妄想の帝国 その59 超ウイルス対策“理想的な健康生活”
新型肺炎ウイルスの変異株のついにオメガ株が出現。ワクチンを打ち続ける現実に業をにやしていたキー総理のもとに感染研のオーミ博士がつげた対策とは…
「つ、ついにオメガ株が入ってきてしまったのか…。新型肺炎ウイルスのパンデミックは、いつになったら終わるのか」
と、頭を抱えているのは某ニホン国、キー総理。
「ど、どういたしましょう、第20回緊急事態宣言を発令いたしましょうか」
「アーガ官房長官、そんなことをしたら、財界からまたつきあげられる。この間、第19回を解除したばかりなんだぞ。今度宣言出したら、ドヨタの連合幹部でさえ首を切られるといわれているんだ、それどころかニホン国そのものが、身売りするはめになりかねない」
「しかし、世界中に蔓延し、多数の死者が出る状態、どこがニホンを買うんでしょうか。ついに中国も完全封鎖、輸出入も一時完全停止を考えているという噂もあります。アメリカ、ヨーロッパ、中東諸国も鎖国かそれに近い処置をするかもしれないと。我が国もやらないとまずいのでは」
「ま、まあ、中国からの輸入がストップすれば、製造業のみならず、様々な業種に支障がでる、さらにアメリカやEU圏、中東からの輸入も滞れば、下手すると食糧すら不足、そうなれば治療薬どころか食べ物すらなく、ガスや石油の輸入も危ぶまれ、最悪我が国はウイルスでの死者だけでなく餓死、凍死、そのほかもろもろの死者をだしかねん。しかし宣言をだし、外出、そのほかを自粛したとしてもウイルスの蔓延を防げるかどうか」
「ワクチンも、この間、今年度第一回目接種が半数終わったばかりですし。毎年どころか半年、いや数か月に一度のワクチン接種にワクチンの効果を疑問視する声もでております。副反応で死者や難病患者もでていることから、接種拒否の事例も増えております」
「そもそも一回も打ってないのに罹らない人もいるからなあ。打ったからといって重症化は防げる可能性が高くなるが絶対安全ではないというし」
「い、いったい、どうすればよろしいのでしょうか」
キー総理だけでなくアーガ官房長官まで頭をかかえそうになるところに
「総理、朗報です!つ、ついにウイルスに最適な対抗策が判明しました!」
「おお、感染研のオーミ博士か、特効薬でもできたのか」
「いえ、しかしこれこそ万全策、なぜこれを思いつかなかったのか、やはり私は偏見に凝り固まり、おごっていたのだ」
「ど、どうしたんだ、今日はいつになく謙虚というか」
「いつも偉そう…ではなくて威厳にみちたオーミ博士らしくありませんね」
総理と官房長官が不思議そうに博士をみると
「いや、まったくお恥ずかしい。わが身の数々の過ちを考えると穴を掘って入りたいくらいです。それはともかく、一刻も早く、総理、そして国民の皆様にこの発見を知らせねば」
「ど、どんなすごい発見なのだ」
「発見というのもおこがましい。古来からの先人の知恵、それの再評価にすぎません。十分な睡眠、バランスの取れた適度な食事、そして適度の運動、そして過度なストレスのない生活。つまりは養生訓など昔から伝わる健康生活に戻ることなのです」
「そんな単純なことか」
「単純と申しますが、アーガ長官、これが一番簡単で、しかも効果的なのです。ワクチンを打たず、かつウイルスに罹患せずにいられた人々を集めデータをとり分析した結果は、次のような事でした。彼らは日の出とともにおき、散歩をし、早めに寝る。もしくは7時以降におき、夜も遅いが8時間以上の睡眠時間は確保している。多くは昼寝もとっています。食事は菜食中心でありつつ適度に動物性たんぱく質、特に魚、青魚をとる。スートフォンやパソコンでのネットなどの接続は最低限にし、ストレスはなるべくためない。家族、友人との団らんや会話を重視する。すなわち、田舎などにみられる牧歌的な生活、これがウイルス、ひいてはあらゆる病気を遠ざける秘訣であったのです」
「そういうことなら我々だってできそうだが」
