
いつも通りの毒舌っぷりだな。
「万が一がありますので」
妹とはいえ現状軍での関係は三等兵と総司令だ。
一番下っ端である以上敬語は必須であり、私がバースリー・クランだとバレない為の事でもある。
「それで、わざわざここに居るという事は、何か用ですか?」
私がここに来る事は初めから想定済みだったんだろう。
さすが妹だ。
「あら、察しがいいわね。そうよ、貴方に一つ、ヒントを与えに来たの」
ヒント?どこかで誰かから聞いた気がするセリフだな。
「先月に将校が連続で殺された事があったでしょう?」
連日新聞に載っていたやつか…。
新聞には将校の名前や階級は載っておらず、【エイミー帝国軍の将校が○○人殺された】と書いてあった事から、将校だというのはわかっていたが。
「あれは全て、エイミー帝国首都で殺されたのよ」
は…?
戦場じゃないのか?
首都でって…つまり、この帝国軍本拠地のある首都でか…?
「…本当ですか?」
「本当よ。それじゃあ1か月後にイベントがあるから、頑張って頂戴。期待の新人様」
そう言って、気配と共にここから去って行く音が聞こえた。
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