「何をおっしゃいます、政治家や財界の皆さんはまるで違った生活です。デスクワークで座りっぱなし、移動は車。そのうえ、脂っぽい食事が多く、会食などでアルコール類の摂取は多い、しかも午前様も珍しくない。運動といえば週末のゴルフぐらい。今はジムに通うのも難しいですからね。緑のなかでウォーキングならともかく、排ガスのなかで歩くのはあまりよろしくありませんし…」
「ああ、わかった、わかった。しかし、私たちはともかく国民は、その、会食はしないし…」
「国民は安いが添加物が多く含まれる炭水化物の加工品で腹を満たしております。それですと必須栄養素は不足する、おまけに日当たりの悪い部屋で生活し、ビルや工場などの建物の中で日中を過ごすことが多いとなればビタミンD生成にも影響がでまして、病気にかかりやすく、さらに職場環境が悪ければストレスもたまり…」
「つまりは、ニホン国民は上から下まで不健康だからウイルスにかかりやすいといいたいのだろう。だが、当たり前すぎというか、信じられんな」
「キー総理、我々はすでに実験により検証済みです。有志の方々の協力を得、驚くほどの結果を得ました」
「結果って?具体的にどういうことなんだ?」
「はい、男性10名、女性5名に一か月ほど、“理想的な健康生活”を送っていただき、そのあと、新型肺炎ウイルスのミュー株やオミクロン株の罹患者と同室に一日過ごしてもらいました。もちろん、感染の危険性を十分に理解していただきまして、感染しても訴訟などは起こさないという同意書をとりつけ…」
「で、結果は」
「全員、陰性でした。PCR検査、抗原検査を一度ならず、間隔をおいて繰り返し行いましたが、結果は同じ。ちなみに私も実験に参加しましたが、大変効果があると実感しております」
「そ、そうか、ではさっそく、その“理想的な健康生活”を普及させよう。オーミ博士、どのようにすればよいか、これから会議を行おうと思うが」
「そのことですが、総理、私は感染研を辞任させていただきたいと思います。今までの対策の失敗、そして反省もせず、このような職に就き続けていたことを思うと顔から火が出そうなほどに恥ずかしい。後任はぜひ、感染症対策に尽力したガンゲン君に」
「ガ、ガンゲンって、ダイモン・プリンセス号の最初の感染で政府対応を批判して、君を糾弾した人間じゃないか、そ、そんな奴を」
「いえ、彼が正しかった。それなのに私は間違いを認めず、現場の医者の訴えも聞かず、検査を絞り、そのうえ自分の病院には受け入れるべき患者を受け入れなかった。医者というのになんという愚かな。そんな人間が、国民の命を左右する任にはつけません。即刻辞任し、アジア、アフリカのなかでもワクチン接種率が低い国々に、この健康法をひろめに行きたいと思います、それがせめてもの償い」
「な、何をいうんだ、今、辞任されては困る」
「そ、そうですよ。なんでそんな聖人君子みたいなこと、権威主義の塊といわれたオーミ博士らしくありません!」
と総理と官房長官があわてて博士をひきとめようとしているとき、一本の電話が
『た、大変です!ドヨタ社長が全財界に労働者の賃上げをし、派遣及びアルバイト社員に、最低時給1500円を与えるべきとの声明を発表。さらに全労働者の子弟で経済的に困窮する者には無条件での奨学金支給を定め、さらに介護を必要とする家族がいる場合には特別の介護休暇や援助を約束すると。“労働者を酷使すれば、やがて会社がだめになる、ひいてはニホンの滅亡につながる、ニホン国の大企業がニホンをつぶすようなことをしてどうする、財界人を自認するのであれば、働き手を尊重すべき”と大企業の社長たちに言いまわっております。さらに消費税を廃止、いままでの戻り税も返還するといいだし、役員会はパニックです』
「そ、そんなこと、財界の人間が従うはずが」
『そ、それが従わないなら、今までの談合、賄賂、そのほかもろもろを明らかにすると。それで自分が捕まるならそれでよい、今までの行いのせめてもの罪滅ぼしとか』
「げえええ、とりあえず、どうにかして止めろ!洗いざらいばらされて、野党どもに追及されては困る!いいな!」
と総理が怒鳴りまくって電話をきった途端
「総理、今までお世話になりました」
派遣会社ダソナ社長のダケナカ氏と広告会社便通のマーケ氏が入ってきた。二人とも政府に擦り寄り甘い汁をすいまくり、体もそれなりにふっくらメタボだったはずが、今日は様子がかなり違っていた。
「ど、どうした、二人そろって、そんな白装束で、だいぶスリムになったようだし。あ、頭も剃ったのか、それではまるで」
「総理。私ダケナカは、会社を畳み、全財産を社員や今まで派遣の登録をしていただいた人々やその家族に寄付して、お遍路のたびに出ることにしました。今までの行いを考えると、それでは到底すまないことはわかっています。派遣という不安定な身分に付け込み、どれだけ、社員たちから搾取をしたか、ひいては彼らが死を選んでも見て見ぬふり。そのうえ、税金を誤魔化し、あろうことか国税がもととなる事業に参入して中抜きをし放題。このような大罪、牢に入ろうと償いきれるものではありません。し、しかし首を吊る勇気もない。飛び降りることもできぬとあれば、せめて四国八十八か所をめぐり功徳をつむぐらいしかありません」
「私もです。会社のためといいつつパワハラをみすごし、若い有能な社員たちを苦しめ、死に至らしめても知らんぷり。さらに国民への給付事業などの公共事業を独占、そのうえ下請けに丸投げ、切腹しても許されない罪です。しかし、このような身でも死ぬのはおそろしい、せめて仏の道に救いを求めたい」
「二人ともどうしたんです!いつもといってることが正反対…」
唖然とする総理と官房長官。だがオーミ博士は
「おお、お二人とも、心身ともに健康になられました。これでウイルスも悪い考えも寄り付きません」
「オーミ博士、ありがとうございます。わが身が助かりたい一心で危険な実験に参加したおかげで、人生とは、生きる意味とはという本当に大切なことが理解できました。今までの我欲を捨て去り、金儲けで周囲を省みない姿勢を反省し、真の生きがいを見出したいと思います」
「わたくしも、ダケナカさんと同じです。金の亡者を脱し、これからは皆のために尽くす、これこそが病や悪徳を寄せ付けない秘訣」
と、今までの悪行?を改め、人生やり直しを誓う三人をしり目に総理と官房長官は
「ひょ、ひょっとして健康生活とやらをやると、頭のなかも変わってしまうのか」
「そういえば脳腸相関とか、腸をきれいにして健康にすると考え方にも影響がでるということで。いくつか論文も出てます」
「つまり、健康生活をすると、善良な人間になる、不正や汚職、収賄を反省し、行いをあらため、聖人になってしまうということか」
「そ、そのようです。確かに悪いこととは言えませんが」
「うーん、理想的な健康生活とやらを国民によびかけるべきか」
「確かにウイルスどころか、たいていの病は撃退できそうです。オーラというか、あの三人の周りだけ清浄な空気が流れているような」
「気のせいだとは思いたいが、結果もでているというし。他の11人も同じようになったのか」
「そ、そういえば今朝のテレビで政府の御用学者といわれたヨツウラ氏が、いままでの発言の訂正をする云々ということで特集をやっていました。出勤時間になったので途中までしか見れませんでしたが」
「オーミ博士のいう有志とは政府関係者だったのか。効果のある方法を真っ先に試したいという欲のあるやつばかりか。それが裏目にでたのか」
「裏目とおっしゃいますが、結果的にウイルスは退けたわけですし、効果がないどころか有効といえるのでは」
「しかし、その生活をしたものすべて聖人君子になるという副作用が。そ、それでは我が与党ジコウ党のあれやこれやが明らかにされてしまうし、わ、わたしの総理の地位も」
“理想的な健康生活”を普及すべきかどうか、悶々とするキー総理であった。
腸を整えるのは健康に良いそうですが、それにより考え方がかわることもあるらしいですね。心身ともに健康というのは人類にとってもよいことだと筆者は思います。ただし単に健康法だけに気を付けていればウイルスが防げるというわけでもないらしいので、皆さま充分お気をつけくださいますよう。この話はフィクションですから